第24話 包囲
ドグマの海賊団を撃退してから、1週間が過ぎた。
フェルナ号は順調に進んでいる。
星々が窓の外を流れていく。
静かな、穏やかな航海。
・ ・ ・
操縦席でカイルが背伸びをした。
「さすがに、もう大丈夫か?」
カイルが楽観的に笑う。
「いや、油断はするな」
ユーリは真剣な目でレーダーを監視している。
そして帝都までの道のりをシミュレートし、
どのルートを使うか頭を悩ませている。
ここは、メルファルニャー星系。
帝都セレニャールがある惑星ニャニャーンの、2個隣の星系だ。
帝都に近いだけあって、比較的治安の良い地方で、
海賊などはほとんど見かけない。
だがそれは別の意味を含んでいた。
「帝都に近いということは……」
ユーリが呟く。
「リュシアンたちの手が及んでいる可能性がある」
ユーリがカイルを見る。
「俺たちは、あくまで反逆者だからな」
セリナがその言葉に反応する。
(そうだ……私は、死刑囚なんだ)
セリナの胸がきゅっと締め付けられる。
(ユーリのおかげで、すっかり忘れていたけど……
反逆者として、追われている)
セリナが窓の外を見る。
(この革命を、成功させなければ……)
でも――
(成功させれば……
ユーリたちとは、お別れ)
セリナの目が曇る。
(一体どうしたら……?)
「おいおい、ユーリ」
カイルが振り返る。
「怖いこと言うなよ」
カイルがセリナを見る。
「おかげで、お前のお姫様が
浮かない顔になっちまったぞ?」
「馬鹿なことを言ってないで、警戒しておけ!」
ユーリが「お前の」に反応する。
顔が少し赤くなる。
でも――
セリナは、浮かない顔を崩さなかった。
カイルが軽く言う。
「はいはい、警戒、けいか……」
カイルの声が突然変わる。
「おい!ユーリ!」
「ん?どうした?」
ユーリがレーダーを見る。
「星系の端に熱源多数検出!」
カイルが画面を凝視する。
「この星系にFTLジャンプしてくる艦隊がいるぞ!」
「待て、慌てるな」
ユーリが冷静に言う。
「この辺りは対賊哨戒艦隊もよく通る」
ユーリが続ける。
「何もリュシアンの手の者とは限らない」
「そ、そうだな」
カイルが頷く。
「あくまで、商人を装うぞ」
レーダー上に多数の艦影が現れる。
FTLジャンプ……いわゆるワープであり、光が弾け
まるで粒子が再構築されるかのように、複数の軍船が出現した。
「……識別コードを確認する」
カイルが画面を操作する。
データベースから照合して、
カイルの顔が青ざめる。
「おい……やべーぞ!」
カイルが叫んだ。
「リュシアンの皇太子近衛艦隊だ!」
レイディアント・クラウン・アルマーダ。
約50隻からなる、黄金に装飾された荘厳な軍船たち。
皇太子リュシアン直属の、近衛艦隊であり、
帝国で最も強力な私設艦隊の一つである。
「カイル、逃げろ!」
ユーリが叫ぶ。
「奴らには偽装は効かない可能性が高い!」
「言われなくても、わーってるって!」
カイルが操縦桿を引く。
フェルナ号が急転回する。
元来た航路を進む。
一旦、別の星系経由で帝都を目指すつもりだ。
「ねえ、カイル」
セリナがレーダーを見る。
「前方のレイディアントは、30隻って表示されてるけど……」
セリナが細かい点に気づいた。
「30隻?」
カイルが驚く。
「残りの20隻は?」
その瞬間――
反転して向かっている先に、今度は10隻の熱源が現れる。
FTLジャンプ。
光。
そして—
レイディアント・クラウン・アルマーダ。
「分散して、挟み撃ちにする気だったんだ!」
ユーリが焦って叫ぶ。
「ちっ!」
カイルが舌打ちする。
「10倍で来いとは言ったけどさぁ……」
カイルが苦笑する。
「普通、本気にするかー?
馬鹿じゃねーの!?」
「いいから、進路を変えろ!」
ユーリが叫ぶ。
カイルが再び操縦桿を急転させる。
船は進路を変えた。
でも――
今度はその先から、さらに10隻、
レイディアント・クラウン・アルマーダが現れた。
「やべー!」
カイルが叫ぶ。
「マジでやべーぞ!包囲されてる!?」
さすがのカイルも冷や汗をかき、手が震える。
「……戦えないの?」
セリナが小さな声で聞いた。
「そうしたいのは山々だが……」
カイルが渋い顔をする。
「1人の子供相手に、大人の兵士が50人来てる状況って
言ったら、通じる?」
その言葉にセリナは言葉を失った。
圧倒的な戦力差。
「逃げ切れるか?」
ユーリが聞く。
「やってみるけど……」
カイルが操縦桿を握る。
「いや、やるしかねぇ!
俺を信じろ!」
カイルは最後に現れた10隻の
レイディアント・クラウン・アルマーダに向けて、猛突進する。
「カイル!?」
セリナが驚く。
「大丈夫だ!」
カイルが叫ぶ。
「ここを突破する!」
でも――
レイディアント・クラウン・アルマーダは、
最新の軍艦で整えられた最強の艦隊だった。
速度も、さっきの海賊たちとは、桁違い。
加速。
旋回。
全てが速い。
カイルが必死に操縦する。
右へ。
左へ。
でも――
逃げ道が見つからない。
その間に、残りの2つのレイディアント・クラウン・アルマーダが、距離を縮めてきていた。
レーダー画面でどんどん近づいてくる。
「やべー、やべー、やべー、やべーぞ!」
カイルが叫ぶ。
「これ、絶体絶命か!?」
汗がカイルの額を伝う。
ユーリも歯を食いしばる。
セリナは—
ユーリの手を、ぎゅっと握った。
取り囲んだレイディアント・クラウン・アルマーダが一斉に砲台をフェルナ号に向けた。
絶体絶命のピンチ、あと少しだったのに!
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