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皇太子妃に返り咲き ~冤罪令嬢、謎のイケメンに溺愛されて大逆転~  作者: ひろの


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第23話 赤錆の牙

宇宙空間を商船フェルナ号が、静かに進んでいる。

グレイヴ公爵領を出発して、数日。


目的地は――帝都。

皇帝カイゼルのもとへ。


操縦席で、カイルが鼻歌を歌っている。


「ふんふふ~ん♪」


ユーリとセリナは、居住区画で休んでいる。


「静かだな」


ユーリが窓の外を見る。


「ええ」


セリナが頷く。


「このまま、無事に帝都に着けばいいけど……」


「大丈夫だ」


ユーリがセリナを見る。


「俺たちがいる。

 そして何があってもこの戦いに勝つ。

 お前のためにもな」


その時――

操縦席から、カイルの声がする。


「おい、ユーリ!」


声が少し緊張している。


「どうした?」


ユーリが立ち上がる。


「レーダーに反応!」


カイルが画面を見る。


「複数の船……5隻だ!

 識別コードが怪しいぜ。確認できない。」


「……!」


ユーリが操縦席に駆け込む。

セリナも後に続く。


レーダー画面に、5つの光点。

こちらに向かって近づいてくる。


「海賊か……?」


ユーリが呟く。


「たぶんな」


カイルが頷く。


その時、通信が入る。

ノイズ混じりの汚い声だ。


「へへへ……居た居た!やっぱりだ!」


下品な笑い声が不快感を誘う。


「情報サイトの目撃情報と反対に来たら、いやがった!」


男の声が続いた。


「ありゃ、誰かが偽情報を流しまくってるっていう

 ドグマ様の勘が当たったな!」


「赤錆の牙……ドグマ。」


ユーリが呟く。


「この辺りを荒らしまわっている海賊団だ。

 おそらく、ここずっと敵に狙われなかったのは、

 ソフィが裏の情報ネットワークに偽情報を流し続けてくれていたんだろう。

 海賊は小賢しいだけあって、こういう偽情報には騙されにくいのかもな」


ドグマが再び下品な言い方で号令をだす。


「しかも、商船だもんなぁ!楽勝だぜぇ。

 よし、野郎ども!襲撃だぁ!」


ドグマが叫ぶ。


「商船のエンジンを狙え!

 足止めしてから、捕らえるんだ!

 死体でもいいとは言ってたが、

 生きたままだと懸賞金が高いからなぁ!」


ドグマの号令と共に、5隻の小型戦闘艦が近づいてきた。


レーダー画面で確認するが、特に小細工する気もないらしい。

正面から全速力で近づいてくる。

完全に油断している。


「ユーリ、セリナ」


カイルが、振り返る。


「やるしかないな、砲台を任せるぞ」


カイルが、真剣な顔で言う。


「あいつらは、この船を商船と侮ってるからな」


この商船には――

赤毛猫海賊団が装着してくれた

レーザー砲台がカモフラージュされている。


外見は、普通の商船。


でも――

中身は重武装の軍船だ。


「心配するな」


カイルが、ニヤリと笑う。


「宇宙一の俺が操縦するんだ。

 敵の弾は、かすりもしねーよ」


カイルが操縦桿を握る。


「回避している間に、

 お前たち二人はレーザーで敵のエンジンを狙ってくれ」


「分かった!」


ユーリが頷き、砲台に向かって走る。


「え……私……」


セリナが戦闘に戸惑ったが、ユーリが振り返って優しく抱き寄せる。


「お前なら、できる!」


少し離して、セリナの目を見てユーリが微笑む。


「動力を壊すだけだ。

 人を狙うより、気が楽さ」


ユーリの体温を感じて妙に落ち着いた。


「……分かった」


セリナが頷く。


「やってみる」


「いい返事だ」


ユーリがセリナの肩を叩いた。

二人は砲台に座る。


別々の場所。

姿は見えないが声は届く。


「セリナ」


ユーリの声がはっきりと聞こえる。


「最初は、"I"のマークがあるスイッチを押せ。

 そして操縦桿を握れ」


「分かった」


セリナがスイッチを探すが、手が震える。


(落ち着いて……)


セリナが深呼吸する。


そして――

"I"のマークを見つけて押した。


カチッ。


砲台の前の色々な機器のランプが点灯し、起動する。


「次は?」


セリナが聞く。


「それだけだよ」


ユーリの声が優しい。


「後は、操縦桿を操作したら砲台が動く。

 狙って、手元のスイッチを押すだけさ」


「……やってみる」


セリナが操縦桿を握る。


冷たい。


でも――

しっかりと握る。


「お前ら、準備はいいかー?」


カイルの陽気な声が緊張を和らげた。


「やるぜー!」


敵5隻が近づいてくる。

カイルがもう一つの秘密兵器、オートキャノンを起動する。


商船の外壁が開いて、砲台が現れる。


自動で狙いを定めて――

敵船に向けて銃弾を浴びせた。


ダダダダダダ!


雨のように実弾が飛んでいき、

油断して近づいてきた5隻のうち――2隻が、

一瞬のうちに穴だらけになる。


小さな爆発、だけどその機能は全て停止した


「な、なんだありゃ!?」


通信からドグマの声。


「おいおい、軍艦かよ!?」


ドグマが叫ぶ。


「お前ら、油断するな!

 敵は武装してるぞ!」


ドグマが続ける。


「まだ、3対1だ!

 俺たちの方が有利だ!」


「ばーか!」


カイルが笑う。


「3倍で図に乗るな。

 お前らみたいな雑魚が俺を倒したかったら、

 10倍で来るんだな!」


カイルがアクセルを全開にする。


フェルナ号が――

一瞬で加速する。


敵から離れ、そして――旋回。


今度は、カイルが追いかける番になった。


「頼むぜ、二人とも!」


カイルの声が艦内に響く。


セリナが砲台の画面を見る。

敵船が映っている。


動いている。思ったより速い。


(狙えない……)


セリナの手が震える。


「セリナ」


ユーリの声。


「深呼吸しろ」


「……っ」


セリナが深く息を吸う。


そして――

ゆっくりと吐く。


「落ち着いて、狙え。

 多少の誤差はAIが補佐してくれる」


ユーリの声が穏やか。


「お前ならできる」


セリナが画面を見るが小刻みに敵船が動いている。


でも――


(ユーリが信じてくれてる……)


セリナが操縦桿を動かす。


砲台が動いて、敵船を追う。


カイルが急旋回する。

フェルナ号が傾いた。


敵船が追ってくる。


でも――

カイルの方が速い。


「ほらほら、追いつけるかー?」


カイルが笑う。


ユーリの砲台がレーザーを放つ。


ピシュン、ピシュン、ピシュン!


敵船のエンジンに命中した。

爆発が起きてそのまま停止する。


「よし一隻!」


ユーリの声が弾んだ。


残り、2隻。

セリナが画面を見る。

敵船がこちらに向かってくる。


レーザーを撃ってくる。


(怖い……)


でも――


(ユーリと……カイルを……守らなきゃ……)


セリナが狙いを定める。

操縦桿を慎重に動かす。


敵船のエンジンを画面の中心に。


「今だ、セリナ!」


ユーリの声。


セリナが――

スイッチを押す。


ピシュン、ピシュン!


レーザーが発射される。


敵船のエンジンに――2発とも命中した。

どちらもエンジン付近で爆発を起こして敵船が停止する。


「……!」


セリナが驚く。


「やった……!」


「いいぞ、セリナ!」


ユーリの声が嬉しそうだった。


「その調子だ!」


残り、1隻。


ドグマの船。


「くそっ……!」


ドグマが叫ぶ。


「こんな商船に……!」


ドグマが必死に操縦する。


でも――

カイルの方が、上手い。


カイルが急転回、ドグマの船が追う。


そして――

すぐに反対方向に再度急展開する。


ドグマの船が追いつけない。


「今だ!」


カイルが叫ぶ。


ユーリとセリナが――

同時にレーザーを放つ。


ピシュン!ピシュン!

ピシュン!ピシュン!


全てのレーザー砲がドグマの船のエンジンに命中した。


「やったぁ!」


セリナが思わず声を上げた。


爆発をおこしてドグマの船が停止した。

カイルはにやりと笑うと5隻の海賊船を残して全速力でその場から離れた。


カイルが叫ぶ。


「完勝だぜ!」


セリナが砲台から出る。

そしてユーリも出てくる。


「セリナ!」


ユーリがセリナに駆け寄る。


「よくやった!」


ユーリが両手を広げてセリナを迎え入れた。

セリナは抱き着くか

……のように見せて手前で腕をブンブンと振るわせて興奮している。


「私……

 撃てた……」


セリナが微笑んだ。

手がまだ震えている。


ユーリは、ばつが悪そうに手を下ろすと


「ああ」


そう言って、セリナの手を握る。


「お前は、よくやった」


ユーリが微笑む。


「お前のおかげで勝てた」


その一言でセリナの目に涙が溢れる。


嬉しくて。

安心して。


実は戦闘は怖かった。

でもユーリと一緒だったから戦えた。


「ユーリ……」


セリナがユーリを見る。


「ありがとう……

 信じてくれて……」


「当たり前だ」


ユーリがセリナを抱きしめる。


「俺はお前を信じてる」


ユーリがセリナの耳元で呟く。


「いつも」


セリナが――

ユーリの胸で泣く。


怖かった。


でも――

乗り越えられた。


ユーリがいたから。


「おーい、お前ら!」


カイルの声。


「イチャイチャは後にしろ!」


カイルが笑う。


「次の目的地に向かうぞ!」


ユーリとセリナが離れる。

でも――

手は、繋いだまま。


「行くか」


「……うん」


フェルナ号が再び、進み始める。


帝都へ。

皇帝のもとへ。

こんなところで赤毛猫のミネさん自慢の兵器が役立ちました。

イチャイチャ少なめの休息バトルシーンでした。

ですけど難しい政治戦の後の休息&セリナの大きな成長は大事なんですよ!


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