表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇太子妃に返り咲き ~冤罪令嬢、謎のイケメンに溺愛されて大逆転~  作者: ひろの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/31

第21話 身分差

商船フェルナ号。

白い船体が、宇宙港に静かに佇んでいる。


ユーリ、セリナ、カイルの三人が、船に乗り込む。


「さて、出発するか」


カイルが、操縦席に向かう。

ユーリとセリナは、荷物を居住区画に運ぶ。


船内は広い。


そして――

静かだった。


レオンがいない。

ソフィもいない。


五人で過ごしていた船内が、急に寂しく感じられる。


「……」


セリナが、ソフィの部屋の前で立ち止まる。

扉は閉まっている。

誰もいない。


「セリナ」


ユーリがセリナの肩に手を置く。


「大丈夫か?」


「……ええ」


セリナが頷く。


「ただ、少し寂しいなって」


「そうだな」


ユーリも頷く。


「でも、また会える」


「うん」


セリナが微笑む。


その時、操縦席からカイルの明るい声が響いた。


「出発進行~!」


エンジンが唸りを上げる。


船がゆっくりと浮上する。


宇宙港を離れ――

星空へ。


惑星ニャリウムが、遠ざかっていく。


青い惑星。

白い雲。

やがて……小さな点になり、見えなくなった。


・ ・ ・


1週間が過ぎた。

何事もなく航海は続く。


賞金稼ぎの襲撃も、ない。

ヴィオラからの追手も、ない。

静かな、穏やかな日々。


ある日。

ユーリとセリナが、居住区画の共有スペースにいた。

大きな窓がある部屋。


そこから銀河が見える。

無数の星々がゆっくりと流れていく。


三人掛けの椅子に、二人で並んで座る。

セリナが窓の外を見つめている。


星々が、美しい。

キラキラと輝いている。


「綺麗ね……」


セリナが小さく呟く。


「ああ」


ユーリも頷く。


ユーリが――そっと、セリナの手に自分の手を重ねる。


「……」


セリナがふとユーリを見る。

ユーリは星空を見つめている。


セリナも、すぐに星海に目を戻した。

手を重ねるくらいでは、もう何とも思わなくなってきていた。

いつの間にか、自然なことになっていた。


「静かだな」


ユーリが、呟く。


「やはり、黒曜の五影が

 ヴィオラにとっても最後の手札だったか」


「そうね」


セリナが頷く。


「このままだったら、

 無事にグレイヴ公爵のもとに辿り着けるな」


ユーリが続ける。


「そうしたら反撃に移れる」


ユーリがセリナを見る。


「お前の父の無念も晴らし、

 お前自身も公爵令嬢に戻れる」


「そうね……」


セリナが小さく答える。


でも—

その声は、どこか空虚だった。


「どうした?」


ユーリが不思議そうに聞く。


「さっきから、上の空だぞ?」


「え?」


セリナがはっとする。


「あ、ごめん。

 ちょっと考え事してて」


「何か不安でもあるのか?」


ユーリが心配そうに見る。


「……ユーリ」


セリナが、少し迷ってから口を開く。


「もしよ。もし私が公爵令嬢に復帰できて、

 帝都に戻ることができたら――」


セリナがユーリを見る。


「貴方たちは、どうするの?」


「どうすると言われても……」


ユーリが、少し考える。


「また、ただの特務官に戻るだけだ」


「……」


セリナの表情が少し曇る。


「私ね」


セリナが小さく言う。


「ユーリと……別れたくない」


その言葉にユーリが少し驚く。


「セリナ……」


「ユーリって、本当は何者なの?」


セリナがユーリを見つめる。


「特務官って言ってたけど……

 本当は……」


「本当は?」


ユーリが首を傾げる。


「いや、本当も何も特務官だと言っただろう?」


ユーリが少し苦笑する。


「まぁ、皇帝直属だから高位ではあるがな」


「つまり、それ相応の身分なの?」


セリナが聞く。


「その……特務官じゃなくて……」


「俺のことを、公爵か何かだと思っているのか?」


ユーリが笑う。


「え……うん」


セリナが頷く。


「父とも親しいみたいだし。

 それ相応の家柄だとは思うけど」


「惑星ニャソールのニューレン地方……」


ユーリが言う。


「と言って、どこか分かるか?」


「……ご、ごめんなさい」


セリナが申し訳なさそうに首を振る。


「聞いたことはないわ」


「辺境の惑星だ」


ユーリが淡々と答える。


「そして、その一地方。

 それが俺が治める領土だ」


ユーリが続ける。


「複数の惑星ごと、星系全体を領土に持つ公爵家とは

 比べるべくもない、ちっぽけなものだ」


ユーリがセリナを見る。


「まぁ、男爵相当といったところだな」


「え……それじゃ……」


セリナの目が見開かれる。


「お前とは家格が合わない」


ユーリが冷静に告げる。


「いくら望もうとも、俺は……お前とは一緒にはいられないんだ」


その言葉が――

セリナの胸に、突き刺さる。


「ユーリ……」


セリナが震える声で言う。


「私は、別に家柄なんて……」


「お前が良くても、周りが許さんよ」


ユーリが首を横に振る。


「この国は……貴族至上国家だ」


ユーリが、星空を見る。


「平民は平民、貴族は貴族。

 貴族の中でも、高低ははっきりしていて

 越えられない壁だとも言える」


「でも……」


セリナが言いかける。


「まぁ、公爵家の護衛隊隊長くらいなら

 なれるかもな」


ユーリが軽く言う。


「考えておくよ」


そして――

話題を変える。


「それよりも、暗号について

 何か思い出したか?」


セリナは――

何も言えなかった。


(それよりも、じゃない……)


セリナの胸が苦しい。


(なんで……?)


セリナの目に涙が滲む。


(私だけなの……?)


セリナが下を向く。


(こんな気持ちになっているのは……)


涙が、一粒、膝に落ちた。


「セリナ?」


ユーリが気づく。


「どうした?」


「……何でもない」


セリナが慌てて涙を拭う。


「ちょっと、目にゴミが入って」


「そうか」


ユーリが頷く。


セリナは――

もう、何も言えなかった。


ただ――

星空を見つめるだけ。


手を重ねているのに――

ユーリが、遠い。


とても――遠い。


艦内通信でカイルの明るい声が聞こえた。


「これからFTLジャンプ(星間ワープ)を行う。

 座って大人しくしてくれ。

 ジャンプ後はグレイヴ公爵領だ」


窓にシャッターが落ちて赤色灯が点灯する。

ジャンプに向けて部屋全体が暗くなった。

そこで初めてユーリの猫耳が力なく横たわった。


ユーリにもどうしようもないことがあるのだ。


結局、大きな問題も起きずに船はグレイヴ公爵の元へたどり着いた。

私は大人の恋が書きたいのです。

身分差や障壁……そんなものは愛があれば乗り越えられる。

とならないのが大人の恋なのです。


ご感想やご意見、スタンプ、どんな些細なものでも大歓迎です。励みになります。

もしよろしければ、次の読者への道標に、評価やブクマをお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ