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借金まみれの貧乏令嬢は麗しの侯爵子息の幼馴染に愛されていました【連載版】  作者: サトウアラレ
3章

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22/28

勇者ミランダの実力の証明

殿下が学園に通い出すと、想像通り凄い騒ぎになった。


「ソレイユ国の第六王子様ですって!」


「異国の衣装が素敵だわ!」


「褐色の肌に銀髪!珍しいわよね!」


「キャー!パーラメント様とは違った格好良さだわ!素敵ね!!!」


女子生徒達はキャーキャー言ってエリアス殿下を遠巻きに眺め出した。


「勇者ミランダ様が護衛に選ばれたらしいわよ?」


「流石勇者様ね」


「でも、勇者ミランダ様は女生徒よ?生徒の中でただ一人、護衛に選ばれたらしいの。学園の困り事は生徒会長がサポートするらしいんだけど…」


「あら。騎士科からも選ばれるかもって噂があったけど、違ったのね。でも、女生徒の護衛なのね」


「専属護衛は殿下にはいらっしゃるから、あくまで勇者ミランダ様はサポートらしいわ。私が調べた所、ソレイユ王国では女性の騎士も多くいるらしいわよ。だから勇者ミランダ様も選ばれたんではなくって?それに、ソレイユ王国では一夫多妻も一妻多夫も認められているらしいわ」


「まあ!異国に嫁げるかしら!」


「なにをおっしゃってるの?でも、どんな国なのかしら…。行ってみたいわ」


「ねえ、殿下は婚約者はいらっしゃるの?」


「そ・れ・が!今はいらっしゃらないらしいわ!」


「ええ?なんですって?まあ!じゃあ、私達にもチャンスが?なんてね!」


「やだ!どうしようかしら!ソレイユ国は大陸語も通じるのよね?でも、せっかくだから、ソレイユ語も勉強しようかしら!」


「私も!」


キャーキャーと女子生徒が嬉しそうに話している。女子生徒たちは興奮しすぎて、もはや誰が何を言っているのか分からないほどだった。


男子生徒もそんな女子生徒の様子を見て、「異国の衣装はモテるのか?」「少し日に焼けた方がモテるのか?」「ソレイユ王国の文化を調べてみるか」とコソコソと話をしていた。


「リンツ。場所を移動する。後方へ」


「はい」


皆の話に耳を澄ませていれば、ナジムさんが前に出て、私が後ろに下がった。ナジムさんとハリスさんは私をリンツと呼ぶようになった。そして、ナジムさん達の護衛のやり方は、時々、場所を変えつつ、情報を共有し、殿下を護衛するやり方だった。


「後方を守る時も殿下との距離に注意するのが大切だ。近すぎても遠すぎても良くない。襲撃者は背後からの攻撃が一番多い。一人で襲う事も少ない。仲間がいる場合は弓矢等で狙う事もある」


ナジムさんとハリスさんは独り言のように色々な事を私に教えてくれる。護衛は神経も使うし、自由も無くなる。責任は伴うし、大変な仕事だが、お金も入るし任務はしっかりまっとうしようと思っているのだが、とにかく大変な仕事だと思った。


まあ、二ヵ月。その間だけしっかりと仕事を全うしようと思う。


護衛の任務だけではなく、とにかく周りが煩くなり、それでも頭が痛いのだから。というのも、護衛の一人に私が選ばれた事が生徒達にも学園長から詳しく説明があったが、やっぱりというか、当然というか、一部、私の護衛任命に納得が出来ない方もいたのだ。


「なんで騎士科から護衛が選ばれないんだ?」


「いや、選ばれるのなら、魔術科からだろう?」


「女生徒よりも俺達の方がふさわしいのでは?いくら勇者の子孫と言っても、彼女は実際の勇者ではないじゃないか」


そういう小さな声はあっという間に殿下の所まで上がってきた。そして、実際に殿下がサロンに移動している時に、数人の男子生徒が殿下に詰め寄った。


「ソレイユ殿下!」


護衛のナジムさんとハリスさんが声が掛かる前に一歩前に出たが、殿下は二人を少し下がらせた。


「なんだろうか?」


話掛けられる許可を貰った生徒達は、姿勢を正すと、礼をしてから、チラリと私を見て殿下に話し掛けた。


「殿下、騎士科、三年の、ジャスティン・シュバルクと申します。我々、騎士科の生徒の方がリンツ令嬢よりも護衛としてふさわしいと思います。どうか我らを護衛として頂けませんか」


うん、代わっていい。いや、代われ。今すぐ代われ。私はのんびりと昼休みゴロゴロしながらランチを食べたい。さあ、代わってくれ。


「そうか?」


「はい。我らは騎士科です。常日頃から身体を鍛えています。普通科の令嬢とは異なり護衛の座学も受けています」


「ふむ。リンツ令嬢は総合順位でも総合座学で常に十位以内だと聞いているが?実技の実力も申し分ないと私は思っているが?」


「しかし、彼女は勇者の子孫で、勇者ではないでしょう?」


「ふむ。ナジム、ハリス」


「「は」」


殿下は生徒達の言葉ににこやかに頷くと、生徒達を見たまま護衛二人の名前を呼んだ。二人が返事をした瞬間、二人が凄い速さで動いた。私は急いで横に転がると、殿下の後ろに移動した。


生徒達がポカンとしている間に二人は殿下の前に立ち、殿下に学生バッチを四枚渡した。


「ふむ」


殿下が学生バッチを受け取り、生徒達に見せると、生徒達ははっとして、自分の制服に着けているはずのバッチを探したが、いずれも殿下の手の中だった。



「まだ僕の護衛が務まるとでも?リンツ子爵令嬢はバッチも盗られずに、この二人を一度に相手をして、反撃をしたよ?」


そう言って護衛二人にバッチを返し、それぞれの生徒にバッチを戻させると、生徒は顔を落としたが、一人の生徒が「そんなの、無理じゃ…」と呟いた。


殿下が片手を上げるとナジムさんが凄い速さで移動して私に蹴りを食らわせようとしたので、私はペタンと両足を開いて身体を地面に伏せたあと、床を滑るように伏せてから、勢いを利用して回転しそのまま腕の力を利用して反撃に転じ回し蹴りをした。ナジムさんは飛び上がって避け、入れ替わりにハリスさんが蹴りを繰り出した私を潰す様に上から鋭いパンチ攻撃をした。


「ふっ!」


後ろに下がりながらパンチを受け流すとポケットに入れていたペンに気を流し、思い切り二人に投げつけると二人がいた場所にペンが突き刺さった。


「そこまで」


殿下がそう言った瞬間にハリスさんもナジムさんも殿下の側の定位置に戻り、私も自分の席に戻った。


「分かったかな?リンツ令嬢はとても素晴らしい腕の持ち主だ。今の手合わせはあくまで、私を護衛しながらのこと。お互い本気ではない。それでも、この程度は出来てくれないと困る。この中にリンツ令嬢と同等、もしくはそれ以上の者はいるとは思えないが」


殿下が優しくそう言い切ると、生徒達は悔しそうに去っていった。


「それにしても流石だ」


殿下が嬉しそうに私を見て、二人の護衛も頷いた。


「なあ、ハリス、ナジム。彼女が三人目の護衛になってくれたら本当に心強いよね?」


「彼女なら異存はありません」


「私もです。異性である事も護衛には有利だと思います」


「うん。リンツ令嬢、私の国に興味はないかな?」


冗談っぽく、でも殿下はまっすぐな目で私にそんな事を聞いてきた。


「絶対、嫌です」


私が即座に答えると、殿下は目を丸くして「ハハハ!こんなにすぐに振られたのは始めてだ!」と、太陽のような笑顔で楽しそうに笑った。


「もう一度、いいます、絶、対、に、嫌、です」


念の為、もう一度、ゆっくりと一文字ずつ区切りながら言うと、殿下は同じように笑って頷いた。



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