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第04話 来訪者 



「そういえば、さっき言ってた伝承ってのはどういうことなんだ?」

俺は先ほどの会話の中で気になった台詞について尋ねた。 


「この世界には稀にあなたのような異界から来訪者がくるの、異質な力を持つ来訪者はみな口をそろえて言うの『地球から来た』と」 


「納得のいくような、いかないような…地球人に異質な力を持つものなんていないぞ、空想上の産物とかじゃないのか」


「そんなはずないわ、過去には巨竜を一人で刈る来訪者や強大な魔法を操る来訪者もいたらしいわ、あなただって見たことない飛行艇でやってきたじゃない」


「もしかして、伝承には来訪者はゲームをしていたとか書いてなかったか?」


「よく知っているじゃない、そのゲームとやらがこちらに来るための秘術みたいなの」

秘術なんかじゃない、おそらくゲームの世界を媒体にして俺や伝承に伝わる来訪者はこの世界に飛ばされてきたのだろう。納得はいかないが話の辻褄は合いそうだ。


「まあなんとなく分かった。それで君たちはこれからどうするんだ?」


「この船は補給と修復のため西方方面軍の駐屯する王都西部の都市レインフォースに向かうわ」


「俺はどうなるんだ。まさか来訪者ってことで解剖とかされないだろうな…」


「安心して。あなたの飛行艇は強そうだし我が軍の航空部隊に組み込んであげるわ。特別に身分と階級も与えてあげる」


「そんな勝手して大丈夫なのか?」


「第5艦隊の航空戦艦はこの船も含めて6隻しか残ってないの、なりふり構ってられないだけよ」


彼女は悲しそうに笑みを浮かべる。ふわりと軽くウェーブした金色に輝く髪が揺れた。

状況は思ったより深刻だ。異世界転生でのんきにパイロットライフと考えていたが、社畜やWSでの傭兵稼業より厳しい日々になるかもしれない。


 マリー艦長から士官用の船室を与えられた。一応客人として扱ってもらえているようだ。部屋に入るなりベッドに倒れこむ。まだ疑問はたくさんある、というか疑問しかない。しかし環境のあまりの変化に思考と肉体が限界を迎えたらしく、寝間着に着替える間もないまま眠りに落ちた。





「……ノックはしたわ、はいるわよ」


 どのくらい寝ていただろうか?ぼうっとする頭に女の子の声が聞こえたような気がした。昨日の出来事はゲームで寝落ちした後に見た夢なのかもしれない。戦闘機で女の子を助ける。なかなかいい体験だったな。そんなことを思ってベッドから起き上がったら目に飛び込んだのは心配そうな表情を浮かべたマリーだった。


「ずいぶん、寝てたわね。死んじゃったのかと思ったわよ」

今が何時かは皆目見当がつかないが、マリーのあきれ具合からするに1日以上は寝ていたらしい。


「すまんすまん、思ったより疲れててぐっすり寝てただけだ」俺は寝癖をおさえながらベッドから体を起こした。


 改めてマリーを眺めるととても可憐な姿をしている。思わず見惚れてしまった。少女だとは思ったが年齢は15,16といったところか。陶器のような白い肌に吸い込まれるような紺碧の瞳、意志の強そうなきりっとした眉と目元。さらさらの金色の髪がなだらかな曲線を描きながら肩にかかっている。


「食事よ、あなたがぜんぜんでてこないから持ってきたわ」

 その手にはサンドイッチがはいったバスケットを下げている。戦時中なのでてっきりレーションか缶詰かとおもったのでちょっと意外だった。それと同時に胃袋が食物を欲して凄まじい音を立てた。


「サンキュー、正直疲労と空腹で死にそうだ。飯食べたらまた寝てていいか?」


「ずいぶんとぐうたらな来訪者ね。異世界から来るのは勇者や魔王のような人の理を超えた者たちだと伝えられていたから、あなたの姿みたら少し拍子抜けしちゃった」


「まあパイロットは普通の人間だからな」そもそも元はパイロットですらないただの一般人ゲーマーだしな。


「昨日乗ってきた飛行艇、イーグルっていってたわね。もしかしてあれでシュティルゲン公国を一人で征服とかできないの?」


このお姫様、かわいい顔してなかなか突拍子もないことをおっしゃる。



「イーグルにできるのはせいぜい空中戦艦数隻とやりあうのが限界だな。航続距離も補給なしじゃおそらく公国まで往復はできない」


「ちょっと残念だわ。地球人は無限の魔法力を持っていたり空間をあやつれたりする人もいるんじゃないの?」あくまで地球人は超人だと考えているらしい。きっとチート系キャラが転生してきたらさぞ大喜びするだろうな。


「そんなチート能力とは無縁で悪かったな」思わずつぶやいてしまった。


「チート?なんなのよそれ」彼女は首を傾けキョトンとする。


「いや、なんでもないこっちの話だ」


「それはそうとして、もうレインフォースに着くわ。国籍と軍籍の登録のためにしばらくあなたを案内しましょう」


「艦長じきじきにそんな雑務しなくても」


「いいの、どうせ私はお飾り艦長。街についてもやることといえば、うんざりするパレードやパーティばっかり。あんたの世話しているほうが気分転換になるわ」


 彼女、マリー・アークライト・エルシティアは王家の末っ子だそうだ。王族と聞いて予想はしていたが、案の定権力闘争や謀略が絶えないらしい。王国軍の旗艦といっても戦死の可能性が高い艦長にまだ10代の少女を据えている状況に闇を感じる。そのほかにも後継者争いや王家転覆を狙うクーデターなどなど内外に危険が溢れているようだ。大変な時勢のなか気丈にふるまっていてなかなか健気なお姫様だ。


「高貴な身分も色々と大変なんだな。じゃあお言葉に甘えて案内してもらおうか」


「寄港したらまた連絡するわ。着くまでゆっくりしててちょうだい」


 マリーの姿をもう少し拝んでおきたかったが、その前に確認しなければならないことがあった。持ってきてもらったサンドイッチを頬張り、格納庫へと急いだ。


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