第35話 夜明け前
オスプレイでの輸送を果たした後、基地に戻った俺は再び空に上がる準備を始める。今回の戦いは最も過酷、いや無謀に近いものだったが必ず完遂しなければならない。
滑走路では一機の戦闘機がその翼に大量の誘導兵器を吊り下げ佇んでいた。
俺はその見上げ鈍い銀色に輝くボディを撫でる。
F15Eストライクイーグル、通常のF15イーグルをベースに多数のハードポイントを増設し圧倒的な兵装搭載能力、元から持つ高い対空戦闘能力を両立した現米国空軍最強と謳われるマルチロール戦闘機だ。今回の戦いでは大量の敵と対峙しなくてはならない。そのためには最も適任な機体だ。
それとゲーム中で一番長く共に戦った機でもある。今回はハードな戦いが予想されるゆえ、使い慣れた機体を使用したかったということもある。
「少佐、マリー艦長の救出を行おうというのはやはり本当なのですね」
元第5艦隊の若い下士官達が近づいて話しかけてきた。俺が彼女の奪還に動くというのはすでに基地内で広まっているようだ。彼の言葉には不安と疑念が滲んでいる。当然だ、俺達がやろうとしていることはまさしく王国に反旗を翻すに等しい。王子のマリー処刑の口実を真実にしてしまうこととほぼ同義だ。
「私の部下はすでに先行し、王都で彼女の居場所を特定すべく動いている。それを目印に彼女を奪還し帰投する。この作戦に関しては君らの上官や守備隊長にはもう話がついてるから、じきにこの基地の全兵士に通達があるはずだ。嫌なら離反しても構わない。これはこの基地と俺独自の行動で王国軍の命令ではないのだからな」
「艦長が他の王族の誰よりもこの国を思い、守るため戦い続けたことは君らが一番知っているだろう。彼女を救い出し、王国全域に呼びかけ兵達に真実を伝えることでしか潔白を証明できない。それには君たち第5艦隊、クラウソラスの仲間の協力が必要不可欠なんだ!!」
思わず語気を荒げて語ったあと、感情的になってしまたことに後悔の念がこみ上げる。今彼らが協力してくれなければ、この無謀な作戦はここでおしまいだ。彼ら王国軍人はマリーを慕っていたが、国の中枢を敵に回すとなると着いてきてくれるとは限らないだろう。
「我々第5艦隊旗艦クラウソラス、お呼び隷下艦艇の搭乗員一同少佐と同意見であります。私たち、いやこの国の未来には艦長のようなお方が必要です」
彼らは強い言葉とともに敬礼した。皆すでに意思は決まっているようだった。
「ですが、いくら貴方でも首都防衛を担う艦隊に挑むのは無謀なのでは?我々はどうすれば良いのですか」
兵士の一人が疑問を呈した。
「この機体は君らの国の戦艦数隻を沈めることのできる爆弾を搭載しながら、最新の飛行艇の10倍以上の速さで飛べる。単機で一撃離脱し姫を救い出すことも可能だ。君らはその後追ってくる敵艦を迎撃してくれ」
そうは言いつつも今回の作戦はかなり危険が伴うものになるに違いない。自信のなさを誤魔化すように強がった。
「一人でお姫様を救出ですか……お伽話みたいですね。ですが我々は貴方を信じます。これまでの戦いを見ていましたから」
うっすらと空が白み始めた頃、基地の全員に正式な作戦開始の命令が下った。慌ただしく搭乗員達が準備を始める。基地に駐留する全航宙機、空中戦艦が離陸体勢に入った。規則正しく列を作り飛び立つ瞬間を待っている。
「守備隊および基地所属艦艇は無実の罪で抑留されるマリー・アークライト・エルシティアを奪還すべく独自の作戦行動に入る。これは国軍の命令ではなく彼女とこの国の未来のための戦いだ。皆覚悟して臨むように」
守備隊長の演説に皆が覚悟を決める。すでにエリスたちのビーコンも確認した。いよいよ一大作戦の幕開けだ。航空戦艦が停留ケーブルの接続を解除し巨体が宙に向けゆっくりと動き出す。
「これより作戦開始。全機発進!!」
久しぶりなので内容に多少齟齬があるかもしれません。申し訳ありません




