第36話 王都突入
「行くぞ、レイヴン、テイクオフ!」
イーグルを中心に全航空艦艇が一斉に飛び立った。クラウソラス以外は巡洋艦級ばかりだが練度の高い第5艦隊残存の猛者ばかりだ。俺がマリーを救った後は彼らの防衛が頼りになる。艦隊が姫様を守っている間に王子や内通者の行為を暴き姫の無実を王国全土に証明しなくてはならない。
俺はイーグルを駆り王都の敵警戒網へと突入した。整然と並んだ煉瓦の屋根が眼下に広がる。レーダーに表示されたガイドビーコンの位置も近い。前にこの街に来た時はマリーも一緒だったな。あの時からたった数ヶ月でこんな状況になるとは夢にも思わなかった。ここまで共に戦ってきた日々を思い返し『彼女を救い出す』その意志をよりいっそう強くした。
「こちらレイヴン、まもなく到着する。目標位置の詳細を教えてくれ」
先に潜入を開始したブレッドとエリスに向けて通信回線を開く。敵地での具体的な着陸地点や城への侵攻ルートは彼らがみつけているはずだ。
「少佐、回線繋がりました。エリスです。ターゲットは中心にある城の最上部にいます」
処刑予定の反逆者を収容しておくにはあまりに目立つ場所である気もするが、仮にも王族の一員としての待遇なのだろうか。それとも防衛しやすいからあえて選んだのか。どちらにせよ10階建のビルを優に超えるような巨大な城のてっぺんにマリーはいる。
ランデブーポイントは噴水のある庭園で決定した。航空機が着陸するには路面状態が悪く広さも不十分だが他を選ぶ時間がない。
半ば失速に近い形で強引に機首を下げ庭園の石張りに機を着陸させる。最初にクラウソラスへと着艦した時も同じように無理やり着陸した。その要領で機体を制御する。
「クソっ、とまれ!!」
ガガガっと車輪に衝撃が伝わるがなんとか静止した。キャノピーをあけ周囲を見渡す。あたりには無数の王国軍兵の残骸が散らばっていた。凄まじい戦闘があったようだったが、俺の部下は二人ともほぼ無傷なようだ。どんな戦い方をしたかは定かでないが、なかなか頼もしい。
「いよいよだな、隊長」ブレッドが自らで敷設した通信アンテナの横に立ちこちらに手をふった。
エリスとブレッドと合流し、中心を目指していく。二人の活躍のおかげで行く手を阻む敵の姿は皆無だ。
破壊された城壁や生き絶えた騎兵の横をすり抜け一直線で城へと駆けていく。
王宮の庭園は想像していたより広く一時間以上かかり、城の一階部分へとたどり着いた。白塗りのレンガにステンドグラスが輝いている。マリーもまさか自分の故郷で、しかも自分の住まいで死を待つことにあるとは思いもしなかっただろう。そんなことは絶対に刺せない。
装飾が施された巨大はガラス窓に向けて、ブレッドがグレネードを投げる。轟音とともにガラスが粉々に砕け散った。ガラス片が砕け散った室内へ突入する。馬鹿でかい外見通り内部にも広大な空間が広がっていた。建物の中央が吹き抜けになっており、上階へと続く螺旋階段が続いている。その階段へと足をかけようとしたその時、後ろからどこかで聞いたことのある若い男性の声が聴こえた。
「君が『wing of steel』から来た来訪者か。思ったより早かったじゃないか」
いきなり俺の正体を看破した声の主は、なんと第一皇子ヒュリー・エルスラント・アークライトだった。横に二人の男を引き連れている。どちらも王国の民ではなさそうだ。
そのうち一人は見覚えのある男だった。




