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希望の光  作者: 文月 夏
19/21

自分の心

「好きか嫌いか問われれば好きです。それと、さっきも言った様にとても素敵な人だと思いますよ。」


私の口からやっとのことで出てきた言葉は、彼のことを説明するには絶対的に足りない言葉だった。


自分の好きな物がテーブルに並ぶと子供見たいに喜ぶ所はとてもかわいらしくみえたし、私の体調をいつも気にかけてくれる優しさも持っている。

それにきっと仕事をして疲れているはずなのに、いつでも楽しそうに優しく微笑んでくれて、近くにいる私はとても幸せを与えてもらっていた。

こんなこと思ってはいけないと思うけれど、彼のことが大好きだ。


リリーさんに彼のことを聞かれた時、いくらでも答えられるはずなのに、何故だか私はそれしか言えなかった。


「本当にそれだけ?」

「え?どういう意味ですか・・・?」


突然そのように言われ、一瞬ドキリとしたが、私は平静を装いリリーさんの方を見ながら聞き返した。リリーさんはとても楽しそうに私を見つめながら答えた。


「ふふ、ごめんなさい。やっぱりなんでもないわ。でも、もしかしたら私の言いたいことはよく分かってるんじゃないかしら。」


私はリリーさんに何と返して良いのか分からず、うつむき黙っていた。


「ごめんなさいね、少し困らせ過ぎちゃったかしら。でも、年をとるとどうしてもこういうことしたくなっちゃうのよね。それに、真理さんはかわいらしいしなんだか孫みたいに思ってしまってしまうのよ。ごめんなさいね。」

「いえ、そんな。そんな風に思ってくれているなんてとても嬉しいです。」

「そう言ってもらえると私も嬉しいわ。」


私が顔をあげリリーさんの方を見ると、彼女は口元を手で押さえながら笑っていた。


「そういえば、その胸元のペンダントきれいね。」

「ああ、これですか。これは、あの、レオさんにいただいたんです。」

「そうなの。ちょっと見せてもらってもいいかしら。」

「はい、どうぞ。」


私がそう言うと、「ちょっと、ごめんなさいね。」リリーさんは私のペンダントにそっと手を伸ばした。

リリーさんはペンダントを手のひらの上にすくって乗せると目を細めて見つめていた。

気のせいか少しだけペンダントが温かく光っているように見えた。

しばらくペンダントを眺めていたリリーさんは満足したのか、「ありがとう。」と言ってペンダントから手を離した。


「それがあればきっと真理さんのことを守ってくれるわ。大切にしてあげてね。」


リリーさんは笑顔で私にそう言った。

それから、日々の献立の話やリリーさんのお店の近況など世間話をしばらく続けていた。

話をしていると思った以上に時間が過ぎ、気がつくとあれから一時間以上時間が経とうとしていた。


「ごめんなさいね、引き止めちゃって。」

「いえ、大丈夫ですよ。リリーさんとお話しできて、楽しかったので。」

「そう言ってもらえて嬉しいわ。また、お話してね。」


そうリリーさんは、言うとゆっくりベンチから立ち上がり私に会釈をするとゆっくりと歩いて行った。

私は、リリーさんの後ろ姿が見えなくなるまで見送り、私もベンチを離れ人混みの中にもぐっていった。




ふらふらと、何も考えずに歩き続け、ふと気がつくとあまり見慣れない風景が広がっていた。

どうやら町外れまで来てしまったようだった。

周りを見ても人の姿が無く、道の外れに大きなゴミが積み上げられている。家がぽつぽつとあるが、この時間帯は皆出かけているのか、中に人がいるようには思えなかった。

普通の状態なら引き返そうと思うだろうけれど、終わりを探していた私は、そのようなことは思わずに、ただ、周りを見渡しながらのそのそと歩いていた。


「おい、そこの嬢ちゃん一人かい?」


急に声をかけられ無言で振り向くとそこには、黄ばんで茶色くなっているシャツ、くたびれよれよれになったズボンと上着を着て、無精ひげを生やした男が嫌な笑いを浮かべて立っていた。

何の気力もない私は、何も答えず再び目的もないままに進み始めた。


すると突然、男は怒鳴りながら私に近づいてくると、私を突き飛ばしてきた。

特に身構えずに歩いていただけの私は、そのまま地面に倒れこみ、その上に男のがのし掛かってきた。


「おい、女。無視するなんていい度胸じゃねぇか。」


荒い口調そう言った男は私の事をじろじろと見つめてきた。


「お、近くで見るとなかなか美人だな。いいところのお嬢さんか何かかい?」


そう言って「へへへ」と下品に笑う男からはとても嫌な臭いがしていたが、私は何も感じず人形のように、黙ってじっとしていた。


男は私にまたがったまま、私の体をじろじろと眺めた後、手を胸の方に伸ばしてきた。


「なかなか良いもの持ってるじゃねーか。」


そう言われたと思うと、グイッと、引っ張られる感じがした。

そちらに目を向けてみると、男がペンダントを手に持っているのが見えた。


彼のくれたペンダントが盗られてしまう。

そう思うと、さっきまで何も感じなかったのが嘘のように、なんとも言い様のない感情を私は感じた。


「止めて。」


ほとんど無意識にそう叫ぶと、男にペンダントを盗られまいと私は、抵抗した。


「おい、暴れるんじゃねぇ。」


そう言うと男は手を上げて私の顔面に降り下ろしてきた。

私は、とっさにペンダントをつかんでいない方の手でかばおうと顔の前に出し衝撃に備えて目を閉じた。

それとほぼ同時に「バンッ」という衝撃音が聞こえた。


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