4ノ4 電話ガ鳴ル
翌土曜日、ぼくはまた枯れた木のある場所を訪れていた。
いろいろどうしていいかわからないことだらけだけれども、どこかに向っていって何かをしないわけにはいかない気持ちを抑えられずにいた。何もせずに家にいるなんてできなかったし、ただ用もなくどこかへ出かける行動も取れなかった。
ぼくに行ける場所は?そう考えて家を飛び出して、気が付いたらここにいた。ぼくにはここしか来る場所がなかった。
かれの溢れるオーラに勝てる自信はなかった。ぼくは再びかれと会っても、まともに話もできないだろう。ただでさえ口下手なのに、かれは体から溢れる威厳を持ってぼくの言おうとする行為を遮ってしまう。ぼくは何もできそうにない。
それでもここに来た。ここに来て何かできないかそれを探してたかった。
森の木々は青葉を天に伸ばしていた。季節は明らかに変わっていた。葉のない枯れた木は周りとの差をさらに強め、異様な悲しさをぼくに伝えてくる。見れば見るほど、木は悲しそうな姿を晒し、ぼくの痛む心をさらに痛ませた。
さて、どうしたらいいものだろう。枯れた木をじっと見て考えるがその答えは浮かばない。それでもやらなくてはならない気持ちに駆り立てられる。たとえこの戦いに敗れても、この使命を果たすことが自分の運命である。死んでもこの使命を成し遂げなければならない。ぼくはこのために生きている。気持ちだけは溢れてくる。
艶かに少し赤らいで見える木の幹は、恥ずかしそうな、泣いているような態度を見せているかのようだ。ぼくはその枯れた木に触れるか触れないかの所まで近づき、下から上を見上げた。
異様な程に枝の数が多いこの木は、自分の頭のすぐ上で枝を広げている。いくつもに枝分かれし、最終的な先端は楊枝のように細く、触れれば簡単に折れてしまいそうな感じである。その細い枝は痛々しいトゲのようにも見え、太目の枝にトゲが刺さっているかのようにも見える。
数ヶ月前まではこの枯れた木の主はぼくであって、たくさんのトゲを刺されていた。そして痛みから逃げるように枝をあちらこちらに伸ばして助けを求めていた。
枝はどこにもいけない。葉の生えない枝は太陽のエネルギーを吸収することができずにただ苦しみながら広がるしかない。葉がないとは幸福のない暮らしを示しているみたいに、どこまでも伸びる枝は貪欲に生を求めているかように、そして生を求める貪欲な力はすさまじく、枝一本一本に多大なエネルギーが溢れ出していた。
だからかれはそのエネルギーを奪い、人以上の力を持って生きていることができたのだろう。その枝から奪ったエネルギーは多大なものだからだ。
すぐ頭上にその枝はある。ここにある枝をぼくが折れば、ぼくもその力を得られるのかもしれない。たとえばその方法もかれに勝つ一つの手段となるだろう。手を伸ばし力を込めて枝を折れば、それは今すぐにでも可能だ。
でもぼくには出来ない。誰かがこの木の主である、という事。ぼくはじっと枯れた木を眺め回していた。その木が放つオーラはとても懐かしく、とても愛おしく感じられる。
優しく、柔らかく、素敵な香りがする。きみを想う。ふとぼくは懐かしさに包まれる。とても幸せな気分だ。ひょっとして、この枯れた木に繋がる人はきみなんじゃないだろうか?と感じ、ぼくの胸の鼓動は高鳴る。もう10年も経つのに、今でもぼくはきみの事が好きだという感覚を持っている。愛しき香りが木の内側から溢れ、ぼくの鼻をくすぐる。
10年前、ぼくがあの日、かれから力を奪われる呪いをかけられなければ、ぼくはきみに告白しようと思っていたんだ。そしたらどうなっていただろう?ぼくはきみと付き合い、結婚し、平穏で幸せな生活を送っていたかな。そうでなくて振られていたとしても、また別の夢を追いかけて、ぼくは生きていたんじゃないのかな。ぼくにとって、きみに告白することがとても大切な事だったんだ。
この感触はただのエゴなのかもしれない。でも今、ぼくはきみに会いに行きたい。枯れた木の主ときみとの関連は、ぼくの勝手なこじつけかもしれないけれど。
ただ一つ、ぼくにはやらなくてはならないことを思い付いた。ぼくはきみを救いたい。この感覚がただの勘違いだとしたらそれはそれで構わない。きみが幸せに暮らしていたら、それはそれがきっと一番いいのだから。
それでもぼくは、きみを想ってもいいだろうか?ぼくはきみを想う。そしてきみの幸せを案じている。それが今、ここで得た、ぼくの答えだ。
※
きみのアパートは徐々に汚されてゆく。ホコリ臭さが増しているし、小バエがキッチンの周りをブンブン飛んでいる。暗い部屋にいるきみにはその光景も目に入っていない。生きる価値を考えるのは無意味だから、と言ってきみは息を止める。でもすぐに呼吸を始めている。人は勝手に呼吸をするから、呼吸をしない方が面倒だ、と気づく。
午後3時過ぎに目が覚めるけどまだ眠い。眠っていたいと感じているけど、きみはすでに13時間ずっと眠り続けていたから眠くない。息もせず、静まり、眠り続けていられたら平穏は訪れて安らげるのに、と思う。
眠れば勝手に息をし続けるからいつまでも眠っていたい。でもずっと眠っていたから眠れなくなる。眠る以外は暇だらけだからやはりできれば眠っていたい。夢なら夢の中で誰かに会えて少し楽しい。夢の中の友達はうざくはないし余計な話はしない。バカみたいな世界に迷い込んで笑っていられるからそれがいい。午前中に目覚めても、夢を見ていれば、その夢を思い返す時間ができるから少しは楽しく感じられる。でも午後に起きた今はすべての夢を忘れてしまっているから嫌な気分に包まれてしまう。
だから少しだけ体を起こしてみる。惨めに苛まれ堕ちる不穏の塊に歪み、天は斬新な油絵の太陽のように毒々しく燃えている。窓を開けたのが間違えだった。西日が痛い。きみの心の歪みには猛烈な非の極みしかない。それでも「生きろ!」と誰かが言うのはきみにとって残酷なことだろうか?
テレビは嫌な話ばかり。涙を誘おうという演出はイライラするし、ワイドショーに映る他人の幸せは、きみを追い詰める最悪な出来事にしか映らない。その話がきみの好きな俳優であるのなら、なおさらそれは地獄に突き落とされたのと同然のごとく、闇がきみのこめかみを痛めつける。
『わたしは不幸な生き物だから、きっと幸せにはなれないだろう』と、どんよりしてしまう。
きみの携帯が鳴った。前に鳴ってからすでに10日以上は過ぎている。10日以上誰からも電話がなかったということだ。そしてきみに掛かってくる電話はせいぜい実家の母親からだ。
画面を見れば実際そのとおりだった。めんどーな気持ちに溢れた。仕事を辞めてからよく掛かってきていたが、最近やっと治まっていた母親からのコール。暗い声で出れば、また無駄に心配されるから出たくはない。無理に明るくするのは気持ち的に本当に無理な気がするから明るく振舞う気もしない。
が、寂しさもあって、きみはその電話に不機嫌に出てみた。
「ナニ!今、忙しいの!」と。
もちろん何も忙しくない。でも母親からの内容は、ただの心配ではなく、予想外の内容だった。それは大学の同窓会の知らせという内容の話だった。母親の知らない男の子から電話があって、きみがいないかと尋ねてきたと言う。母親はきみがいないと告げると、連絡を取りたいと尋ねてきたと言う。
きみはその人物の名前を母親に聞いた。
母親はその人物の名前を答えた。
きみはその人物の名前を覚えていた。懐かしい響きのその名にきみは心地よさを感じ、不思議な気持ちになった。そして母親は、その人物の電話番号をきみに伝えた。
少しだけ、きみはやわらかい笑みを浮かべていた。はにかむような不思議な笑みだった。
※
きみからの返答もないまま、毎日はあっという間に過ぎてゆく。自分の行った行為がバカバカしくて、恥ずかしい気持ちになってゆく。ぼくは一人、勝手にきみを想い、気に掛けていて平穏に暮らしているのを願っている。その感情は無意味に宙をフラフラと漂っている。
恥ずかしい。恥ずかしい。一人妄想して、あの木はきみだ、なんて思って、そして、同窓会があるから、などと嘘をついてきみの実家に電話した。その行為の全てがとても恥ずかしい。32歳にもなって、こんな恋愛をしている男はぼくくらいなものだろう。普通なら結婚したり、まだ結婚してなくてもそろそろ結婚しようと考えたり、もちろんその相手もいるはずだ。ぼくは自分の存在が恥ずかしい。
登校拒否の中学生はいつものように自分で問題集を解いてゆく。もはやぼくの存在などあまり意味がなく、ここで家庭教師をしている意味はあまりない。ただぼくは生きていくためにお金が必要であり、そのためにここで家庭教師をやっているかのようになっている。
ぼくの存在意義は少しずつ無くなってゆく。きみには無視され、少女には不要にされ、ぼくは何のために生きているのだろう。一人勝手にぼくだけがうまく行っていると信じていたけど、きっとその全ては幻のようだ。木に奪われた力なんてものはそもそも無かったのかもしれない。ぼくの勝手な思い込みだった。ただ少しだけよく眠れるようになっただけのようなもので、少しだけ健康になっただけのようなもので、少しだけ精神的に強くなっただけのようなもの。
きっと全ては幻だった。大雨が去って空が晴れても、ぼくの心が晴れることはない。ちゃぶ台の向こう側で勉強する少女はもう学校へ行くべきなんじゃないかな?ぼくがもう君は学校へ行くべきだ、と言えば、学校へ行くようになるかもしれない。でもぼくはこの慣れた環境を壊したくなくてそれさえも言えずにいる。ずるく現状に甘んじている。
このままじゃいけない。このままじゃいけないことだけはわかっているんだ。でもぼくは日に日に力を失ってゆくかのようだ。
もう一度、きみに問いてもいいですか?
あなたは幸せに暮らしていますか?
もしあなたが苦しんでいるのなら、ぼくが必ず救ってあげるからね。
恥ずかしい。恥ずかしい。だけど、ぼくは…。
気がつくと、登校拒否子がぼくの目をまじまじと見つめていた。ぼくはとっさに顔を左右に揺らし、何かを探すふりをした。あまりに恥ずかしい気持ちになってしまった。
「どうしたの?先生?」
「いや、どうもしないんだ。どうもしないけど、どうにかしないといけないんだよね」
「…?変なの」
ぼくはここにいる。いつもの生活の中に含まれている。不思議な事はたくさんあるけど、当たり前の事もたくさんある。だからぼくはぼくを信じて、可能な限り生きてみようと思う。
※
ずっと家にいると、天気もどうでもいいし、電車の運行状況もどうでもいい。
ずっと家にいると、隣の音が気になる。アパートの入口に人がやってくるような気がすると怖くなる。
きみを囲う環境は狭く、どんどん収縮してゆく。人に会うことが嫌なきみは、家の外へ出るだけのことでさえ、酷く怖くて悩んでしまう。コンビニの店員にも会いたくない。自分の存在が他人に感じられないままに食料を手に入れたい。そんな事を本気で考えるようになっている。
電話が震えたのは、そんな時だった。バイブレーションの振動音でさえ、やけに大きな音に聞こえる。
ひょっとして、ときみは思って見たら、そのとおり、ひょっとして、だった。それは番号のみの通知、つまり、登録されていない電話番号から掛かってきた電話だった。
でもその電話番号をきみは知っていた。きみはその電話番号を母親から聞いていて何度も目にしていた。何度も目にして何度か掛けようと試みた。数字を入れては消し、入れては消し、入れて、でも通話のボタンを、指が押し切ることはなかった。いつも親指は通話ボタンの上で止まり、いつの間にか切る方のボタンへと動いていた。
その何度も入れた番号をきみは覚えていた。電話は掛けずとも掛かってきた。
きみはじっと震える電話を握っていた。握り続け、ただ震えるのを感じ続け、そのまま何度も震えては止まり、震えては止まり、震えて、止まり、震え、止まり、震、止、震、止、やがて、バイブはまるで動かなくなり、完全に止まり、電話番号の文字も画面から消え去ってしまった。
その電話に応えることがきみにはできなかった。
夕方4時の出来事だった。きみの心臓はいつの間にか高鳴り、ドクドクと響いていた。きみはその心臓の音を聞き続けていた。
『いったい何だって言うの?いったい何で?』
心の中でそう呟いていた。きみには疑問があった。
10年以上前の知り合いが同窓会だからと言って、電話番号も知らなかった相手にいきなり電話してきたりするものだろうか?という疑問がどこかにあった。本当に同窓会であってもきみは行く気がなかったし、ただ断るだけだった。だからその電話に出ても良かったのだけれど、どこかでそれは同窓会の話ではないとの予感があったから迷いは強くあった。
きみは思い出していた。その電話の主は昔、自分の事を好んでいてくれた相手であった。きみは知っていた。でもきみは別に好きな人がいたし、当時、その電話の主と付き合おうなんて考えたこともなかった。たとえばもし、そんな事を今言われても確実にただ困るだけで、そんな事をバカバカしく想像している自分もまた、バカな妄想をしているようで仕方なかった。
『いったい本当のところ何なのか?』
その疑問の正体を少しだけ知りたい気もしていた。でもそれは知らないまま、忘れられるべき記憶として消えてしまった方がいいような気もしていた。きみはそんな迷いに頭を悩ませていた。
そんな事を考えていたら、電話は再び震え出した。液晶には同じ電話番号が浮かんだ。同じまま、変わりなくただ震えていた。今度はなかなか止まらなかった。きみが出るまであきらめないかのようにその電話は震え続けた。
やがて留守番電話に変わった。声がした。その電話の主は自分の名を名乗った。そして「こんばんは」と言った。それからしばらく間が空いた。きみが出るのを待っているかのようだった。でもきみは出なかった。ただじっと黙って、声を聞いていた。
「久しぶりですね。突然電話して、すいません。もしよかったら、あの、お電話ください。じゃあ」
たどたどしい言葉だった。声は弱々しく震えていた。でも怖がっていたわけじゃない。その声の主がそういう声を昔からしていたからだ。思い出の声と変わってはいなかった。懐かしさは増したけど、ただそれだけだった。
『困ったものだな?』ときみは心の中で言ってみた。それだけで、それ以上はどうしようもない。
少しだけ、その電話の主に自分を見られている気がして、急に今の自分のどうしようもない姿が恥ずかしくなった。せめてお風呂に入って、髪を洗って、服を着替えて、ゴミを捨てようと考えた。
※
土は露に濡れていた。緑の葉は見渡す限り全開になり、森の内側は弱く柔らかい光に包まれていた。梅雨中休みの晴れ空の下には、森の持つ独特の静けさが辺りを包み、心休まる様相を作り上げていた。森林浴をしているだけでも十分元気を取り戻せそうだが、かれの目的は森の中にある枯れた木にある。
どことなくすっきりしない日、かれはこの森にやってくる。
最近は編集者の女の態度が好きになれずにいる。それはとても些細な事だが、その些細な事が気に障るくらい、かれの周りはその他においておよそ平穏である。
濡れた土道をゆっくりと奥へ行く。革靴はすでにドロドロだが、かれはそれをさほど気にしない。もう少し行けばそこには葉のない艶やかな幹を裸のままに晒す木が姿を見せるはずだ。
枯れた木は姿を現した。いつもよりも白く柔らかい生き物のように見える。かれは嬉しそうに微笑む。そして待ちきれないとばかりに駆け寄り、その木の幹に手を触れる。
木は訴えかける。
「自信を持ちたい!自分らしくありたい!自分を持ちたい!」
やさしく、強い女の声がかれの耳元に響く。かれはその声を吸い込むように聞き取る。何度も何度も。
「自信を持ちたい!自分らしくありたい!自分を持ちたい!」
女はそう要求する。かれは目を瞑り、その女の声の質、響き、感触を耳だけでなく、肌で感じ取っている。幹を撫で回すように触り、ゆっくりと呼吸を整えて撫で続ける。
やがてかれは目をきらりと輝かせた。大きく見開いた目で、悪魔のような笑みを浮かべる。口は笑っているが、目は怒りに満ち溢れているかのようだ。
そして一本の枝に手を掛ける。強く握り締め、枝を引きちぎろうとし始める。
「おまえみたいな女に何ができるんだ!おまえみたいなブ女は、下女として働けばいい!」
かれは怒りのこもった声でそう叫んだ。その言葉と共に、木の声は止み、涙のような液が木からこぼれる。木は泣いていた。いや、木はただ、かれが引きちぎろうとする枝を引っ張ったことで揺れて、溜まった雨露が揺さぶられ落ちただけかもしれない。でも枯れた木は泣いているかのように見えた。
力を込めて、枝を揺さぶるうちに一本の枝が切り折れた。裂けるような嫌な音と共に枝はもげ落ちた。悲しみと痛みが走った瞬間、対照的にかれは自信とエネルギーに溢れ、目を輝かせた。
2時間後、かれは山奥の別荘に戻った。そこにはかれの苛立ちの原因である編集者の女が待っていた。
かれは戻るなり女にプレゼントを渡した。高価なピアスだった。女はいつもピアスをしていた。そしていろいろなピアスを集めていた。だからそれは、女にとって強烈な意外性を持っていたが、嬉しいプレゼントでもあった。突然の好意に女はどうしていいかわからなかったが、物をもらうことに慣れていた女はそれを素直に受け取っておいた。
そして何事もなかったかのごとく、仕事である編集内容の確認を淡々とし始めた。編集者の女は淡々と話していたが、目の前の男はいつもより話しやすい感じのする不思議な雰囲気を醸し出していた。普通に仕事の話をしているのだけれど、女はどこかでまだ出逢って間もない恋人と会話をしているような気分になっていた。なぜそんな感情を抱くのか、それを少し考えるうちに、自分は作家である目の前の男に好感を抱いていると気づいた。
『この間のいやみは何だったんだろう?』
初めて会ったときに嫌いだのなんだの言われた事をふと思い出す。忘れていようと思った記憶が今では嫌ではなく、痛みとして感じ始める。まるで別人を見ているかのように、女の瞳にかれの姿が映る。かれの瞳を覗くと、爽やかな笑顔で見返された。編集者の女はドキリとした。まるでそこには喧嘩の後に仲直りした好きな男がいるかのようだった。
「どうかした?」
少しぼぉっとしてしまった女にかれは尋ねてきた。
「あ、いえ、すみません。どこまで行きましたか?」
「ああ、この部分から」
そしてまた仕事の話に戻る。でも女はもういろいろな意味でかれの別の部分が気になり始めている。不思議な感覚が女の体の中に入り込んでゆく。女はどこかでかれの全てを知りたくて仕方なくなっていた。
やがて女はかれの持つ支配の下に落ちてゆくだろう。編集者の女はいいように料理されようとしていた。しかしそれはどうしようもない。かれの編集担当となってしまったこと、それがその女の運の尽きだったのだ。




