第五篇「しばらく遊べるゲームとしてキャプコンの名作ゲーレックマン8のオープニング曲で天愛が感涙する話」
「入ってください先輩……」
「おう」
ドアを開けるとラフな格好の天愛が待っていた。
少し大きめのタンクトップにホットパンツ。僅かにブラが浮いているので目のやり場に困る。
もっとも天愛は気にした風もなく自分の隣の床をパンパン叩く。
「……」
せめて座布団くらい敷いてほしいと思いながらも冷たい床に直座りする。
胡座をかきながら隣に座る天愛を認める。
「で、今回はなにをやらせてくれるんだ?」
ビービーとディジモンが呼びかける。
無表情のままディジモンを手に取り画面を見る。
「こいつ、また生意気言いやがった!」
借りているゲームのモンスターと同レベルでケンカを始める。
「たくっ……こいつは!」
不機嫌を隠さず頭を掻く。
「うんうん♪」
レイジの反応に天愛も貸したゲームを気に入ってくれたみたいだと判断し、満足げに頷く。
「さすがに毎回毎回新しいのを紹介してたらすぐにネタ切れになるので今回はある程度長くやれるものを選別しようと思って……えっと、どれがいいかな?」
雑に床に置かれたプラスチックケースを開き中身をごそごそ探りだす。
「……」
前屈みになるこどで天愛の尻が浮き、レイジの目線が横を向く。
(意外とデカいな……)
胸も尻も態度もデカい。でも身長は低いって漫画のような奴だなと呆れてしまう。
「あ、これなんかいいかも♪」
プラスチックケースから一枚のディスクケースを取り出す。
「サガサターンのレックマン8です!」
ぼろぼろのケースを取り出し愛する者を抱くように大きな胸に包む。
「これは傑作なんですよ!」
「レックマン? レックマンって確か、キャプコンの看板キャラのレックマンか?」
「はい!」
飛び上がるように頷く。
「通から初心者までみんな大好きレックマンです! これはそのサガサターン版で事実上一旦の完結編です!」
「完結編?」
小首が傾げる。
天愛も雑学を話せると得意げに目を細める。
「本家レックマンはこの8を最後に14年と11年ナンバリングが途絶えました」
「なんで二つ年があるんだ?」
「このゲーム、サガサターン版から三年後にPZ版が発売したんです。だからどちらから数えるかで年数が決まりますね。まぁサガサターンの方が流通してるのでこっちをやりましょう」
「11年って……まさかクソゲーじゃないだろうな?」
「失礼な! 最高傑作ですよ!」
サガサターンにディスクをセットし、ポチッと電源を入れる。
ロゴが流れるとゲームのオープニング曲が流れ始める。
軽快でロックでアニメ曲らしい聴き応えのあるいい曲だった。
天愛の目が少し潤む。
「これです! レックマン8はオープニングが超神曲なんです! これだけでご飯が食べれますよね!」
「涎を垂らすな……確かにいい歌だけど」
平成のアニメ曲特有のテンポのいい音楽と歌にレイジも気付いたら聴き入っていた。
最後にレックマンがレックバスターを撃ちオープニング曲が終了する。
「はぁ……」
うっとりと天愛の表情が紅潮する。
「このオープニング曲ってついつい聴き惚れちゃうんですよね。とくにゲームをやる気が無くってもオープニング曲を聴くためだけにゲームを起動しちゃうんです」
「暇なんだな……」
「その暇な時間をあの自意識過剰の自己陶酔野郎のサクトさんが急に思いつきで人に招集をかけるから……ああ、あの男は一度痛い目合わせてやりたいです」
「頭掻くな。剥げるぞ」
「余計なお世話です!」
ゲシッと蹴られる。
「はいはい……」
レイジも天愛を無視してゲームのスタート画面からニューゲームを押す。
今では珍しいセル画アニメでゲームが始まり五分ほど経って画面が映り変わる。
天愛の手がレイジのコントローラーを握る手に触れる。
「まずステージを一つずつ丁寧にクリアしましょう。あ、ちなみに最初のステージもそこそこ歯応えがあるので気をつけてくださいね♪」
「アクションは嫌いじゃないし大丈夫だろう」
「でも得意でもないでしょう?」
「やかましい!」
ステージが始まり美麗なドットグラフィックのレックマンが現れる。
現れて一秒にも満たない時間に露わになっている黒髪の上に特徴的なメットを被りゲームが始まる。
(悪くないな……)
ドットグラフィックならではのなにか温かみにレイジの心がときめくのだった。
その表情を天愛もうっとりした顔で眺め続けている。
つづく




