第四篇「伝説のマイナーゲーディジモンワールドポケットの口の悪いモンスターに大人げなく激怒する話」
「これってディジモンだよな?」
渡されたポケットゲームを見る。
画面にはドット絵のモンスターが表示されてる。
一部で人気の高いディジタルモンスターのアウモンだ。
レイジの小首がかしげる。
天愛も弄っていたスマホから目を離す。
「先輩の大好きなディジモンです。好きでしょう?」
「まぁ確かにパケモンよりは好きかな……」
「男の子ですもんね」
「男の子だからな……うん? このディジモンのゲーム、セリフが出てきたぞ」
ポケットゲームの画面にドットで描かれた文字が表示される。
ちょっとした世間話だが心がホッとする。
あのディジモンがドット文字とはいえ喋ってる。
愛好家としては強い幸福感を覚える。
天愛の表情が得意げになる。
「いいでしょう♪」
鼻息を荒くし大きめの巨乳をぷるんっと揺らしながら前に出す。
少しだけブラの形が透けて見える。
レイジの目線が逸れる。
天愛の目がレイジの目を捉えて笑う。
「さっそくこのゲームの素晴らしさを教えましょう! このゲームの名前は「ディジモンワールドポケット」といいます。ディジモンワールドは知ってますよね?」
「知らん」
キッパリ言われ天愛の顔が苦くなる。
「本当に古いゲームに興味ないんですね」
頭を振り髪を整える。
「簡単に言うとディジモンをゲームの画面で育てて戦って世界を救うRPGです。これはそれを元祖ポケットゲームに落とし込んだ傑作です!」
また得意げに胸を張る。
大きな胸がふるふる震えレイジの目のやり場を奪う。
「あ、なんかゲームが鳴り出したぞ?」
サイレンのようにポケットゲームの上方についている通信端末のライトが赤く光る。
レイジは反射的にAボタンを押す。
ディジモンの顔がアップに映し出される。
『あぁ~~あ……一人になりたいな。君と一緒にいてもボク、強くなれる気がしないし』
レイジの額に青筋が浮かぶ。
「こいつ、デリートしてやろうか!?」
「お、落ち着いてください!」
慌ててゲームの本体を手で覆う。
「こういう時は叱ってください。謝ることも出来ますけど調子づくだけなんで……」
天愛の指摘にレイジは不満げに「叱る」の選択肢を選ぶ。
アップで表示されたディジモンの顔が不満そうに不貞腐れる。
『生意気だぞ!』
レイジの額にまた一つ青筋が増える。
「消す!」
「だから落ち着ていください!」
データを消す方法を探そうとするレイジの手を掴む。
「このゲームに出てくるディジモンは基本生意気なんです! 広い心で受け止めてやってください」
「あ、また光った……」
また画面にディジモンの不貞腐れた顔がアップで映る。
『ボク、家出するよ。一人でやっていける自信あるし!』
レイジの血管が切れそうになる。
「そうかそうか! お前は一人でやっていけるならこっちだって願い下げだ! 二度戻ってく」
「ちょ、ダメですって……」
「あっ……」
本体を取られレイジの手が宙を舞う。
すぐに腕を組み視線を横にやる。
「こいつは一度、野に放たれて社会を思い知るほうがいい! どうせ二、三日したら戻ってくるんだろうしな!」
「その代わり最終進化に辿り着けなくなるんですよ」
「はい?」
天愛はプレイしていたスマホゲームを閉じ、攻略サイトを開く。
「このゲーム、育成過程でミスを一回でも……家出を一回でも許すと最終進化に必要な条件を満たさなくなって詰むんです。このゲーム、ステータスがオール値でようやく全クリ出来る難易度になので最終進化出来ないとラスボスどころか途中の中ボスにすら勝てませんよ!」
「ははは! この糞生意気なモンスターのご機嫌を取りながら世界を救えってか?」
「ご不満ですか?」
天愛の手からゲーム機を奪い返す。
「やったろうじゃないか! この糞生意気なディジモンを最終進化させてやる! で、これはどれくらいの時間で最終進化するんだ?」
「だいたい一週間くらいですかね……」
「い、一週間?」
レイジの目が瞬く。
天愛も目を細めやれやれと首を振る。
「このゲーム、原点回帰がモットーでポケットゲーム時代同様数日プレイしてようやく進化するんです」
レイジの目を見る。
「良ければ最終進化するまで貸しましょうか? どうせそのゲーム機後五個持ってるんで……」
「……貸してくれ」
「えへへ♪」
天愛の表情が嬉しそうに破顔する。
大きな胸を揺らしながら張り、人差し指を天に向かって指す。
「そのゲーム、進化させるにはプレイゾーン機本体にこのメモリーカード型のゲーム機を挿してゲーム画面中の「進化」を選択しないと進化しないので先輩……しばらくは学校帰りは私のお家に寄ってくれますよね?」
「……」
レイジの目が呆れる。
「お前、わかっててこれ渡しただろう?」
「嫌いですか……こういう手?」
「むしろこういうセコイ手を使う奴は嫌いじゃない。腹は立つけどな……」
「へへ♡」
大きな胸をぷるんっと張って笑う。
よく揺れる胸だなとレイジはもう目線を逸らすのをやめることにした。
つづく




