第十二篇「付きまといのストーカーあつかいされてショックで宿題をやる気になれない男の話」
自分が天愛に付きまとっている。
その一点のみでレイジは精神的ショックを隠せなかった。
絶対に負けない自信のある千早サクトに見ごとに弁舌で敗けた。
無理もない。
あんなマイペースな人間に付きまとわれてるのに他人から見たらこっちが付きまとってるように見えている。
そのショックにレイジのプライドはメタメタにされた。
「……」
宿題を終わらせて単位を確保するつもりが見事に机に突っ伏して動けなくなっている。
「どした、話聞こか?」
あまりに惨めな姿に悪友のアマハルが頭頂部のつむじをちょんちょんッと突っつきながら聞く。
レイジの光のない目がアマハルを見る。
乾いた笑いすら浮かべる。
「他愛のないことでメンタルブレイクされてるだけだから……」
「他愛のないことねぇ……」
腕時計を見る。
「放課後、メイド喫茶に行くか? 悩みがあるなら聞くぞ」
「っ……」
耳がぴくっと動く。
光のなかった目に光が戻る。
アマハルの目が嬉しそうに細まる。
「反応したな?」
イタズラっ子のように笑う。
「この前行ったは宅楽楼でいいか? ハマッてるんだ」
「……」
レイジの顔が少し事案にふける。
「にゃーちゃんは今日シフトに入ってるのか?」
アマハルの顔がニヤァと笑う。
「にゃーちゃん推しか?」
だがすぐに肩を落とす。
「恐らく今日はシフトは入ってないぞ。あの子、週三日勤務で今日はお休みの可能性が高い」
ガバッと起き上がる。
「じゃあ行こう。絶対に行こう!」
「お、おう……」
食い気味のレイジにアマハルもたじろぐ。
「にゃ、にゃーちゃんが目当てじゃないのか……」
顎に垂れる汗を拭う。
「ちょっと意外……」
てっきり好みは一緒かと思ったが案外違うんだなとアマハルは呆れてしまう。
「うん?」
レイジの目が教室の外を見る。
アマハルの顔がいぶしがる。
「どうした?」
「いや、今誰かに見られてた気が……」
「おいおい……」
アマハルの手が演技かかったように肩の上でやれやれとなる。
「そんな安いミステリー物の導入じゃあるまいし……」
腰に手を当てる。
「そうそう俺達のようなオタクの言動を見守る輩なんていてたまるかよ」
「そ、そうだよな?」
乾いた笑いを浮かべる。
アマハルの手がレイジの学生カバンに手を突っ込む。
「そんな事よりも早く宿題をヤッちまいな。ヤだぜ、友達が宿題やらずに落第して後輩になるなんて!」
「あ、ああ……そうだな。て、なんでお前も宿題を広げてる?」
「俺もやってないから一緒に見せっこしながら終わらそうぜ?」
「俺達のメンタリティってもしかして小学生から成長してない?」
「かもな……」
愉快な笑みを浮かべアマハルは自分の鉛筆を握る。
同じようにレイジもシャープペンシルを握る。
「……」
その姿を観ながら一つの影がクスッと笑う。
「〜〜〜〜〜♪」
鼻歌を歌いながら影は小躍りするように廊下の奥へと歩いて去っていく。
つづく




