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れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜  作者: 税抜き100円の中古本
第一章「レトロゲーム大好き少女との出会い」

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第十一篇「バッドコミュニケーションでしか聴けないセリフもあるから聞こう」

 人のいない学校の裏庭の時計台広場にやってくる。

 レイジは振り返り眉間に皺を寄せるサクトの個性のない顔を認める。


「はぁ……」


 ため息を一つ吐くとサクトは整えられた前髪を小さな手でかき分ける。


「……」


 顔に個性がない分、髪型一つでイケメン度合いが変わるのだなとレイジは感心する。


(何者にもなれるけど何者にもなれないってことか?)


 あからさまな喧嘩腰のサクトにレイジはどこか飄々としている。


「こっほん」


 自身の苛立ちを隠すためかサクトは口に拳を近づけ演技がかった咳払いをする。

 その行動一つが共感性羞恥を誘発させる。


(こいつ、自分の行動が浮いてる自覚あるのかね?)


「ふっ……」


 サクトの澄まそうとしていた目が他人を見下す冷淡な瞳に変わる。


「日々を怠慢に暮らす怠惰なボクの最愛の人にした最大の人の一人である彼女が道端の雑草ごときに惑わされ」

「二百文字で答えろ」

「最愛の乙女が君のような日々を無駄に暮らす凡夫に染められ続けている。そのせいで輝かしいチーム千早の」

「帰るわ……」

「待て! 人の話は最後まで聞け!」

「聞いてほしかったら聞いてもらえるよう喋り方に努力しろ」


 掴まれていた手を払う。

 振り返ると意外と鍛えられた腰に手を当てる。

 レイジの気怠げな目がサクトの少し濁った瞳を見つめる。


「言っとくが俺もお前が思ってるほど暇じゃない。今から教室に行って今日提出の宿題を五分で終わらせないといけないんだ」


 サクトの目が見下げた人間を見るように歪む。


「日々の試練の一環を数分で済ませることは不可能。ゆえに」

「帰る」

「だから人の話を聞け!」


 また肩を掴まれレイジはいやいや振り返る。


「用があるなら二百字で答えてくれ。SNSのZX(ゼクス)でも二百字以内で会話が可能だろう? 無駄に冗長なセリフは自分の言葉に自信が無いと受け取られるぞ」

「……」


 サクトの額に青筋が立つ。

 男相手にここまでコケにされたのは生まれて初めてなのだろう。


「こっほぉん」


 また演技がかった咳払いをする。


「ふっ……」


 ひと息冷笑するとサクトは自分の右手を顎の前に持ち、左手を股間部を隠すように構える。

 どこか色気と卑猥さを醸し出そうとする奇妙なポーズにレイジは「ロロの奇妙な日常」を表面上だけ切り取ってるんだなとすぐに理解する。


「率直に言う。天愛に付きまとうのをやめろ! 彼女が迷惑する!」

「……え?」


 一瞬、思考が停止する。

「今なんと……?」


 効いてると判断したのかサクトの顔に余裕が生まれる。


「同じ音を奏でるなら蠅にも出来る。君は蠅よりも不快の音を奏でながら」

「いいからさっさと答えろ。帰ってもいいんだぞ?」

「だから天愛に付きまとうなって言ってるんだ。このストーカー野郎!」

「付きまとう……?」


 思考が停止して時が止まった気がする。


(俺が……あの小娘に……付き纏ってる?)


 まだ付き合いが一日しかないが不思議とその言葉に……


「すっげぇ心外!」


 心の底から人の言葉にイラッと来るとは思わなかった。



つづく

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