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あれから燕ちゃんと連絡がつかなくなってしまった。
メッセージもブロックされてるわけではないけれど既読スルー。
家に直接行ったけれど、普段開いてるはずの玄関には鍵をかけている。
そこまでするのならもうバイト先にも行きづらい。
こちらと会話をする気が、少なくとも今はないみたいだった。
そうして僅かに残った夏休みを半ば宿題をやるためだけに過ごして、2学期になるとさらに2人の距離を決定づける噂が学校で流れていた。
「傘折さん! あの金髪の先輩と別れたの?」
始業式の日に登校して1番に言われた言葉はそれだった。
全く話したことのないクラスメイトに詰め寄られて、全身が緊張した。
「えっ……?」
「付き合ってたんでしょ? 花火大会で見かけたし、噂にもなってたよね?」
いきなり何を言い出すんだろう……?
名前も知らないクラスメイトはポニーテールをブンブンと犬のように振ってこちらから目を離さない。
「付き合って……た?」
「うん。さっきあの有名な金髪の先輩がきて『傘折さんと別れた。あの子は良い子だから仲良くしてあげて』って言われたんだよね」
それを聞いて即で私にその質問なんだ。
そんなツッコミは置いておいて、燕ちゃんの言葉に私はじんわりと背中に汗をかいた。
そんな様子を意に介さず彼女は続ける。
「そんなこと、言ってたんですか?」
「うん。あの先輩わざわざ『私が彼女を独り占めしちゃったから、友達がいないかもしれない』って伝えてくれたんだよ。良い人だねあの先輩。怖いと思ってた」
「つ、燕ちゃんは優しいですよ……」
反射で燕ちゃんを擁護すると、目をキラキラさせながら目の前の彼女は私を見つめた。
手のひらがじんわりと汗ばんできた。
「それで、なんで別れちゃったの?」
ほらきた。別れた理由については、別れたつもりもないから答えられない。
彼女は矢継ぎ早に「女の子同士なんて不思議だね」とか「女の子と付き合うってどんな気分だった?」なんて関係が終わったことのように聞いてくる。
まだ私の中では終わってないのに。
苦笑いしか出来なかった。
「あっ、ごめんね。失礼だよね」
もう遅いよ……。
アクセルを全開にした後でブレーキを踏む彼女に、喉の奥がざらついた。。
「だ、大丈夫ですよ」
そして緊張しながら、笑ってみせた。
するとそれを見て彼女は目を丸くして、こちらをジロジロと覗き始める。
「でもさぁ? 傘折さんって他の人と距離があるし、いつもあの先輩といるから怖いと思ってたけど、結構明るいんだね」
「……ど、どういうことですか?」
「花火大会の時、すっごい楽しそうに縁日で歩いてなかった?」
「まぁ……」
「そうだよね! やっぱりあれ傘折さんだ! あのさあのさ! 傘折さんって意外と話しやすそうだし、もっと話さない? 気にはなってたし」
……これはなんなんだろう。
友達が出来るのは嬉しいことなんだけど、何か外堀を埋められているような恐怖を覚える。
今この瞬間に心の中で拳を握ってガッツポーズしたくなるくらい、友達は昔から欲しかった。
けど、それでは私の中で形成された燕ちゃんの領域を埋められない。
……あぁそうか。意図が見えた。
私の孤独を知ってるから、燕ちゃんは私と友達になってくれそうな女の子に話しかけたんだ。
私と距離を置くために。
私と居場所を完全に隔てるために。
「うん。話しかけてくれたのは嬉しいです。でも……」
「でも?」
ポニーテールの女子生徒は目を丸くして首を傾げる。
「名前……なんでしたっけ?」
そういえばクラスの人の名前……ほとんど覚えていなかった。
入学式に声をかけられてから、私はずーっと燕ちゃんを見てたから。
「うわ、知らなかったの? 鮫島小針だよ。小針でいいから」
そんな様子を気にせず彼女は名前を教えてくれる。
燕ちゃんは私が登校する前に他の子にも声かけをしていたようで、教室に入ると想像以上の女子生徒に囲まれた。
半分は鮫島さんが主導になっているけれど、やはり女子同士の交際というのは気になるのだろう。
別れたつもりはないのに周囲の認識では別れたことになっている。
週刊ゴシップ誌があることないこと吹聴すると世間では大ごとになる。
高校のスケールでも小さな噂から大きな興味を惹きつけることはあることなんだ。
私は初めて、友人関係にそんな一面があることを知った。
こういう感じなんだ。友達って。
肩の力を抜きながら、そんなふうに思う。
けれどそうやって友達を作らせることで、徹底的に私との距離を取ろうとしてる燕ちゃんが気がかりでし母tなかった。。
焦りが私の気持ちを逸らせる。




