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密季
私は瀬波燕を愛しています。
死の間際に言い残したいことを聞かれればそう答えると思う。
燕ちゃんに首を絞められた時は「友達になってくれてありがとう」だったけれど、それを伝えた今ならこう言う。
例え殺されたって私は空の上から彼女への愛を囁くと思う。
夢の中でも彼女を抱きしめたいと思うくらいに溢れる胸の気持ちは、いくら本人に伝えても減ることはない。
間欠泉よりも熱く噴き出す。
夏の太陽光よりも眩く私の胸に注いでいる。
「あなたが一番気になった」
そう言ってくれた瞬間、私の世界にあなたは現れた。
何を欲してもすぐそばにあって、何を欲してもその通りの願いが叶うことはなかった。
孤独な中で傘折密季という人間は認められたことがなかった。
同級生のうちの誰か。
転校生でやってきた子。
傘折琢磨と傘折美幸の娘。
私の好みや個性や、アイデンティティも、周りが私のそれを見ることはない。
私はどこにいるんだろう。
宙ぶらりんな中で、私を見つけて気になったと言ってくれた瀬波燕に魅入られた。
超進学校の黎明高校。
そんな環境でも金髪な彼女が最初は怖かったけれど、その言葉で私は惚れてしまった。
怖かった金髪がアイデンティティを感じさせ、芝居がかった話し方も私への気遣いを感じさせる。
作り物と分かる笑顔も、こちらを伺う視線も、全てが私に向いている。
宙ぶらりんで誰とも距離を縮められない臆病な私の手を引いてくれた。
だから、好きになってしまった。
まさか自分の初恋が女の子になるなんて思わなかった。
好きな食べ物、好きな色、好きなスポーツ、好きな教科、様々な好きや嫌いが私を作っていたけれどまだ知らない要素があった。
好きな人、瀬波燕。悪くない。
ずっと好き。ずっと大好き。
変わらない。
彼女がどんなに私のことを嫌いでも構わない。
叶うなら好きになってもらいたいけど、嫌いでもいい。
暴力を振るうならずっと振るってくれて構わない。
その痛みに縋りつきたくなるほど、私は彼女といることで体が温かくなる。
傘折密季という人間が、その場にいることを実感できる。
歪んでいる。間違っている。
頭の奥でなんとなくそう感じていても、この感情は止められない。
彼女の口から発せられる言葉がお父さんや私への恨み言でも、胸が弾む素敵な詩でも、きっと私は胸にしまい込む。
大切に。
彼女が私を選んだ。それが何よりも重要なんだから。
私をずっと見てて、私を知ってほしい。
誰も見てくれなかった私を見てほしい。
暴力を振われたのも正直都合が良かった。
最初は先輩に告白したら「女同士だよ?」とか引かれるんじゃないかと思った。
けど、少し歪なあの導入なら自然と好きと伝えられた。
偽物の関係だったとしても、恋人のようになれる。
あぁ……自分の好きな人のことを全部、全部知りたい。
もっとあの人のことを知りたい。
お互いに同じ時間を過ごして、お互いを知って、もしお互いが好きになれたらそれが理想。
そうやって私は好きになって欲しくてずっとアプローチを続けている。




