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大嫌いな後輩女に脅されて付き合うフリをするハメになった話  作者: 鳩見紫音
戦争よりも差別よりも嫌いな存在

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21/29

17

 私は手を引かれながら射的の出店まで連れて行かれた。


 子供をかき分けて進んだ先の射的の値段は5発500円。


 その値段に目がいっていると、出店のおじさんがこちらに声をかけてくる。


「お! お嬢さんたちやってく? 500円ね」

「はい! やります!」


 手なんかあげちゃって。周りの子供達に負けず元気だな。 

 彼女がポケットから財布を取り出して500円玉を差し出すと


「お嬢さんたち美人さんだから1発サービスで6発ね」


 そう言うとスキンヘッドのおじさんは6発のコルク弾の乗った皿が銃の乗った台に置く。


「まずコルクを銃口に詰めてからレバーをグッと引く。それでこの線の内側から狙う。大丈夫かな?」

「はい、何となくわかりました」


「そっちの金髪の子は? サービスするけど」

「あぁ、私はいいです」


 顔の前で手をひらひらとさせて私は断る。


「そう? まぁいいけど」


 少し下がってまるで親みたいな気分で弾をこめて景品を狙う傘折を後ろから見守る。

 隣に小学生もいたけれど、ウキウキ度なら多分負けてない。


 そして1発目を打つ、ハズレ。


「あぁハズレ。惜しいね」

「難しいですね……思ったより弾の勢いもないし、もっと……角度かな?」


 いや、子供よりも楽しんでるかもしれない。

 彼女の四苦八苦している様子を見てそんな風に思った。


 そうして彼女はまた構えて打つ、首を傾げ、構えて打つ、ここまで全てハズレ。


「またハズレ……悔しいなぁ」


 そんな難しいのかな。

 当たる気配のない彼女の射的を見て、少し指がむずむずとする。


「またダメた……かすったんだけどなぁ」


 もう少し下じゃないかな……何を思うまでもなく自然とそう思ってしまう。

 傘折は唇を尖らせてムーっと銃を見つめた後、残り1発のコルクを見つめた。


 そしてこちらを振り返りながら、おもむろに言葉を投げかけてきた。


「あっ……! 燕ちゃんやってみませんか?」


 後ろでぼーっと眺めてた私と目が合い、何かを閃くような顔でこちらに言う。


「燕ちゃんの方が上手かも」

「いや、お金払ったのはあんただし」


「もうお金払った分は打ちましたから、サービスの1発はやってみてくださいよ。いいですよね?」

「ダメダメ、銃の貸出代もあるから」


 するとそれを見咎めたおじさんが口挟む。


「えー?」


 顔の前で手をクロスさせてダメダメとするおじさんに傘折は不服を示すも、答えは変わらない。


 彼女は口を尖らせながらこちらを少し見つめると、彼女は渋々銃を構えた。


「さぁ! 最後の1発頑張ってぇ!」

「んー……」

 あー、多分それじゃダメだよ。

 銃口が上へ下へと動くそんな様子に、私も痺れが切れた。


「待って……おじさん、じゃあこれは?」


 二人羽織のように傘折に覆い被さり銃を構える


「えっ! ちょっ! 燕ちゃ……っ!」


 なんか出店の言いなりになってる気がして、反抗したくなった。

 だから2人でアレをとっておじさんの顔を青ざめさせてやろう。


 グッと体を傘折に寄せて固定する。

 それはもう心臓の音が聞こえるくらい、近くで。


「いいですよね、これなら」

「えぇ? まぁ……いいか」


 射的屋のおじさんも渋い顔をしながら流石に許可をくれた。

 傘折は緊張したのか震えていたけれど、私が彼女の手を抑えて標的を見つめる。


 毛布のように重なって銃を構える。


「重い……」


 弾同様にスカスカなのかと思ったら意外と銃は彼女越しでも重い。


 スマホのシューティングゲームだと銃のリコイル制御とかそういう技術が必要だったりするけれど、コルクの弾を打つならいらないしこの重さならむしろ下がるのを抑える必要がある。


「もう少し上ね」

「はい……」


 グイと持ち上げる。傘折もそれに合わせて力を入れるから銃が少し軽くなる。

 どんどん私と傘折の境界線が消えていく、近づくほど銃身に安定感が生まれてくる。


 私の息が彼女の頬を撫でるんじゃないかと思うほど、顔が近い。


 そんなことを気にしてる余裕もなく、ちょうどよさそうなクマの人形の頭に銃の照準を合わせた


「あのクマでいい?」

「えっ……あっはい。当ててくれたらなんでも嬉しいです」


 彼女の息遣いまで聞こえてくる。緊張している。

 弾は1発だから慎重に。

 2人の心臓の音が合わさるように、心を落ち着ける。


「わかった」


 私はその言葉を聞いて、グッと息を止めて彼女の指の上から引き金を引いた。

 ポンっと小気味のいい音が聞こえてコルクの弾丸はクマの頭に激突した。


「当たった……!」

「燕ちゃん、すごい!」


 ふぅと息を漏らして彼女から離れると、今度は傘折の方からこちらに正面から抱きついてきた。


「すごいすごい! おじさん! 当たりですよね!」


 興奮してぎゅっと私の体を抱きしめ、周りの目を気にせずおじさんに主張する傘折を見てると、狙って張り詰めた気持ちが緩んだ。


 こちらが射抜いた側なのに、なんか心臓のあたりを射抜かれた気分だった。


 肺から息が出たり入ったりしてドキドキする鼓動と頬に気持ちが集中する。


 傘折の無邪気に喜ぶ姿が見れて、2人で狙い通り景品に弾を当てられた以上の達成感や嬉しさがある。


「あー、喜んでるところ悪いんだけどね? お嬢ちゃんたち」


 まぁそんな私の喜びはすぐさま冷めることになるんだけど。


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