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6-3 栄一、モテるw

 まあその後は当たり障りのない女子会トークが続き、俺はオブザーバーというか話の審判というか、そんな役をこなしてた。女子大生ってこんな感じかあ……と驚きつつも感心といった感じ。


「ちょっと栄一さん」


 先程から烏龍茶からビールにアップグレードしてた美月ちゃんが、向かいから席を移ってきた。俺の隣に。


「な、なんだよ……」


 てか、すっかり栄一で定着してて草。これ下手したら俺の名前もう忘れてるだろ。


「栄一さんは、その女子高生と別れたほうがいいと思います」


 グイグイw なんでいきなり話戻す。それ次回のトークネタになったんじゃないのか。


「おう」

「言う言う」


 女子大生は大喜びだ。


「始まったな、美月の説教タイム」

「この娘、酔うとこれだから」


 そういや酒弱いとか言ってたもんな。酒癖悪い系かよ。


「で、いつ別れるんですか」


 にじり寄ってくる。そんなん知らんがな。


「いつって言われても、……いつだろう」

「あーもう、焦れったい」


 ぐいっと顔を寄せてくる。どえらく社会的距離縮めてきたから、体触れ合ってるじゃん。


「誓って下さい。今日中に別れるって」

「無茶言うなよ」


 今日て。


「無茶じゃないです」

「あーはいはい。俺、トイレな」


 立ち上がった。


「逃さないから」


 ぐいっと腕を抱かれた。いや胸。今日ふたりめかよ。これもう3Pも同然だろ(泣)


「まあまあ」


 陽菜乃ちゃんが手を入れて体を離す。


「栄一……じゃないか木戸さん、逃げて」

「おう」


 トイレに立った。ゆっくり用を足しながら考える。


 ……俺今日、いじられキャラか。まあ女子会のツマミってんだから、こんなもんかもしれんが。まあいじられるのは仕方ない。適当にごまかしつつかわすしかないな。


 席に戻ると、もう美月ちゃんは元の場所に戻ってた。目をつぶってうつらうつらしてるから、酔って寝てるって線だろう。


「すみません木戸さん」


 菜々美ちゃんが頭を下げた。


「いいよ別に。大学の頃から宴会には慣れてるし。あるよな、酔っ払っちゃう奴」

「この娘、普段はおとなしいんですけどね。でもそれでストレスが溜まる分、酔っちゃうとたまーに説教タイム入るんで」

「そうそう。木戸さんが気に入ったみたいだし、心配になったんじゃないすかね」

「気に入った? 俺を?」


 三人がこっくりと頷いた。なんかそんなシーンあったかな……。


 脳内で飲み会動画を高速リプレイしてみる。あーそう言えば「栄一さん、かっこいい」とか言われた覚えはある。ただの社交辞令と思ってたけどなー。酒の席だし。万札扱いだし。


「さて、飲み直しますか」

「おう」


 その後は割と平穏。ひとり寝落ちして数が減ったせいか、俺も結構話に入る感じになって、女子会というより友達飲みの感じにはなったが。一応全員とID交換した。美月ちゃんもな。半分寝てたから、明日覚えてるかは知らん。


「じゃあ今日はごちそうさまでした」


 店を出ると、菜々美ちゃんは頭を下げた。勘定は、約束通り俺が一万。残りは菜々美ちゃんが全部払ってた。後で割るんだろう。


「大丈夫か、美月ちゃんは」

「平気っす」


 菜々美ちゃんが太鼓判を押した。


「でも結構キテるだろ、あれ」


 実際まだ酔ってふらふらしてて、莉緒ちゃんが支えてる。


「大丈夫っしょ。この後ウチに移って二次会なんで」

「そうか。なら……、ほら」


 財布から万札一枚抜いて渡す。


「なんですか、これ」

「タクシー代。あれ電車に乗せるわけいかんだろ」

「マジか。……みんなー」


 札をぴらぴら振っている。


「木戸さんが車代くれたよー」

「おう!」

「さすがは渋沢先生。万札の神だけある」

「そりゃ印刷されてるもんね、肖像」


 栄一呼び捨てから、福沢先生に格上げ。少しは扱い良くなったのか、これ。


「え、栄一さん……」


 ふらつきながら、美月ちゃんが頭を下げる。


「ま、また今度」

「わかったわかった。危ないから早く車拾え」

「約束……したから、デート」

「は?」

「うーんっ……」

「落ちたか……」


 なんかどさくさ紛れにデートの約束したことになってんな。……まあいいか。あの様子だとどうせ明日には忘れてるだろうし。


「ほらよ」


 タクシーを止めてやった。酔ってる美月ちゃんを、なんとかみんなで奥に押し込む。


「さ、触ったでしょ、エッチ」


 もうベロベロじゃん。


「知らんがな」


 たしかに体に触ったのはたしかだが、押し込んだだけだ。特に揉んだってわけじゃない。


「じゃあなー」


 ようやく送り出した。ウインドウが下がると、菜々美ちゃんが顔を出す。


「また声かけますねー」

「ああ」

「栄一。栄一っ」


 遠ざかるタクシー、なんか菜々美ちゃんの背後から栄一コールが巻き起こってて草。もういいよそれで。


「元気な連中だなー」


 あれだよな。菜々美ちゃんが割とアッパー系だから、気の合う友達もあんな感じなんだろうな。美月ちゃんはある意味ストッパー役というか。


「あいつら高校時代、どんなカーストだったんだろな」


 ウェーイ系ってわけじゃないし、陽キャ気味真面目グループとか、そんな感じだろうか。結菜も元気系だけど、底の底に危ういもの抱えてそうだしな。そういうのとは違いそう。屈託がないというか。高校時代の菜々美グループとか、タイムリープしてちょっと見てみたいわ。


「さて……」


 ほっとひと息吐くと、スマホを確認した。まだ九時か……。


 まあ、楽しかったのは確かだわ。結菜とふたりっきりの息詰まるようなモンモン我慢タイムから解放された感がある。西乗寺主任に言われたように、俺も結菜も、もう少し放し飼いになったほうがいいかもな。そのほうがふたりの関係良くなる気がするわ。


「……もうちょっとどっかで飲むか」


 なんというか、セッティングしてもらっての女子会オブザーバーと言えども、非モテの俺にしては珍しく女子と楽しんだ。ふたりほど胸触った……というより向こうから押し付けてきたし。これもう奇跡だろ。


 胸の……じゃないか飲み会の余韻に浸りたいというかさ。


 結菜には飲み会と伝えてある。この間の主任飲み会のときもちゃんとひとりでいろいろ済ませて眠ってたし、今日も大丈夫だろう。


「あっこでいいか。軽くギネスでも……」


 ちょうど、向かいのビル地下がバーのようだ。俺は、暗い階段を下り始めた。


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