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小さくて大きなわがまま  作者: しがない竜
第3章1節 屍を食べる街 上

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第88話 「静かな底の遺跡」

 薄暗くて、過酷な作業、手厳しい監視がいる、この採掘場。その採掘場の坑道奥から女の子の声がする。他の子供の声も混じって聞こえて来る。セロンは、採掘者の中には子供もいるのかと驚愕し、凍り付いていた。行って確かめてみないと気が済まないセロンは、声の響いて来る方へ、布に隠れながら走った。


 先は、整備が殆どされておらず、柱も無ければ、灯りも乏しいところだった。下に道が掘られていて、荒い坂道を転げまわらないように下りなければいけなかった。その先に、温かい灯りが見え、子供達が五人、採掘の作業をしているのが見える。セロンは息を潜めて、様子を窺った。


「ここから鉱石やマナリスを運び出すなんて、骨が折れるぜ。鉱車がない上に坂道なんだからな」


 ゴツゴツした岩の地面にマナリスや鉱石が沢山並べられている。その前に五人の子供達が円になって話し合っていた。


「この場所、沢山掘れるんだけど、運び出すのが大変すぎるよ」


 どんぐりみたいな頭の男の子が言った。


「外れは外れだろ? ここの鉱脈の割り当てで高順位だった班なんてないんだから」


 オールバックのくせ毛男の子が口を挟んだ。


「いや、棘肩ブラザーズの班はこの場所で一位取っていたぞ」


 ツンツン頭の少年が反論した。


「あいつら、どうせ、いつもの不正を働いたんだろ? 街の連中とも繋がってるみたいだし。マナリスの横流しなんて簡単だろ」


「どうでもいいけど、ノルマ分は持っていかないと……。ゼロポイントなんて怖い……」


 もっさり傘を被った頭の女の子が弱弱しく答えた。


「は~あ、少し前は順調だったのに、最近の割り当て、酷すぎないか? きっとマールがもうすぐ到達するから、わざと意地悪されてるんじゃないのか?」


 オールバックくせ毛男の子がため息をついた。


「おい! それはマールが居るから、不利だって言いたいのか!?」


 ツンツン頭の少年が嚙みついた。


「いや……、そういうわけじゃないけど。俺はただ……」


「私が監視に話をつけて、運び出しを免除してもらいに行くよ」


 ブロンド頭の黒く煤けた女の子が切り出した。


「けど、それ、お前のポイントを払わないといけないだろ」


 ツンツン頭の男の子が反対している。


(みんな)のポイントが優先だよ。いい順位になって、皆がポイントを積み重ねられるようにしないと」


「お前が割を食うだけじゃないか」


「けど、皆はそっちの方がいいし、納得してるでしょ?」


 ブロンドの女の子は、子供達みんなを見回している。他の子供達は皆、(うつむ)いて無言になっていた。


「みんなも賛成しているんだし、行ってくるよ」


「待ってくれ、それなら俺が代わりに……」


 ツンツン頭の男の子が反論しようとした。


「私がそうしたいの。みんなと街に上がりたいし、私、皆よりもポイント多いでしょ?」


「……」


 ツンツン頭の男の子は言葉に詰まっていた。ブロンド髪の女の子は、みんなから離れて、セロンの方に、坂道を登ってくる。セロンは、踏まれないように端に寄った。それから、女の子の様子が気になるので、後をつけて行った。


 少し坑道を戻った先に、大した探さなくても監視を見つけられた。細長い角のような道具を口に運び、飲んでは、優雅に座ってくつろいでいた。ブロンドの女の子が、その監視に慎重な足取りで話しかける。


「あの、すみません。相談したいことがあるんですが……」


 女の子は、恐る恐る声をかけていた。


「あ? お前、こんな所で何をさぼっている?」


 監視の女の人は、一切、友好的な態度ではない。


「坑道の奥の鉱脈が割り与えられているんですが、運び出すのが間に合わなくて」


「はぁ~ん、ここの奥か。不便なことだなぁ~、はは」


 監視の女の人は鼻で笑った。


「それで、あの~、私のポイントを使って、運び出しの免除をしてもらえないですか?」


 ブロンドの女の子は、手を合わせて願うような素振りをしている。


「はぁ? ただでさえ、未成年の特権があるっていうのに、さらに配慮しろと?」


 監視の女は、女の子に顔を近づけて、威圧しているみたいだ。女の子は動じていない。


「お願いします! 私のポイントは減らされてもいいので、班のみんなを助けたいんです」


 女の子は深々と頭を下げている。


「お前、もうすぐ街に行けるポイントだってのに、馬鹿なのか? ここでお人好しになったところで、利用されるのが落ちだ」


「私は構わないんです」


 監視の女は嘗め回すように女の子の様子を確認している。手に持っている容器を揺らして、ちゃぽちゃぽと鳴らし、グイっとまた中の液体を飲んだ。


「はっ、はっ、はっ、健気で滑稽(こっけい)な奴だな。運搬の免除なんてしてやなねぇよ」


「そこを何とかお願いします」


 女の子は、地面に座って頭を下げた。


「何だよ。しつこい奴め」


 女の子は、地面にくっつけるまで、頭を下げた。セロンはそこまでする理由が分からなかった。


「うぜぇな。ネイザーグ様の許可が無いと特別な処置なんて出来ねぇんだよ」


 監視の女は、手に持っている容器を女の子の頭に傾けて、謎の液体を垂らした。セロンは、ムカッとして飛び出そうとした。しかし、スクミ―に止められる。


「ダメでしゅ。問題が大きくなるでしゅよ」


 声にならない声を発して、両手を広げて、前に立ちはだかっている。女の子は、怒る様子を見せてはいない。


「そこに誰かいるのか!?」


 監視が暗がりに隠れているセロン達の方を向いた。セロンが動いて、スクミ―が掠れたような声を発したのを聞きとっていた。監視は、不審を募らせている。セロンとスクミ―は息を潜める。監視が近くまで歩いてきて、辺りを窺い始めた。距離にして、半歩くらい。


 監視が目線を下に落として、セロン達が隠れている布を見つけた。セロンは、鼓動が早くなり、尻尾が震える。


「……なんだ、ただの雑巾か」


 今度はスクミ―が歯向かおうとした。布から出ようとしたスクミ―の体をセロンが掴み、それを阻止する。監視は女の子の元まで戻って行った。


「ミーの傑作を雑巾っていうなんて、許せないでしゅ」


 スクミ―はセロンに口を塞がれてもごもごと文句を言った。監視が女の子に向かって思い出したかのように、喜々と語り掛ける。


「あ~、そう言えば一つだけ思い出したわ。就寝の時間は、勝手にどう使おうが、自由になってるんだった。その時間で運び出すなら認めてやってもいいぞ」


「本当ですか?」


 女の子は嬉しそうに訊き返していた。


「ああ、本当さ。ただし、お前ひとりでやるんだな。途中で誰かに見られたり、噂が広まったリしたら、お前の持っているポイントは全て剥奪だぞ。その条件を飲むと言うなら、運搬は免除してやる」


 つまらない芸を見るような目で、監視は女の子を(さげす)んだ。


「ありがとうございます。それで構いません」


 女の子は深く感謝していた。監視は満足した表情で、その姿を眺め、明るい方の道へ帰って行った。セロンは、大丈夫なのだろうか? と心配になってきた。女の子一人で寝ずに運び出すのも骨が折れそうだし、第一、あの監視は本当に言ったことを守ってくれるのだろうかと疑問に思った。


 女の子は、監視が見えなくなるまで頭を下げていて、それから、スッと立ち上がり、仲間の子供達が居る方へ走って行った。セロンは後を追う。



 ブロンドの髪の女の子が仲間の元に戻って来たとき、子供達は一生懸命、採掘の作業を進めていた。ここの鉱脈は、言っていた通り、鉱石やマナリスが豊富らしく、少し離れていた短時間に、また掘り出した量が増えていた。


 ツンツン頭の男の子が、ブロンドの髪の女の子が帰って来たのに気がつく。


「マール! お帰り! その~、えっと……」


 ツンツン頭の男の子が言いづらそうにしている。


「大丈夫! 免除してもらったから」


 マールと呼ばれたブロンドの髪の女の子が、笑みを浮かべて答えた。さっきまでの監視とのやり取りが嘘のようである。


「そうか……」


「流石、マール! 頼りになる!」


 オールバックくせ毛の男の子が労った。


「いつもごめんね。私、臆病だから嫌な方に考えちゃうんだ」


 もっさり傘を被った頭の女の子がボソボソと言った。


「マールは、僕達のリーダーだよ。ありがとう」


 どんぐり頭の男の子が呟いた。


「みんな、私に気を使わなくていいから。ほら、掘り進めるよ!」


 マールは同じ仲間の子供達に笑顔を振りまいている。そのおかげか、仲間達の表情は、明るく、作業が(はかど)っていた。セロンは、気がかりになりつつも、部外者が介入したら、ややこしいことになると懸念したので、見守っているだけになった。


 採掘作業は、ずっと続いている。オールバックくせ毛の男の子が、つるはしで岩壁を攻撃しながら、話を始めた。


「ここで、こんなザクザク掘れるなら、もっと下の方に行けば、さらに沢山の高価な鉱石が見つかるんじゃないか?」


「いや、深さはそれほど重要じゃないと思うよ。だって、ここより下の層で掘っている班の結果がそうでもなかったのを、見たことあるからね。それに、ある程度下に行ったら、滅茶苦茶硬い層が出て来て、その先はずっと、その層が続いてるんだよ」


 どんぐり頭の男の子が流暢に説明した。


「あ~、それ知ってる。先人達が、長い時間をかけてやっと掘り進めて行った層だろ?」


 ツンツン頭の男の子が、話に乗った。


「そうそう。黒っぽい岩の層なんだけど、苦労して掘った割には何もなかったらしいんだよね」


「そうなのか?」


「遺跡があったよ」


 マールと呼ばれる女の子が、突然口を挟んだ。


「遺跡!?」


 仲間の子供達が一斉に驚いた反応をした。どうやら、知らないようだ。


「私、一度見に行ってみたことあるんだ。つい出来心だったんだけど。そしたら、遺跡があったよ。かなり古い遺跡だと思うけど、昔、地底で人が暮らしていたんじゃないかな」


 男の子達が興味津々だった。思わず、作業の手が止まっている。セロンも好奇心がそそられて、聞き入っていた。


「お宝とか一杯隠されてるんじゃないか?」


 オールバックの男の子がウキウキで聞いた。


「もしあったとしても、もうみんな回収されてると思うよ。だって、ずっと前に既に発見されていたらしいから」


 マールと呼ばれた女の子は、冷静に答えた。


「ちぇっ……」


 オールバックくせ毛の男の子は、ガッカリしていた。皆も同じ様子である。


「さあ、お宝はないかもしれないけど、頑張れば褒美が貰えるんだから、皆、頑張るよ」


 マールは仲間に明るく鼓舞していた。セロンは、遺跡が気になって頭から離れなかった。


「セロンちゃん、遺跡、見に行く気でしゅ?」


 スクミ―が小声で聞いてきた。セロンは、否定するまでもなく、頷いた。


「ミーは、金が沢山欲しいでしゅから、ここで二手にわかれませんか?」


「許してくれるの?」


 セロンがスクミ―の提案を意外に思い、訊き返した。


「遺跡に行くくらいなら危険は無いと思いましゅし、今のセロンちゃんなら前よりもたくましいでしゅから、問題無いと思いましゅよ」


「けど、スクミ―がいないと隠れられないよ」


「それなら手段がありましゅよ」


 スクミ―は、そう言うと得意そうな顔をして、ウエストポーチから針と糸と布、平べったいものを取り出した。ポケットの大きさからは、考えられない代物である。それから、今隠れている地面色の布に桃色の当て布を縫い付けるように針を通し始めた。セロンが見ている少しの間に、縫い取りが完了し、平べったいものが、地面色の布に、縫い付けられたのである。セロンは、スクミ―が何をしたいのか分からなかった。


「ミーの一部を使って、この布を即席の魔法アイテムにしたでしゅ」


「魔法アイテム!」


 セロンは静かに驚いていた。


「そうでしゅ。電池が切れたら使い物にならないでしゅし、記憶認識で、単調な空間拡張魔法しか、かけられないでしゅが、布に隠れるだけなら、十分でしゅよ」


「スクミ―がいなくても、この布に隠れられるっていうこと?」


「今の空間範囲から変えられないでしゅが、ミーがいなくてもずっとこの状態の空間魔法が展開され続けましゅよ」


 どや顔でスクミ―が答えた。


「すごいや」


 セロンは感嘆する。スクミ―はエッヘンと誇らしげな表情をした後、付け加えた。


「ただし、セロンちゃんが布を被って、空間を認識しなかったら魔法は発動しないでしゅからね。よく知っておくのでしゅよ」


 セロンは、説明を受けた後、スクミ―から布を借りて、採掘場の下の方を目指して進み始めた。スクミ―は、ウハウハな雰囲気で採掘場の中を歩き回っていた。


 採掘場の下の方へ行くには、崖の通路に出なければならず、通路には、多くの採掘者達や、監視の者が移動していた。セロンは、作業している人々の合間を縫って、下へ続く道を下って行った。


下へ下へと下って行くと、子供達が言っていたように暗い色の層が見えて来た。層の境目は、上の層と混ざったような色をしているけど、すぐに暗い色の層になった。脚で踏みしめてみても確かに、今まで歩いていた地面と違って硬い感触がある。道も硬いせいか、大雑把な造りになっていて、崖の壁を掘った坑道は、一切なかった。


辺りが白く煙っぽくなっている。匂いも焦げ臭かった。採掘者も監視も誰も見当たらない。セロンは、一本道になっている坂道を突き進んで行った。街を取り囲む崖沿いを周るように下っていると分かる。次第に、白い煙も濃くなっていき、辺りの視界が悪くなった。セロンは、何処まで進んだら、遺跡があるんだろう、と内心、少し心細さが強くなってきた。採掘場とは違って、異質な雰囲気。遠くで機械が動く、金属音以外は、殆ど何も聞こえて来ない。二度とここから戻れなくなるんじゃないかと不安になってくる。


セロンの歩みは徐々に遅くなり、引き返したくなってきた頃、壁際に穴が開いているのを見つける。大人の人が通るには、屈まなければいけない程に狭く、中に灯りは無かった。今まで穴なんて無かったのに、いきなり現れて、セロンは、戸惑いと好奇心が揺れ動いていた。下の方へそのまま進む道も続いていて、広い崖下の空間には、黒っぽい影が見えている。黒い影は、道の終わりを示していて、きっと、目指している目的地だと察しがつく。両方とも見てみたいと思ったセロンは、先に穴の方へ入ってみることにした。


ランタンは部屋に忘れて来たので、灯りは無く、入口から入ってくる微かな光を当てにしなければならない。セロンは、もし何も見えなくなってきたら引き返そうと、警戒しながら中を進んでいく。


しばらくすると大きな空間に出た。暗くて殆ど何も見えないけど、多くの人が入れるくらいの大きな空洞である。なんの気配もないし、目ぼしい物は何も見当たらない。けれど、セロンは、何だか悲しみと寂しさが込み上げてくるのを感じた。


「どうしてだろう……」


 セロンは声を漏らした。ここには長居したくないと思い、セロンは、来た道をゆっくりと引き返した。白く見える狭い道の光が、セロンを安心させて、気分が和らいでいく。洞窟から出る頃には、元の気分に戻っていた。


 気を取り直して、セロンは、崖沿いの道を下って行った。見立て通り、崖の底にはすぐに到着し、話で聞いた遺跡が広がっていた。


「不思議……」


 すっかり、被っていた布をとっていたセロンは、遺跡の姿に思慮深さを感じていた。こんな地下深くにどうしてこんな遺跡があるんだろうと、首を傾げていた。


 遺跡は確かに、遥か昔に人が暮らしていたような痕跡があった。多くの遺跡は、半分崩壊していて、瓦礫が散らばっている。それでも、小さな街だと認識できるくらいに、形が残っている。黒い岩の層を削って造られたみたいだった。


 セロンは、慎重な足取りで遺跡の中に入った。ここも人気は無い。道がしっかりと真っすぐ整えられていて、建物と建物が区切られている。立派な街とは言えないけど、快適に暮らそうとする工夫が施されている。一定間隔で壊れた柱が立っている様子から、当時は天井があったのだと分かった。


セロンは、建物の一つに入ってみた。上の部分が崩れて無かった。全て黒い岩を削っただけのものだけど、椅子やテーブル、棚だと分かる家具が大雑把に置かれている。岩で出来た皿やコップ、壺まで散乱していて、つい最近、盗みに入られた家のように錯覚してしまいそうだった。


 セロンは、区切られた部屋の奥の入り口に向かった。ドアは無い。沢山の収納棚が置かれていた。けれど中は全て空っぽ。油断して眺め回していたセロンは、棚の隅の空きスペースを見て、飛び上がった。


 人の(むくろ)がうずくまっていた。まだ、崩れていない人の形をした骸だった。しばらく固まって、じっと骸を見つめていたセロンは、我に返り、辺りを見回す。人が住んでいたのは分かっていたけど、骸があるだけで、さらに生々しく感じられた。


一体、この遺跡では何があったんだろう? この遺跡に住んでいた人々は、生活をしているまま死んでしまったのだろうか? 地上にもでずに? セロンは、物々しい過去がありそうな気がして、気分は良くなかった。


それでも、興味の方が勝って、セロンは一通り、遺跡をグルっと巡った。他にも同じような建物や骸があった。沢山の人が入れそうな部屋があったり、倉庫らしきものもあった。採掘場への坂の近くに、大きめの洞窟が開いていて、入ってみたけど、奥に進むほど、どんどん暗くなっていくので、途中で引き返した。遺跡は、崖の底一帯にある訳ではなかった。地上にある街を囲うようにある崖だけれど、遺跡は、その崖底の一部のみで、殆どは、ただの何もない平地が広がっているだけだった。


散策し終えて、一息ついたセロンは、上を見上げた。白い煙で遠くまでは見通せない。中心に位置する街の下も暗い岩の壁だった。こんなに深く街の周りを掘る理由は、どこにあるんだろうと、ふと思い立ったが、答えは見つけられなかった。


遺跡に戻ったセロンは、中心付近にある広場に座り込んだ。一番気になっていて、一番興味深い場所だった。広場は、遺跡の道よりも一段高く作られていて、その中央には、竜と思わしき、亡骸があった。周りには複数体の人の骸が横たわっている。この遺跡では、竜と人が一緒に暮らしていたのだろうか? 人と竜が仲良しで、お互いに助け合って生活していたのだろうか? もしそうだったら嬉しいな、とセロンは、ぼんやりと思っていた。


しばらくセロンは、ボーっとしていた。街の方から微かにガラガラと金属の音がする。誰かが遠くの方で叫んでいるような気がした。マールという女の子が言っていた通り、遺跡にはお宝は何もなかった。妙に暑いし、立ち込める白い煙が、出口の無い世界を造り出していると不気味に感じられた。けれど、この場所は、セロンにとっては、何故か、居心地が良かった。もしかしたら、臭いが上の街よりもマシだったからというのは、あるかもしれない。



遺跡散策に満足したセロンは、再び来た道を戻り、白いモヤモヤが薄くなる高さの坂道で、壁にもたれて座り込んだ。そこまで来ると暑さが和らぐからだ。セロンは、買った水を飲み、目を瞑ってひと眠りしようと思った。夜が弱いセロンは、夜でも起きていられるように今のうちに寝ておこうと考えていた。セロンには気がかりがあった。


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