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小さくて大きなわがまま  作者: しがない竜
第2章2節 施しの植木鉢 下

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第78話 「爆破犯」

 セロンは、呆気に取られて、あっくんの顔を見上げている。険しい顔をしたあっくんが、周りを見渡し、近くに落ちている瓦礫を拾った。片手に掴める大きさである。


「見てろよ」


 あっくんは、その掴んだ瓦礫を降り注ぐ光の中に放り投げた。瓦礫は、光に触れた瞬間に跡形も無く、空気に溶け込むように消えてしまった。セロンは、目を剥く。


「消えた! 瓦礫が無くなっちゃったよ!」


「あの光は、触れたものを何でも分解してしまうんだよ。石でも、土でも、どんなに硬い金属でも、生物の体でも分解してしまうんだ。だから、触れただけでお陀仏になる。分かったな?」


 言い聞かせるような語気の強さを感じる。


「……分かった」


 思い知ったセロンは素直に頷いた。


「この光は俺が何とか処理するから、セロンは何処かに離れてろ。あまり変な所には行くなよ。もう、貴族の反抗も鎮圧されてるから、特にこの街で危険な所は少ないが、街の外壁も壊れたみたいだからな」


 あっくんが諭すようにセロンに向かって告げた。


「この光、どうにかできるの?」


「消えたものは元通りにならないが、光は消せる」


 そう答えるとあっくんは、宿屋から持って来たであろう、荷物を開けて、中を探り始めた。セロンは、何処まで続いているのだろうと、光を見上げてみたが、本当に天高く、何処までも続いているように見えた。セロンは、今は静かになっている、上町(かみまち)の方へ視線を向けた。確かに、もう争いの騒音は聞こえて来ない。ん? 何か、屋根にいる?


 セロンは目を凝らした。上町の方の建物の上に黒っぽい何かがこちらを窺っていた。細長く黒っぽいアンテナ? みたいなものの傍にいる。相手もセロンが見ているのに気づいたのか、すぐに立ち去った。もしかして、光を降ろした犯人? セロンは追いかけようか迷った。


セロンが上町の方へ進みかけたところ、前方からスクミ―がこちらに向かって駆けてくる。人目につかないように隅を通っているみたいだが、桃色なので、無意味なほど目立つ。


 セロンの目の前で止まるとふうっと一息をついて、踏ん反り返るように腕を組み、どこか後ろめたそうな表情で話し始めた。


「なんて言えばいいか……、ミーはやれるだけのことはやったでしゅ。正直、危険な目にも遭いましたでしゅわ。だから、ミーは悪くないでしゅからね」


「何があったの?」


 スクミ―は、見て来た内容をセロンに伝えた。セロンは、話の内容が予想とは異なり、驚愕させられた。今日は、沢山驚いていて、さらに驚かされるとは思ってもみなかった。


「トウシちゃんにも伝えた方がいいかしら? 部隊も把握できてないみたいでしゅし……」


 セロンは、今回の件で、スクミ―に頼んだことをあっくんに伝えてなくて、嘘をついているのを思い出した。いざこざは嫌なので、知られたくなかった。それに、今、あっくんは、光を消す作業に忙しいみたいだし、邪魔しちゃいけないと身勝手に考えた。


「いや、後ででもいいよ。それより、僕はその場所を見てみたいし、確認したいことがあるんだ」


 セロンはわりと真剣だった。気がついてしまったことがあった。


「けど……大丈夫でしゅかね」


 セロンは心配するスクミ―を丸め込み、上町に向かった。スクミ―は、「ミーは責任を取らないでしゅからね」と言いながら、セロンの巾着袋の中に入り込み、ブツブツ言い始めた。セロンはスクミ―の扱いに慣れて来た気がした。



 凄惨な現場を見たセロンは、息を飲んだ。どれだけ、凄まじい爆発が起こったのかと、思い知らされた。黒い豪奢(ごうしゃ)な塔が倒壊し、近くの建物を巻き込んでいる。セロンは、ふとっ、瓦礫の中にある物を見つけた。何でこんな所にあるんだろうと思った。セロンはその破片を掴む。痛っ、思った以上に尖ってたみたいだ。


 今度は、慎重につまみ上げた。間違いない。目に見えない物質。これは、物質Pだ。


 だけど、どうしてこんな場所に落ちてるんだろう? セロンは訝しんだ。そして、よくよく意識を傾けてみると、至る所に破片が散らばっているのを感じ取れた。まさかと、勘付くものがあった。それでも、どうして物質Pが使われたのか腑に落ちない部分もあった。しかし、疑問は後回しにしておいた。優先すべきものがある。


 上町の広場には、沢山の仮設のテントが張られている。治安維持部隊が貴族達を鎮圧した後、けが人を手当てする為に設けられたものだ。貴族達は意気消沈。部隊に逆らわず、ぺこぺこと頭を下げている者が殆どだった。セロンはスクミ―の情報通り、その深緑のテントの中に入って、人探しをした。


 テントの中は、多くのけが人が治療を受けていた。多くは『銀の星バッチ』を付けているから貴族だと思う。痛みに慣れてないのか(わめ)く者や、怒鳴り散らかす者もいた。お手上げのポーズで凝り固まった男性が吊るされている。セロンが反対側の出口の方に目を向けると、一人の人が丁度出ていく瞬間だった。見た目で直ぐに誰だかピンッと来て、後を追った。


 その人は、足を怪我しているみたいだったが、それを言い訳にしないようなスタスタとした歩みだった。右手にファーのついた緑の手袋をつけて、左手には丸い白銀の物体を持っている。商業用の建物の路地に入って行き、何処か目的地を目指していた。はっきりとした歩調だった。セロンは、少しだけ様子を見てみた。


 さらに二つ角を曲がり、開けた道に出ようと進んでいた。セロンは、やっと彼女の目的が分かった。路地裏から出る前に思い切って声をかける。


「アルマさん、また貴族を殺すの?」


 アルマはすっと足を止めた。その先には邸宅があり、微かに貴族が談合しているのが見える。下品な高笑いを上げていた。アルマは、ゆっくりとセロンの方へ振り向く。


「貴方は私を詮索していたの? どうしてここにいて、どうして私を止めるわけ?」


 眉間(みけん)(しわ)を寄せて不快そうな表情をしていた。


「スクミ―にお願いして、後をつけてもらっていたんだよ。本当は、アルマさんが『街の人が消える問題』について知っていそうだったからお願いしたんだけど、全く別の大きな事件に関わっていて、びっくりしたよ。まさか、アルマさんが建物を爆発させるなんて……」


「私が良からぬことをやってると思うから、止めようとするわけ?」


 アルマの言葉は静かだが、怒りが滲んでいた。


「う~ん……わかんないよ。ただ、頭がモヤモヤするからはっきりさせたいんだ。ロウさんのことなんだけどね……」


 セロンが切り出すとアルマはピクリと反応した。


「もしかしてだけど、爆破するのって元から決まっていたの? ロウさんとあらかじめ計画していたことなの?」


 アルマが目を細め、探るような目つきになった。


「……だったら何なの?」


「計画していたなら、多分、知ってたんだろうけど……ロウさんが祭壇で身投げする前に爆発があったんだ。それから笑みを浮かべながら落ちて行った。だから、ロウさんが身投げするのは……」


「ロウに聞いたわ。貴方は、世界一優しい竜を目指しているみたいね」


 突然、アルマがセロンの言葉を遮ってきた。


「……うん、そうだよ」


「それって誰にとって優しいことなの?」


「え?」


 セロンは何を聞かれているのか分からなかった。


「貴方の優しさは誰の為のものなの? 誰が得をして、誰が喜ぶわけ?」


「え~と、皆の為に……」


「薄っぺらい妄想だこと」


 アルマは冷たく言い放った。セロンは胸を針で突かれるような痛みを感じた。


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