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最終章

第57章

 カタクリ国の新しい王妃は、レノミンとは年が近かったが、10代で皇子達を出産していて、その後、生まれたばかりの王女を、亡くしていたので、本当に久しぶりの出産となる。


 不安は大きく、それは、周りで、お世話する人達も同じだった。


 特に、国王は細心の注意をしていたが、それでも、気分が落ち込んでいった。


 「王妃は、お腹が大きくなるにしたがって痩せていき、食欲もなく、周りが、どんなに進めても、部屋から出て来ません。僕には、彼女の気持ちがよくわからない・・・」


 「王妃が、こちらに来ることは可能ですか?」


 ビル国王は首を振る。


 「こちらに来ていただいたら、気分転換にもなってよろしいかと思いして・・・国王は、今、激務でいらして、王妃とはお話とかなさっていますか?」


 「ええ、何とか時間を作って、昼食を共にするように心がけています」

 「その時は、王妃は召し上がりますか?」

 「はい、その時は少し食べてくれます」


 「私が、今は、まだそちらに出向くことは出来ないのですが、そうだ、2階の寝室にちょっといらして下さいますか?」


 そこで、レノミンは2階の寝室にある4人用のこたつをビル国王に紹介する。


 「こちらはこたつと言って、1階のサロンにある大きな物の小型版です。排気口の工事がある為、このままでは、国王に渡せませんが、キース先王に頼んで、カタクリ国の王宮に、備え付けてもらいましょう」


 「??????」


 「---ふふふ・・、今、カスター先王はこのこたつに夢中です。コチャ領は、一番、寒い季節ですが、特に、カタクリ国はここよりも北にあり、その為に、気分が落ち込みます」


 「どうぞ、その椅子に座って下さい」

 「ーーー温かい。どうして・・・」


 「コークスを使っています。この椅子は一脚ですが、1階のこぼれ日のサロンには、とっても長いソファがあり、温かい空間でのんびりできます。大きい物は、作るのに時間がかかってしまいますので、とりあえずこちらをお持ち下さい」


 「明日、キース商会から工事の職人も派遣します。こたつに入って、のんびり、王妃とお食事をして下さい。王妃の気持ちに寄り添えるのは国王しかいません」


 それから、みんながくつろいでいるサロンにビル国王は足を運ぶ。その光景を見て、立ちすくむ・・

 「天国か??」


 いつもの光景だが、それにしても、隣国の国王の訪問でも、のんびりし過ぎているとレノミンさえ思う。


 カスター国王は、本を膝に乗せたまま目を瞑りうたた寝中で、グレースはその隣で本を読んでいる様子でまた居眠り、皇后は、編み物をしながらお茶を召し上がっている。そして、人差し指を立てて、

 「シー」と合図する。


 皇后は、ポンポンとソファのを叩き、隣に座るように言う。


 国王は隣に座り、そのまま、小声で皇后と話をして、お茶を飲み、居眠りをした。


 夜の晩餐もそのままサロンで行い、レノミンは湖で捕れた魚をふんだんに使い、鍋をご馳走した。

 その時にはグレースも元気が出て、学校で披露する予定のダンスを踊って、皆に沢山の拍手をもらい、こぼれ日の部屋は、笑顔が溢れていた。

 (日本の家庭・・・)


 次の朝、本当に疲れが癒えたビル国王は、レノミンのこたつと、王都から、急遽、駆け付けたキースと職人を連れて、自国に帰っていった。


 数日後、

 「レノミン、王妃はあれからこたつに夢中で、精神的に落ち着いて来た。食欲も出てきて、何よりも、皇子達が、常に、こたつで彼女の相手をしてくれている。助かるよ、僕が常にそばに居ることが出来ないから、皇子に食事を共にするように言って、その効果も出て来た。---しかし、こたつは魔物だ」


 「ええ、魔物です。もしも、出産に不安があれば、皇后はこの別荘での出産を望んでいますが・・・」

 「ああ・・・その通り、しかし、私は、やはりカタクリ国で出産して欲しいと思っている。しかし、ーーー何かあった時には、レノミンの別荘に連れて行きたいと思っています。どうか、よろしくお願いします」

 「ええ、わかりました」


 その寒い冬が開けて、春がやって来た頃、王妃は皇子を出産した。


 カスター夫妻には久しぶりの赤ちゃんで、お二人はとてもよろこんだ。そして、カスター先王達も国に戻り、小さい皇子を舐める様に可愛がった。


 上の二人の皇子は少し嫉妬したが、王妃の出産で、自分たちもこんなに、大切にされていたことを、再認識したのか、本当に、いい王室家族となった。安泰だ。


 その頃には、グルガシ国でも王妃の妊娠が発表されて、お祝いムードが最高潮になっていた。


 コロネ先王は、カタクリ国に皇子が誕生したことを敏感に反応して、毎日のように、我が国にも皇子の誕生をと天に祈っていた。



 夏になり、7月7日、いつも通り、沢山の花火がコチャ領で上がり、長い一日が始まった。


 今日、この佳き日、キース先王とレノミンはコチャ領の屋敷で結婚式を挙げた。



 この世界には珍しい庭園での結婚式。レノミンのウエディングドレスも現代風でキース先王もタキシードで臨んだ。


 この結婚式を挙げるにあたっては二人で少し遊んでみた。


 もしも、現代で結婚式を挙げたいなら、こんな風に・・自分たち二人の結婚式だったので、自分の手で一から楽しみながら用意して行った。


 ウエディングケーキにもこだわり、花もふんだんにテーブルに添えた。先王は新しく滝のような噴水を設置して、涼にも気をつかって、芝生も、眩しいくらいに緑色、写真があれば一番映えるのはどこかな?とか、本当に楽しみながらの準備だった。


 教会から神父様にも来てもらい、カスター先王に付き添われ、静かに一歩づつレノミンが歩く、神父様には恒例のお言葉を頂き、ベールを上げて誓いのキスをした。


 その瞬間、もう一度、花火とハトが舞い、二人を祝福する紙吹雪とライスシャワー歓声が広い庭園に舞い上がった。

 「お父様、お母様、おめでとうございます。心がこもった結婚式で、周りの人々はため息をついてお二人を見ていました」


 「本当に綺麗いです。お母様、私も結婚する時は、このお庭でしたいです。7月7日に・・」

エミリオとグレースは二人でお祝いを述べた。


 「おいおい、グレースはまだまだ先だよ。ずっと先だ!! 」

 「ふふふふふ・・」


 「ありがとう。エミリオとグレースもお誕生日おめでとう。あなた達が生まれてくれて、私たちはこんなに幸せです。本当にありがとう」


 「コチャ領の人たちも、どんどんお祝いに駆け付けているよ。ハナ国からは、変わった車が来たね」


 「ハナ国からは今回、オープンカーが届けられて、助手席には空き缶があった。

 (マルク医師・・)


 「ええ、ハナ国の宰相にも素敵な男の子が誕生して、あちらも今日は、大きなお祝い催している特別な日よ」


 「でも、カスター先王は、お母様をお父様に手渡す時、本当にイヤイヤだったね」

 「ええ、私も、もしかして渡さないのかと思いました」


 キース先王は

 「僕も焦ったけど、ぼくなら、きっとグレースもアリスも渡さないな・・・・」

 「ご自分はこんなきれいなお母様をお嫁に貰っていて・・・」


 「エミリオ、自分の娘は特別だ。こんな試練が2回も自分には訪れる・・・」

 「お父様、先のことより、今日のこの日を3倍でお祝いしましょう」


 その時、ダリアがアリスを連れて来た。領民に、アリスを紹介するのは今回が初めてで、周りの歓声は


 アリスを歓迎する拍手に代わっていった。

 「かわいい・・・すごーい、こんなきれいな赤ちゃんを初めて見た。グレース様そっくりだ」と、言う声の中、


 キース先王は自慢げにアリスを抱き、隣には美しい妻、そして、誰もが見惚れる国王と領主が両親に寄り添い、素晴らしい結婚式となり、それから5人は今回、記念に作られた希望の鐘を、世界に向けて鳴らした。



 あの素晴らしい結婚式から数年後・・・・

 7月7日、領主の屋敷の庭園で、キース先王と共に、レッドカーペットをゆっくりと歩くグレース、この佳き日、涙にくれながらキース先王は、グレースと共にゆっくり歩く・・・・


 「お父様、もう少し、早く歩いて、ドレスを踏みそうよ・・・・」

 「---祭壇に行きたくない・・・・」

 「お父様、最後は許して下さったでしょ!! 必ず、幸せになりますから、お願い、お願いします」


 「グレース・・・・本当に・・・?」

 「はい、本当に幸せになります。お母様とお父様のように・・・」


 「う~~ん、・・・・お父様、私の結婚より、きっと、アリスの時の方が大変よ。だから、その時は、必ず、お父様の味方になりますから、お父様、お願いだから歩いて、私を祭壇に連れて、行って!!! 」


※この小説を読んでくださった すべての読者さんに感謝します。ありがとうごさいました。これから誤字等の点検をしますが、内容の変更はない予定です。


ーーーグレースは、いったい誰と結婚するのか?


 

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