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アリス誕生

第56章

 即位式の後、4カ国の皇族たちは、レノミンの別荘で静養して、それぞれの国に帰っていった。

 カタクリ国のカスター先王夫妻を除いて・・・・。


 キース先王は、地方の政務を一応担当する仕事があり、コロネ先王は心配性でキュル国王のそばに居たい、シン国王はほとんどの政務は、宰相が行っているが、まだ、現役の国王である。


 しかし、カスター先王は本当に隠居の先王で、これからの余生の事だけを考えればいいのだ。


 コチャ領の屋敷を気に入り、使用人も、ほとんど馴染みの使用人を連れて来ていて、グレースにはいつでも会える。こんなにいい暇つぶしはないと言っても過言ではない。


 そして、レノミンの出産、そして、何より、川のそばの新豪邸が気がかりだった。


 現在、キース先王は取り掛かっているこたつを、レノミンの出産前に作りたいと頑張っていた。


 サンシン国は布と綿は豊富にある。コチャ領の冬は東京と同じくらいで、たまに雪が降る程度の気候だが、出産までは暖かく過ごして欲しいとキースは思っていた。


 最終的にマルク医師に相談して、机式のこたつにした。


 椅子仕様の温かいこたつを制作した。それも、10人位が入れる大きなこたつと、二人の寝室には4人用のこたつ。


 大きなこたつの方には、長いソファを併設してゆったりしていた。グレースが学校から戻ってくると、手を洗い、急いでこたつのあるサロンにやって来る。


 「ただいま、おじい様、外は寒かった。こたつ、こたつ・・・」

 「お帰り、さあ、こっちに入って、温まりなさい。今日の学校はどうだった?」

 と、まるで、日本の日常が異世界で展開されているとレノミンは思い、それを幸せだとも感じている。


 こたつはコークスを利用したもので、床暖房にもなっていて、その部屋は本当に暖かくて、使用人たちも好んでこの部屋にお茶なとを運んでくる。


 こたつの魔法に別荘の人がかかっている状態になっていた。

 「キースは私の屋敷にもこのようなこたつを設置してくれるのか?」

 「もちろんですよ、今では木工の職人を沢山雇って商会まで作ったのですから、大きな仕事は有難いと思いますよ」


 「しかし・・このこたつと言う物は・・・人間を駄目にするな・・・・」

 「ええ・・・魔物です」

 こたつのせいだと言って、カスター先王と皇后は結局、レノミンの出産を一緒にこの別荘で迎えた。


 出産予定日より2週間はやく、お印がきた。

 トイレから出て来たレノミンはミンクに告げた。


 それからの別荘は大忙しになり、カスター先王、皇后はとっても心配したが、夜になり、外が霧に覆われて、王都から駆け付けたキース国王は、周りの反対にあいながらも、一緒にお産に立ち会った。

 しかし、キース先王の顔を見て安心したのか、レノミンはそのまま眠りについてしまった。


 それは深い眠りと言ってもいいだろう・・・


 ミンクとダリアはそんなに心配はないとキースに告げたが、キースはレノミンが前の世界に帰ってしまうような不安に陥っていた。手をしっかりと握り、


 「レノミン・・・君がいて、僕はこの世界で頑張れる。僕をひとりにしないで、行かないで欲しい・・」とレノミンの手を握り、行かないで欲しいと何度も祈っていた。


 その時のキースの心配はその通りだった。


 レノミンは現代に戻り、田舎の山や川を眺め・・自分の家を探していた。

 「お父さん、お母さん・・・戻って来たよ」


 両親はやはり年を取っていたが、兄弟に孫が生まれていて、子供たちに囲まれて幸せそうに見えた。


 自分の部屋に入って、驚いたのはその部屋は無く、兄夫婦の寝室に改造されていた。こんな田舎で同居してくれているお嫁さんに感謝した。


 庭に回ってそっと、お母さんの近くに寄った。


 背中から抱き着いてみたが、それは、できない。きっと、幻で、この場所には自分が存在できない事がはっきりわかった。でも、きっと、これが私が望むこと。


 その後は東京の上空にいつの間にか移動していた。可笑しいけど、地下鉄の出口・・・沖(0)の曲が今でもお店から流れている。ふふふふ・・・と笑って、その場を去る。


 今度はレノミンさんの記憶がやって来た。

 レノミンは小さい時に自分の父親に「私のお母様はどこにいるの?」と聞いている。ファースト領主はレノミンを抱き、スケッチブックを見せる。


 「この美しい人がそうだよ。でも、きっと、君といつも一緒にいると思うよ」とあやしている。

 その後、その美しい人が現れた。


 小さい頃のレノミンにいつも寄り添っているように見える。


 すべての人が何らかの形で色々な世界を持って、そして過ごしている。レノミンははっと、目が覚めて、急にいきみたい! 産みたい!!

 「キース、痛い!! 助けて!! 痛い、産まれそうだ!!! 」


 ミンクとダリアがしっかりと落ち着いて対応する。

 「レノミン様、全開です。今度、いきみたくなった時には産みましょう」


 レノミンは顔中が汗まみれの中、うん、うん、と頷いて、キース先王の手をしっかり握り、

 「オギャー、オギャー、オギャー」と言う声と共に女の子が湖畔の別荘で誕生した。


 「レノミン、女の子だ。グレースとエミリオの妹だよ。ありがとう」


 レノミンは改めて、自分はここで生きていると感じて、すべての人に感謝した。


 「キース、ありがとう。この世界に来て良かった。ありがとう」


 「うん、うん、」キース先王は泣きながら、ただ、ただ、うん、うん、と言っていた。


 直ぐに、王宮のエミリオにも連絡が入り、やはり、妹だったか・・・と笑って喜んでいた。


 グレースは生まれたての妹を見て、本当に小さいと、こころから思った。


 もちろん、カスター先王と皇后は抱き合い喜び、別荘、屋敷、コチャ領のすべての人はサンドロの花火に舞い上がった。


 続々と、お祝いの電話が鳴り、訪問対応、別荘のすべての人たちは大忙しだった。


 キースは、静かに眠るレノミンと赤ん坊を、ただ眺めて幸せを嚙みしめていた。


 「レノミン、僕もこの世界に来てよかったよ。愛しい人が増えていく幸せを感じる自分がいる。本当に、僕に愛を教えてくれてありがとう」


 今回は産後からダリアがいてくれて本当に助かった。


 やはり、年には勝てず、薬草のお世話になりながら、体の回復を進めた。それを見ていた皇后は、もうすぐ生まれてくるビル国王の第3子もどうしてもここで出産させたいと願った。


 2か月がたって、足ふみ昇降を始めた頃に、ビル国王は初めて別荘にやって来た。


 またまた、大荷物のプレゼントを抱えて・・・

 「レノミン、おめでとう。可愛い女の子が増えて、我が国でも祝砲を討って祝ったよ。顔を見ていいかな?」

 「どうぞ、こんにちは、アリスです。ビル国王に挨拶して下さい」


 ビル国王はアリスを見て、言葉を失う・・・自分の3日しか生きていない娘にそっくりだと思った。


 目が少し涙で霞む・・・

 「アリスはなんて色白な赤ん坊だ。目も大きくて、まさに、カタクリ国の顔! 」


 「そのフレーズ、毎日、カスター国王が言っていますよ。グレースなんかたまに真似をしてアリスをあやしたりして・・・でも、本当にグレースの小さい時によく似ています」


 「これは・・・・先王が帰って来ないはずだ・・すまない、長い間お世話になって、カタクリ国では、色々なしがらみだが存在する。もちろん、先王の力を利用する人間も沢山いて、こんなにゆっくりできない、私の地位を、揺るがない物にしたいと思って、こちらに雲隠れしていると思うと申し訳ない・・・ね」


 「いいえ、グレースとエミリオには、、おじい様と皇后がいらして、私の方が助かっています。二人にアドバイスが出来るのは、やはり国を長く収めていたカスター国王が一番ですから・・キースは、今、アリスに夢中で・・・」


 「そう言ってもらえると、有難い」

 「------」


 「ビル国王、---王妃に何か?ありました?」


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