モブオタ、転生先は無口な代理母

即位式

第５４章

　即位式当日、晴天。

　キース国王とエミリオ皇子は、何とか伝統を大切にして、即位式を開催することができた。

　エミリオ皇子は国王より件と盾を受け取り、国民に向けての挨拶を行った。

　その中で、エミリオが、一番国民に訴えたのは、自分が幼くして国王の座についたのは、国の安定を図る為と言う点だった。

　キース国王は１０年以上王座について、この国の立て直しに尽力してきたが、安定と言う意味でこれから先も先王と二人で国政を行って行く事。

　つまり、国王二人体制でこれからの何十年はゼロ家の男性２名でこの国を発展させることを国民に誓った。

　そして、これからレディ・ファーストが出産する子供はセロ・ファーストとなり、ゼロ家、ファースト家のどちらも継ぐことが出来る。

　それには即位式に合わせて、法の改正を行った事を報告し、ファースト家の二人をバルコニーでお披露目した。

　今回の即位式は大勢の国民が祝った。

　それはキース国王の疫病対策の素早さ、エミリオ皇子の利発さと美しさが爆発的な口コミによってこの数か月で広まった事、それに加えて、やはり、レノミンの存在が大きかった。

　カタクリ国の壮大なバックアップがあり、新国王の生母、作家としてのⅬ葉の知名度だった。

　そして、今回、初めて、国民の前に立ち神秘のベールを脱ぐ・・

　バルコニーに立つ前、

　グレースとエミリオは国王とレノミンに挨拶をする。

　二人の支度はコチャ領の使用人とカタクリ国のプロの方々が仕上げてくれた。

　国王に謁見す部屋で二人を見たキースはしばらく口が聞けなかった。

　「スゴイ、美しい、ビュティー！ なんて言っていいかわからない程、綺麗だよ。二人とも・・」

　「へへへ・・お母様、本当にお綺麗、お腹もドレスのスカートが上手にふあっとしていて素敵に見えるって、手伝ってくれた人々が絶賛していたのよ」

　「グレースも可愛いでしょ。王女の風格が備わっているって、皆に褒めてもらって、お母様も嬉しかった。本当に素敵なレディです」

　エミリオはそんな二人を見て何も言っていない、緊張しているのかと両親として、心を痛める。

　「さぁ、エミリオ、グレース、国民が待っている。バルコニーに立とう！ 」

　バルコニーに向かう途中でキースはエミリオに話かける。

「気分はどう？緊張している？具合が悪くなったりしたら教えて欲しい」

　「お父様・・・」

　「うん？」

　「僕は、これから、お母様以上に美しくて優しい女性に、巡り合う事が出来るのでしょうか？お母様はあんなに美しい・・・」

「え？？」（マザコン？）

　「好きになった女性は、自分の中で、一番美しいと思えるから大丈夫。きっと、出会える」

　「－－－－－－」

　「お父様は本当に幸運です」

　「・・・・・・」（エミリオ、僕もそう思うよ。）

　「さあ、行こう！！ 光の向こうへ！！ 」

　バルコニーに４人が立つと、ハトが飛び、紙吹雪が舞い、ものすごい歓声が上がった。

　キースが即位した時とは全く違う、この時、国が動いたと感じられた。

　エミリオの挨拶が終わった時には歓声がピークになり、それからしばらく４人で手を振っていたが、レノミンの体調もあるので、名残惜しく、戻っていった。

　その日の夜には祝賀会が開かれて、最高のケータリングが、各国の皇族たちと、国の為に尽力してくれた商会の皆さん、国営の施設で働いている館長や農業従事者、学校関係者たちに振舞われた。

　３か国の皇族が、サンシン国に気兼ねなくやって来るには、理由があり、邪魔な貴族たちとの交流が無い事が一番のいい点でもあった。

　気軽に食事をして、話し合い、家族の様に互いを心配し合う。

　「エミリオ国王、本当にご立派でした。本当にサンシン国の事を考えて温かい宣言でした」

　「この国は、これからの国だから二人で国政を進めていくのはいい案だ。それで、エミリオの幼い部分のマイナスを消し去って、未来永劫に繋がっていける」

　エミリオのこれからの政策には、どの国の国王も賛成してくれた。エミリオとサンシン国にとっては心強い後ろ盾になった。

　「ゼロ・ファーストの融合もいい立案で、今、この時に法律を変えて、どちらでも継承できることにしたのはいい・・レノミンも安心だろう？」

　「はい、国民が認めてくれて、祝福してくれたのが本当に嬉しかったです」

　その通りだと、その場のすべての人は頷いた。

　それから、男性と女性たちは場所を変えて、男性たちは主にお酒の飲める部屋に移動した。

　男性サロンでは、

　「こちらはカタクリ国のワインです。こちらはハル国より米酒です。みなさん、どうぞお召し上がりください」

　シン国王は、

　「実は私は酒が大好きで、この前、カタクリ国より送られた消毒用の酒も少し飲んでました。美味しかったですよ」

　「そうですか？私もです。酒が飲めないなんて…ねぇ？レノミンも水の様に飲みます」

　「でも、あれは飲んではいけませんよ。アルコール濃度を高めてありますから、無茶をしますね」

　「はははは・・・王妃にもすっごく怒られました。手を拭いて下さいって・・・でも、本当に助かりました。以前は高いアルコールの酒があったのですが、体に良くないと言われハナ国では濃度を下げる法案が通ってしまい、本当に消毒に向いている品がありませんでした、有難かったです」

　「私たちがS国について話してから随分たちますね。まさかこんな事態に陥るとは思ってもいませんでした」

　「本当です。しかし、あの時、ドント宰相の話に耳を傾けてよかったと思いたいですね」

　4人は本当だと心から思っていた。

　「しかし、今日の主役はエミリオ国王ですが、レノミンさんの人気も高かったですね」

　「ええ、今回の防疫でも作家としても活躍してますし、あの美貌は素晴らしい。キース国王もやっと一息だね？」

　「ええ、やっと、お嫁に来てもらいました」

　「はははははは・・」

　「所で、グルガシ国のキュル国王も結婚なさったと噂にききましたが・・・本当ですか？」

　コロネ先王は嬉しそうに、

　「はい、急な結婚で、他国へ招待状もだす時間がありませんでした。急に結婚式を挙げました。相手はキュルの幼馴染で、美人で聡明な嫁です。何よりもキュルの事をずっと好いていました。キュルも家庭を大切にする男だと信じたいです。それに今は目標を持っています。それが私の一番の楽しみで・・その願いが実ることを切に願っています」

　「キュル国王の目標って・・・・」

　コロネ国王は笑顔で答えていないが、こんな幸せそうなコロネ国王を３人は知らない・・・きっと、跡取りの事と察しはついたが・・・そこで、カタクリ国のカスター先王は牽制球を投げる。

　「お祝い事と言っていいのかまだわかりませんが・・実は我が国の国王のもう一人子供が生まれる予定です。国王に進められて、王妃はレノミンの所に静養に来ていたのが功をなして、オメデタとなりました。オメデタと聞いた時は、女の子がいいと思いましたが、今では皇子でもいいと思っています」

　コロネ国王の顔が少し曇る・・・

　その時。シン国王も話始めた。

　「どうしたことでしょう。今年はベビーラッシュですね。実は我が国の宰相もやっと結婚して、子供が生まれる事となりました。レノミンさんよりは少し早く生まれる予定です」

　「それは・・・ロケッサ宰相にお子さんが出来たのですか？それは、それはめでたいですね。お人形のような赤ん坊が生まれるのではないでしょうか？」

　「はい、王妃は飛び上がる程喜んでいました。ですので、今回、こちらを訪ねるにあたって、ソフィは、レノミンさんと仲良くなりたいと望んでいます。別荘への滞在は可能でしょうか？」

　「もちろん、歓迎します」

　コロネ国王の顔はより一層、曇る。

　なんと、この４国に同世代の子供が誕生しようとしている・・・・

　誰も、グレースの話を切り出さないが・・・あの美しさは反則だと思っていた。フーーーー。