即位式準備②
第53章
エミリオの即位式の2週間前には、カスター先王と皇后はコチャ領に入っていた。
別荘に滞在する予定だったが、あまりにも荷物と従者が多く、急遽、領主の屋敷に滞在が決まった。そこではカタクリ国の人達だけで、警備も食事等も賄えるので改めてコチャ領側から応援はいらなかった。
はっきり言うと、あの屋敷は、カタクリ国の飛び地の屋敷のようだった。
『食いしん坊の妃とネズミの館』は今ではカタクリ国からの観光客が多く、経営はレノミンが行っているが、先王が滞在するとより一層、親しみが湧き、大きな収益となった。
レノミンはすでに6ケ月に入っていて、お腹が少し大きくなってきていた。
「お母様、今日はおじい様の所にいらっしゃるの?」
「そうよ、おじい様がお母様のお母様、おばあ様の遺品を持って来てくださって、それを受け取りに行く事になっているの、グレースにも沢山のお土産があると思うわ・・・」
「へへへへ・・・私もそう思う・・」二人は顔を見合わせて笑っていた。
今日のご予定はもちろん衣装の件だった。
レノミンの衣装はもちろんサンシン国の一番高級な生地でのオーダーメイドだったが、カタクリ国の皇太后の衣装の中から、前国王が即位した時のドレスが見つかり、そのドレスの一部の刺繍をレノミンのドレスに上手に組み込むことにした。今日はレノミンが当日、着るドレスを持って、皇后の刺繍部隊が構図を考えて確認する。
「グレースはどんな衣装なの?」
「私のはエミリオの緑の衣装が映える様に白地に薄い黄色い花と葉が薄く全体に刺繍してあるもので、エミリオが言うには私は絶対に汚すから当日に宮殿で着替えるの・・・初めて宮殿に行くのに、着替えたらじっとして、水しか飲んではいけないの・・・大変だ・・・」
「でも、エミリオはすっごく忙しい一日なのよ。グレースも頑張ってね」
「はい、頑張ります」
「国王も、さすがに今は忙しいだろう、各国からの招待客の準備もある。なんせ、この国は人材が少なすぎるから・・」
「はい、目が回る忙しさと申していました。しかし、新しい教育制度の学校を卒業した若者が少しずつ増えてきて、一新した省庁が少だけ機能し始めて、それだけで国と言う船が動き出したと、国王は言っています。後はまた汚職に染まらないように皆で監視するシステムの構築をしたいと申してます」
「うん、例え、エミリオに譲ったとしても支えてやらなければその船は泥船になりかねない」
皇后が、
「グレースにも沢山のナナ王女のドレスを持って来たのよ。少しデザインが古かったので皆で手直しをして、とっても素敵になったから着てみる?」
「本当??昨日、お母様とお土産なんだろうねって、楽しみにしていたの?待ってて、着替えて来ます」
しばらくして、髪をアップにして、そろり、そろりとグレースがみんなの前に現われた。その場にいたすべての人はため息をついて、
「美しい・・・」
もうすぐ12歳ともなると本当に見違えるように美しい・・・カスター先王は、
「これは、これは、本当にキュル国王に見せなくてよかった。そうでなければ即位式で、ひと悶着あったかも知れないぞ・・・よかった。よかった」
「しかし、エミリオの即位式には、先王と共にキュル国王もいらっしゃるのでは?」
「イヤ、キュル国王は即位式の3日後に結婚式を挙げて結婚したらしい・・」
「らしい‥とは?」
「うん、どうやら、伯爵の娘と即位式の夜に・・・・ううん・・」
「えええええええ・・そうですか・・それは、それは、コロネ先王は大喜びでしょう」
「喜んでいるのかはわからない。今度、会った時に聞いてみよう。ふふふふふ・・・」
「先王、顔が笑っていますよ。グレースの前です」
「キュル国王はご結婚したの?どうして教えてくれなかったのかしら?お祝いの品をお送りしなくては・・・ねぇ?お母様?」
「まだ、正式な発表が行われてからお送りしましょう」
「グレースはキュル国王が好きだったか?」
周りは息を殺して答えを待つ。
「うん、好きよ、勉強の答えは教えてくれるし、お菓子もくれるのよ。大人ではキュル国王だけだった。周りの大人は皆、虫歯になるとか食べ過ぎです。とか、制限するけど、キュル国王は食べたい物を食べていいって、おっしゃって、なんて、優しいと思う。だから、王妃も何でも食べれる。羨ましい・・・」
「そっか・・キュル国王は大人だもんな・・・そうか・・・・」
「うん、でも、カタクリ国の皇子たちも沢山お菓子をくれたの・・・みんな、内緒だよって!」
「そっか、そっか・・・・そっか・・」
「もう少し、着替えてみたら?」
「うん、また、着替えてくる」
グレースが席を外して、一同で笑った。
「笑っては失礼ですが、どうか、キュル国王の結婚が幸せに繋がることを祈りましょう」
「今回は、コロネ先王夫妻での参加になるらしい、コロネ国王は次の皇太子を見るまでは何とか頑張って生きていたいのか、その後、また、コチャ領にやって来ると聞いている」
「その時はゆっくり色々は話ができる。ハナ国からは今回はシン国王夫妻が参加になるらしい、今後の事も残って話し合いが持たれるだろう・・久しぶりに対面だ」
「先王は、とっても楽しみにしていらっしゃるのよ。他の国の皇族と会う事を、例え、退いても友は友と思っていらっしゃる。いい関係が築けるといいわね」
「はい、本当にこの世代からは戦争がなく、民が豊かに暮らせる世界であって欲しいです」
3人はグレースの着替えを待ちながら、どうか、このまま平和でありますようにと思っていた。
数日後、カタクリ先王夫妻は、王都の宮殿に入られて、エミリオとキース国王と対面を果たした。
それからは色々な面でサポートを受け、即位式に向けてのラストスパートに入った。ある夜、キース国王はレノミンに電話で話をした。
「即位式の伝統があるらしく、自分の時はただ剣と盾をもらって終わりだったけど、何歩で国王の元にたどり着くとか、お礼の仕方とかがあって、その後の晩さん会等のしきたりとかを今、ギシの知り合いの図書館の館長に調べて貰っているけど、その館長の娘さんが途轍もなく頭がいい。見惚れる」
「そうなのお幾つくらいの方ですか?」
「エミリオと同じ年」
「---同じクラスとか?」
「イヤ、二人とも飛び級で卒業している。とにかく、文献が好きで、今回、料理はケータリングだけど、食器の置き方まで知っている。あれはダメ、これはいいとかエミリオに指示して、エミリオは不機嫌極まりない」
「よく、話が見えないのだけど・・?」
「とにかく、その子、マルークって言うのだけど、エミリオよりも優秀かも知れない。僕はマルークがいて、とっても助かっている」
「すいません、本来なら私が王宮に出向く方がいいのでしょうが・・・」
(出向きたくない・・)
「そんな、大切な体だから2日前に入ってくれればいいよ。こっちはカタクリ国の先王夫婦やコチャ領のみんな、それにマルークがいるから大丈夫」
「将来が楽しみですね。宮殿で働きたいのかしら?そして、何かお礼をしなくては・・マルークの好きなものがあれば教えて貰ってくれる?」
「それが・・・・君の護衛につくのが夢らしい、ガリ勉風なのに剣の練習も始めました。って、言われて困った。しかし、・・僕の下で働きたいと申し出てくれる人間は、この国にはいないのかね?」
「??????」
「---お礼も、君と話をしたいと言われた。だから、晩さん会では少しマルークと話をして下さい。僕やエミリオより君が彼女にとっては偉大らしい、Ⅼ葉さんのファンは凄いよ、みなさん! 」




