キース国王
第45章
「こ、国王、どうして私のベットに・・・?」
「昨日、通りかかったら、レノミンさん、うなされていたし・・僕が必要だったみたいで・・」
「でも、目が覚めた?もう、お昼近くで、食事は部屋に用意してあるよ」
レノミンはさっと、自分の服を確かめる。
「あ、大丈夫だよ。してないから・・本当はとってもしたかったけど・・具合が悪いレノミンさんを、襲うのはいけないと思って・・・・でも少し・・・お尻とか触ったけど・・・痩せすぎだよ。でも、お尻は丸くてふわふわで・・」
「国王!!! 」
国王は笑いながら食事をベットに運び、レノミンの食べる様に進めた。
レノミンは相変わらずスープを飲みパンを少しと小さな肉を一切れ食べただけだった。
「その食事の量だと、ダリアさんが本当に心配するよ。毎日、あなたの為に考えて作ってくれているのに・・・彼女にとってはやはりあなたが一番、例え、どんな勲章よりもあなたの健康が一番だから・・」
国王は食器を片付けながら、話を続ける。
「ハナ国では、お米を作ってマルクさん達は食べているらしいよ。お酒も醸造しているらしい‥今回の流行り病の時は活躍したらしいよ。カタクリ国のアルコールよりは、少し濃度が薄いけど、役立ったらしい・・」
レノミンは下を向いて自分の手を見ている。国王は食器を廊下に出して、レノミンのベットに入る。
ビックリするレノミンだが、言葉が出ない・・・心の中で、この人のぬくもりが好きだと感じている。
「少し、話す?眠る?する?」
「---しません!!・・・・・・・・・・・・・お、お、沖さんは・・なぜ?沖(0)が芸名だったのですか?」
キース国王は「ふふ」と笑って、レノミンを抱き寄せ、おでこにキスをして、答える。
「零士だから・・・」
「え?」
「僕は孤児で里親に育ててもらったけど、その親とも結局、上手くいかなくて、最初につけられた名前が零士だった。今、思うとゼロ家だったのかとも思う」
「やはり・・・、そう思っていました。国王はあっちの世界でもゼロ家と繋がっていて、でも、私は違う!!」
「私は別にこの世界に・・・」
「選ばれて来たと思いたいの?」
レノミンの全体が固まり、
「わぁーーーーーーーーーーー!! 」
レノミンは初めてこんなに泣いた。いつも、どんなに辛くても、布団をかぶって泣くような子だったのに・・・涙がドンドン出てきて、嗚咽が止まらない。
「あなた、あなた・・・・・・」
「うっ、うっ・・・・・」
「僕はレノミンさんが好きだよ。そういう真面目な所も含めて好きです。それは決して、双子の母親だからとか、コチャ領の領主だからではなく、ただ、ただ、好き! 僕が君を望んでいる」
キース国王はレノミンの体を確かめる様に少し触る。
「国王、触りすぎです」
「いや?」
「慣れません」
いつの間にか国王の膝の上に座っている。
「女性に触れるチャンスが、この世界には無くて・・・イヤ、王宮では莫大にチャンスはあるけど、僕が初めて触れたいと思ったのはレノミンさん、前世ではSEX=処理みだいに思っていた所あるし、でも、触れるっていいよね。お互いの体温って、暖かい、一緒にベットに寝るだけで安心できる」
「昨晩は、何度もレノミンさんが息をしているか確かめた。心から生きていてくれて、ありがとうと思った。今なら、どんな恋歌でも書けそうだ。君に恋している」
「国王のそういう言葉が慣れません」
「なんで?昔の彼女にも使って上手くいったから、レノミンさんもこれで落ちるとか考えてないよ。前世では口説く必要なかったし・・・あっちからやって来た。アイドルだったあの子なんか・・・」
「聞きたくないです」
「アイドル好き?」
「いいえ、」
「何が好きだった?僕の曲とか聞いていた」
「街に流れていました。歌番組とか・・・家族で見ていたし・・・」
「レノミンさんはやっぱりドラマが好きだった?ほら、ロマンス小説の内容がそっくりだったから・・でも、それで同じ日本人だとわかったけどね」
「知っていたのですか?」
「うん、」
レノミンは真っ赤になって、それから、また、布団を被って寝たふりをして、本当に眠った。
夕方になり、また、食事が運ばれていた。その気配にレノミンが気づいた。ご飯の匂いがする。
「僕がマルク医師に頼んでいたのが丁度、届いて、スゴイのはカレーもある。カレーは明日、作ってみるけど、おにぎりでいい・・??マスがこの領土でも釣れるからマスに塩をかけて、後、マヨネーズも卵と酢で作ってもらった。流石に梅干しはないけど・・桃を塩漬けも送ってもらったから、食べてみる?」
国王はなれない手で白いご飯を握ってレノミンに手渡した。レノミンはそれを受け取り、大きな口でパクリと食べる。
「美味しい・・・」涙が止まらない。
「美味しい、美味しいです」
「良かった。うん、レノミンさんは、何も我慢すること無いんだよ。食べたい物を周りに言えばきっと、周りの人は探してくれる。君の部下たちは、そういう部下でしょ・・・」
レノミンは首を振る。
「どうして?」
「私はレノミンさんではありません。違う・・・彼らが守る人はもうすでに・・・いません。だから、少しでもサンシン国や領土の為になりたくて、そう生きてきました。でも、S国の人たちも私と同じ考えでカタクリ国の隅っこで、生きていたのではないでしょうか・・・?彼らが殺されて、私が生きている・・・伯爵の位まで貰って、国民に拍手される人でしょうか?どうしたらいいのか・・・」
「彼らは子孫を残していません。でも、私たちは、この国の皇子と領主を設けました。それが、今後、何かの災いになって、4国、サンシン国、コチャ領、グレースやエミリオに不幸をもたらしたら・・・」
「---僕が孤児だったことは話したよね。僕は前世でもずっと考えていたよ。僕が生まれてよかったのかと・・・本当の親を不幸にしたのか?僕の事を、ずっと心の痛みにして生きているのか、いや、痛みにして欲しいとさえ、思っていた頃もある。世の中すべてが憎かった、その思いで曲を作っていた時もある」
「そんな・・・・」
「そう、そんな・・・・。それが答えだと思うよ。見えない答え、正解は霧の中にあって、誰にもわからない・・・タダね、ドント宰相・・・」
「ドント宰相?」
「彼に勧めてみたんだ。彼の愛する奥さんの所に訪ねてみたらって!! まぁ、命令だけど・・」
「そしたら?」
「そしたら、奥さんが遅いって! 滅茶苦茶怒られたらしいよ。あなたが来るのが遅かったから、子供が産めなかった。って、でも、彼女は、女手一人で、同じくらいの子供たちを養子に迎えていて、その3人の子供たちをバリバリの軍人に育てていて、今ではその3人に軍を任せてもいいと思っている」
「スゴイ・・」
「あの悪者宰相が惚れただけある女性だよ。馬鹿な宰相はこの国を壊そうとしたけど、彼女はこの国を守る為に生きていた。レノミンさんと同じだ。僕はこの世界に来た時は好奇心の塊で、なにもかもが新鮮だった。一度、死んでいるから、死が怖くなかった。国王になってからもいい加減で、流されていた事も多く、宰相と同類だね。男は弱い生き物で、でも、愛する人と出会うと変われる」
「もしも、レノミンさんがこの世界に呼ばれた意味が知りたいのなら・・駄目な国王をどうにかする為だと、思って欲しい・・コチャ領、サンシン国、4国よりも前に出会ったのは僕・・・」
レノミンは国王の顔をじっと見ている。
二人は初めてキスをする。
その夜、パジャマ姿のレノミンを霧の中で国王は抱いている。
立ったまま何時間も、レノミンがエミリオを抱いて命を授けたように、キース国王は愛しい彼女を抱いていた。




