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転移先で最初の職業選択を間違えてもリカバリーは効く  作者: 葵あさ
1章

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冒険者登録とエルフの少女

 ランド達に再度深く礼を告げられた後、ランド商店を出た俺はその足でイステリアの冒険者ギルドを訪れていた。

 目的はもちろん冒険者登録だ。

 レイバス帝国では戦闘未経験で戦闘用スキルも無く、その上レベル1だったので登録を断られてしまったが、今回はすんなりと話が進んだ。

 現在のレベルと剣術スキルを所持していることを告げると訓練場で試験管と軽く模擬戦をして戦闘技能を確認されただけで登録できた。レイバス帝国で兵役に就いていた事は後々面倒になる可能性もあったので伏せた。

 逃亡罪で引き渡しとか怖いじゃん。そんな法律あるのか知らないけど。


 無事冒険者になった訳だが、ここで冒険者について軽く触れておこう。

 冒険者の仕事はいわば何でも屋だが、主な仕事は3つ。

 討伐、護衛、採取だ。

 依頼主が冒険者ギルドへ依頼を出し、ギルド職員が難易度を判定して依頼表がボードに貼られることになる。それを見た冒険者が自分に見合った依頼を受けていくのだ。この他にも雑用依頼や都市防衛依頼、戦争参加依頼なんてものもある。戦争とか二度とごめんだが。

 冒険者には実力や貢献度によってE~A、S、SSといったランクが与えられる。

 各ランクのイメージはこんな感じ。

 Eランク…駆け出し。

 Dランク…初心者・若手。

 Cランク…一人前・中堅。

 Bランク…実力者・ベテラン。

 Aランク…達人。

 Sランク…超人。

 SSランクは過去の勇者や聖女、賢者なんかの伝説的な人物に与えられた名誉称号みたいなもので、実質的にはSランクがトップだという。Sランクは各国に数人ずつくらいしかいないらしいけど。

 当然俺は駆け出しのEランクだ。ランクが上がるにつれて受けられる依頼も増えるし、達成報酬も高額になる。俺が今受けられるのは低級の魔物であるゴブリンやスライム討伐、薬草の採取、その他雑用系依頼だけだ。護衛依頼はDランク以上かららしい。


 さて、冒険者登録も無事済んだことだし、行きますか。

 依頼は受けないのかって?

 正直Eランクの依頼を達成しても大した金にならないんだよね。その日の宿代と食事代くらいにはなるが、貯金なんかが出来るほどの稼ぎにはならない。Dランクに上がってようやく人並みの生活が出来る程度。そしてCランクになるとそこそこ裕福な生活が出来るくらいに稼げる。Sランクまで行くと国で有数の富豪とか貴族並みの金が入ってくるらしい。

 流石にSランクになれるとも思っていないが、当面の目標はランクを上げることとした。

 なら積極的に依頼を受けて貢献度を上げるというのが通常の方法なのだが、実は近道が存在する。

 ダンジョンの踏破だ。


 ◇


 ダンジョンとは魔物の巣窟であり、同時に素材の宝庫でもある。

 世界各地に存在しており、内部はある種の異空間になっている。洞窟型、塔型、迷宮型、フィールド型など様々な形態があるが、共通項がいくつかある。

 基本的にダンジョン内の魔物はダンジョン外に出て来ないこと。

 ダンジョン内には鉱石や宝箱などが存在すること。

 フィールド型以外は10層ごとにボスと呼ばれる強力な魔物が通称『ボス部屋』に配置されていること。

 ボスは倒しても数時間~数日で復活すること。

 その他は出現する魔物の種類も階層数もダンジョンごとに全く異なる。

 何が原因でダンジョンなんてものが形成されたのか、あるいは誰かが意図して作ったものなのか。その辺りは諸説あるらしいが明確な答えはないらしい。

 ただ魔物の素材や鉱石、時には魔力の込められた武器などが産出することから『危険度の高い鉱山』という認識を持たれている。

 そして冒険者は通常の依頼とは別にダンジョンの探索も推奨されていた。

 それはダンジョン内の資源を持ち帰り、経済を潤すという役割の他に魔物が溢れるのを防ぐという意味もある。長期間に渡り魔物が駆除されずにいると、ダンジョンから魔物が溢れ出てくる『決壊』と呼ばれる現象が起こるそうだ。まぁ滅多にないし、その前兆があれば騎士団が動くなり冒険者ギルドから緊急依頼がでたりして未然に防げることがほとんどらしいけど。


 重要なのはダンジョンを踏破した際の報酬だ。

 ダンジョンにもE~SSまでのランク付けがされているのだが、Bランクダンジョンまでなら全階層を踏破してボスを撃破した場合、ダンジョンランクと同等の冒険者ランクを得ることが出来るのだ。Aランク以上は貴族や王族の依頼を受けることもあるため、単純に実力のみではなれないらしいが。

 ともあれ、このイステリアの近くには全20層のDランクダンジョンと階層数不明の暫定Cランクダンジョンが存在している。

 俺が狙っているのはイステリアのDランクダンジョン『岩鬼の洞窟』の攻略だ。

 このダンジョンを攻略出来れば、週5日ペースで依頼をこなしても半年~1年はかかるDランク冒険者にすぐになることが出来る。

 安全を求めるなら大人しくEランクの依頼を受け続けるべきなんだろうが、俺の実力があればDランクダンジョンなら余裕だろうとランドが勧めてくれたのだ。実際にどこまで行けるか分からないが、取りあえず試しに浅い層へ潜ってみて、行けそうなら攻略を目指す。厳しそうならその時考えよう。そんな感じで冒険者ギルドを出ようとした時だ。出入り口で人に肩がぶつかった。


「あ、悪い…ぉぉぅ」


 小さく声が漏れた。

 それはぶつかった相手が見たことのないくらいの美少女だったからだ。

 背中まで届く長い金髪、白磁のような肌に瑠璃のように濃い青の瞳。歳は15~16くらいだろうか。動きやすい軽鎧を纏い、緩やかな曲線を描く腰には細身の直剣、そして背中には矢筒と弓を背負っていた。なにより特徴的なのはその耳が長く、先端が細く尖っていることか。

 エルフだ。

 獣人や竜人は何度か見かけたがエルフを目にするのは初めてだった。

 元の世界のイメージでは深い森の中に住まい、外界との交流を拒むという感じだったが、この世界のエルフも似たようなものらしい。理由は分からないが人間の街に住むエルフというのはかなり少数のようだ。

 俺が珍しさとその美しさに見惚れてまじまじと見ていたからだろうか、エルフの少女は不快そうな表情で言った。


「なに?」

「あ、いや、エルフを見たのが初めてだったから驚いてな。気分悪くしたなら謝る」

「別に」


 そう言いつつも不機嫌そうにエルフの少女はギルドの受付へ歩いて行った。

 あれは怒らせたか。女性は男の視線に敏感だって言うし、じろじろ見られたらまあ不愉快だわな。

 装備からして冒険者の様だし、また顔を合わせた時に謝っておこう。

 そう決めて俺はDランクダンジョン『岩鬼の洞窟』へ向かった。

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