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転移先で最初の職業選択を間違えてもリカバリーは効く  作者: 葵あさ
2章

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和風デュラハン

 数合剣を合わせ、すぐに正面からの斬り合いに分がないことを悟った。

 剣術も身体能力も相手が上。

 かなりの重量がありそうな大刀をまるで片手剣のように軽々と振り回してくる。

 剛力スキルを使っても尚力負けしている。

 速度はややこちらが勝っていることが希望と言えなくもないが、それも僅かな差でしかない。


 フェイントを入れても看破される。

 剣術だけではジリ貧なのは確実。

 では剣以外で差を埋めるしかない。


「雷陣」


 剣を交わしながら並列思考で魔法を発動する。

 威力が減退してしまうがこうまで激しくやり合っている最中にのんびり魔法に集中している暇などない。ほんの少しでも和風デュラハンの気が逸れれば、あわよくば動きが止まってくれたら……という考えは流石に甘かったようだ。


『……』

「効かないですか。そうですか」


 雷閃が掠った時も感電している様子はなかった。

 もしかしたら電撃耐性を持っているのかもしれない。だとしたら溜めなしで発動出来る低威力の雷魔法は通じない。そして魔法陣を準備する時間もなかったので雷獄なども使えない。

 魔法に頼らず接近戦で倒せってこと?

 きっついよ、かなり。


 和風デュラハンが突っ込んでくる。

 上段からの斬り下ろしを横に回避。

 がら空きになった脇腹に一撃入れようとするもすぐさま地面に刺さった大刀で横薙ぎにされる。

 慌てて剣で受け流すと、そこに蹴りがきた。

 腕でガードして蹴りの衝撃を利用して距離を稼ぐ。


「足癖悪いなぁ。武士だろ」

『……』

「笑ってるし」


 相変わらず声がないのに感情が読み取れる。

 楽しそうでいいな。

 こっちは必死――まぁちょっと楽しいけどさ。


 しかし本当に隙がない。いや、正確には隙は出来るのだが身体能力でカバー出来る程度なのだ。計算された隙と言えばいいか。やりにくい、というのが正直な感想だ。まるで歴戦の戦士、ゴリラ教官を彷彿とさせる。自身と相手、双方の力量をかなりの精度で把握している。こういう相手から一本取るのはかなり難しい。

 そう、難しい。

 決して不可能ではない。

 

 俺の闘志に翳りが見えないことが伝わったのか、和風デュラハンが喜んでいる気がした。

 こいつ、本当に戦いが好きなのな。

 新ルートは数十年見つかっておらず、来客も俺達が初めてのはずだ。戦う相手がいなくて寂しかったのかもしれない。


「俺で良ければ付き合うよ」

『……ッ!!』


 喜色満面の波動。

 互いに地を蹴り、激突。

 数十合のぶつかり合い。致命的な攻撃だけはギリギリで避け、その他は無視。斬られた端から余剰生命力を使って治癒。怪我による身体能力の減衰を最小限に抑えて必死で食らいつく。

 しかし現実は無情である。力量差は意思や気合いだけで覆せるものではない。

 徐々に斬撃を浴びる回数が増えてくる。


「またか!なんだよそれ!?チートですかァ!?」


 眼をフル活用して次の動きを予測。

 和風デュラハンの行動選択肢を絞って明らかにこちらの攻撃がクリティカルヒットする盤面。

 だがその時に限って和風デュラハンの動きが加速する。

 避けられないはずの攻撃を避け、防げないはずの攻撃を防ぐ。

 剛力と同タイプのアクティブスキルか?

 攻撃時にも急に鋭さを増した攻撃を放ってくることがある。一度この強化攻撃をまともに剣で受けてしまい黒柘榴鋼の長剣が少し欠けてしまった。それ以来強化攻撃は受け流しか回避に専念している。

 強化攻撃は予備動作というか、身体を覆っている魔力が攻撃部位に集中するのでどうにか対応可能だが、魔力の集中から攻撃までの猶予が恐ろしく短い。俺でなきゃ見逃しちゃうね――うお!?あぶねっ、首掠った!反応がほんの少し遅れてたら頸動脈逝ってたぞ!余計なこと考えるのは止めておこうか!


 このままだと削り殺されるのは必至。

 そろそろ賭けに出るか。


 斬り上げをガードした際、剣がかち上げられる。

 半歩横によろける。態勢を整えようとしたところに鋭い蹴りが入った。

 

「ぐっ、あ……!!」


 くの字になって身体が吹っ飛ぶ。

 楽しい時間もそろそろ終わりか、と和風デュラハンから寂寥に似た波動が伝わってきた。

 

 はは、冗談だろ。

 何の為に斬り上げを受け流さなかったと思っている。

 何の為に蹴り以外の選択肢を潰す位置取りをしたと思っている。

 何の為にエレナに騎士達を集めさせたと思っている。


 俺は地面を転がりながらエレナが集めた騎士の山に突っ込む。

 そしてエナジードレインを発動。死体はエナジードレインに対する抵抗力がゼロになっているので平らげるのは一瞬だ。


「喜べ。まだ終わりじゃない」


 スケルトンナイトとリビングアーマーを各30体ドレイン。

 一気にステータスが更新される。


 名前:トーカ・フジクラ

 レベル:30→31

 ギフト:エナジードレイン

 戦闘スキル:剣術Ⅱ、体術Ⅱ、身体強化Ⅲ、敏捷強化Ⅱ、剛力Ⅱ

 魔法スキル:雷魔法Ⅱ

 耐性スキル:電撃吸収Ⅰ、毒耐性Ⅲ、麻痺耐性Ⅱ、火耐性Ⅲ、打撃耐性Ⅱ

 特殊スキル:アイテムボックスⅡ、遠見Ⅰ、暗視Ⅰ、危機感知Ⅰ、並列思考Ⅱ

 余剰生命力:1557→1140→1210

 スキルポイント:2

 所持金:30万2200リラ

 貸金エレナ・シュラーデン:1350万リラ


 <収奪した構成要素からスキル「槌術Ⅰ」を再構築しました。スキル「槌術Ⅰ」を獲得しますか?Y/N>

 <収奪した構成要素からスキル「短槍術Ⅰ」を再構築しました。スキル「短槍術Ⅰ」を獲得しますか?Y/N>

 <収奪した構成要素からスキル「斬撃耐性Ⅰ」を再構築しました。スキル「斬撃耐性Ⅰ」を獲得しますか?Y/N>

 <収奪した構成要素からスキル「剣術Ⅰ」を再構築しました。スキル「剣術」は既に所持していますがレベルアップには要素が足りません。剣術スキル内にストックしますか?Y/N>


 ステータスウィンドに流れる文字列を一瞬で読み飛ばしてスキルの最適化を測る。

 ――急げ。

 槌術と短槍術をスキルポイントに変換。これでスキルポイントは3だ。

 ――和風デュラハンが「そうこなくては!」と感情を昂ぶらせているのが分かる。姿勢を低く、力を溜めている。急げ。

 斬撃耐性はそのまま。剣術はストック。次のレベルに必要なスキルポイントが0/2から1/2に書き変わる。これでスキルポイントを1振れば剣術をレベルⅢに上げられる。

 ――爆発的な脚力で地面を蹴り、こちらに突進してくる。地面が捲れ上がるほどの踏み込み。急げ!

 スキルポイントを使って剣術をⅢに、そして剛力もⅢに上げる。

 <「剣術」スキルがレベルⅢに到達しました。アビリティ――>

 ――迫る切っ先。ログが流れているが確認している暇はない。間に合えッ!!


 ギィン!

 和風デュラハンの大刀を初めて受け止めた。

 吹っ飛ばされることも、剣が弾かれることもない。勢いを殺しきれず僅かに後退したが、それだけだ。

 和風デュラハンは驚き、そして歓喜した。

 待ち焦がれていた恋人にやっと会えたような狂おしい感情が爆発している。


「やろうか」

『………ッ!!!』


 剣戟が暴れ狂った。

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