媚毒(エレナ視点)
油断した。
新ルートに入ってから罠らしい罠はなくて、このルートは魔物が厄介なタイプなんだと思い込んでいた。
普段だったらあんな圧力稼働式の罠なんかに引っかからないのに。
それだけならまだしも、その後も下手を打った。
噴出してきたガスを吸い込んでしまったのだ。
それから身体がおかしい。
ほんの衣擦れですら甘い刺激が走ってその場にへたり込みそうになるし、トーカから漂う汗の匂いに身体の奥が熱くなるのを感じる。今すぐトーカに身体を蹂躙されたい。めちゃくちゃに犯してほしい。そんないけない思考がばかりが巡る。
下着がはしたなく湿っているのを感じで自己嫌悪と羞恥心で死にたくなる。
違う。
これはさっきのガスのせい。絶対にそうだ。
ガスが晴れてすぐに敵が現れた。
かなり強い。トーカが押されてる。
トーカは私に逃げろと言った。体調を気にしてくれるのは嬉しい。でも足手纏いになっているのはすごく悔しい。
何もしなくても襲ってくる快楽が邪魔だ。こんなののせいでトーカの役に立てないなんて、真っ平ごめんだ。私は守られるだけのお姫様じゃない。トーカの隣に立てる相棒になりたいんだ。
思い付きで矢尻を脚に突き刺した。
目が覚めるような激痛。そして僅かだけど頭を覆っていた霧が晴れたような気がした。
ジンジンとした痛みが襲ってきて、いやらしく纏わりついていた快感が弱まった。
これなら戦える。
「私は、戦える!」
「……やれるんだな?」
「当然!」
「頼るぞ?」
「っ、うん!」
トーカからの信頼。それが嬉しくて静まっていたはずの熱が身体の奥で暴れ出そうとする。どうにか抑え込んだけどそういう不意打ちはやめてほしい。
ワーウルフゾンビを倒した後の記憶は曖昧だ。
気付いたら布団に寝ていて、脚の傷が治っていた。トーカが治療してくれたんだ。優しいな。なんて思っていたらまたあの熱と疼きが襲ってきた。それも、無理やりに抑えていたせいかさっきよりも強烈に。
そうするのが当然だとでもいうように指が勝手にそこへ伸びた。
「ん、はぁ…!」
瞬間、焼くような快感が脳髄を突き抜けた。
最近まで自分を慰めることなんてしたことがなかったから、あまり詳しいことは分からないけれど、異常な快感だと思った。
何度かトーカのことを考えて姉さんが寝ている間にしてしまった時より遥かに気持ちが良い。さっきのガスで身体がおかしくなってしまっているんだ。
「おかしいよ、これ…。こん、なぁ…変だよぉ…」
気持ち良い場所を何度も擦る。
「これ、すごぃ…、指止まんない…」
「あの、エレナ、さん?」
「っ!!??」
背筋が凍った。
快感に夢中になって忘れていたけど、ここはダンジョン。そしてトーカが傍にいるのに、私は何をしていたの?
「うぐゅっ、な、な、ぐしゅっ、ど、え、わた、なにを…?」
涙が溢れて口が上手く回らない。というか何を言えばいいんだろうか。
嫌われたくない。
幻滅されたくない。
トーカに見限られると思うとこれまで経験したことのないくらい強烈な恐怖を感じだ。
「ちが、これは、ちがくて…。私、そんないやらしい子じゃ…」
口をついて出たのは悲しいほどに無理のある弁明。
いやらしい子じゃない?どの口で言っているの?
例え変なガスのせいだったとしても、我を忘れるほどに自慰に耽るなんて…。
恥ずかしくて今すぐ消えてしまいたい。
そんな心境に陥っていると、ふわっと暖かい何かに包まれた。
え、トーカに抱きしめられ…た?
なんで?
「え…?」
「理由は後で説明するから、今は身を任せてくれ。頼む」
優しい声。
「え、え、」
でもそこから先は全然優しくなかった。
「ま、まって、とーか、え、なにを、ああ、だめ、だめっ、だめええええぇぇっ!!」
ううん、優しくはあった。
すごく優しい手つきで、何度も何度も、何度も!
何度も気持ち良くされた。
身体がばらばらになって狂ってしまいそうな、暴力的な快感の連続。
果てても果てても攻めるのを止めてくれない。
私のことなんて考えていないんじゃないかってくらい好き勝手に蹂躙された。
……正直、ちょっと、ううん、結構好きかも。もちろんトーカには言えないけど。
お漏らしのような大量の何かが下から噴き出た。暴力的な快感を伴っていて頭がおかしくなりそうだった。
なんでトーカがこんなことをしたのかを後から聞いて、理性では感謝しているけど感情が納得してくれないというか。
うん、もちろん罠を踏んだ私が悪いんだけどさ。
私、どんな顔してた?
どんな声出してた?
朦朧としていてほとんど覚えていない。でも、全く覚えていないわけじゃない。
それを思うともう、ほんと、消えてしまいたい…。




