↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移先で最初の職業選択を間違えてもリカバリーは効く  作者: 葵あさ
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/86

認識の差異

 新ルートの探索を始めて三日目。

 俺達は新ルート10層、ボス部屋の前まで辿り着いた。

 既存ルートのボス部屋にあった扉は何の変哲もない鉄製だったが、新ルートのボス部屋を遮るのは細かな彫金の施された銀の扉だ。いかにも()()()じゃないか。


 新ルートの1層から9層はアンデッド系の魔物が出現した。

 1~2層はアンデッドワーム。単体の強さはそれほど脅威ではないが、最大20匹ほどの群れで、しかも壁、天井、地面と四方から現れるものだから手に負えない。幸い素早い魔物ではないため逃げの一手で対処出来た。あの群れと正面切ってやり合うならもっと人数が必要だ。


 3~6層には腐敗した巨大カマキリの魔物、デスマンティスが出た。Cランク中位で力、速度共に中々だったが、基本的に単体でしか遭遇しなかったのであまり苦戦はしなかった。6層では2匹一組で現れたのは少し泡を食ったが、俺が前衛で盾役、エレナが後方から狙撃という役割分担が上手くハマって初戦以外は危な気なく済んだ。


 7~9層は少し雰囲気が変わる。通路はこれまでの1.5倍ほどに広くなり、天井が心無しか低くなった。出現する魔物はデスマンティスの上位種、アーマードデスマンティス。デスマンティスより一回り大きく、身体の所々を硬い鉱物で覆ったCランク上位の魔物だ。こいつが2~8匹でうろついている。

 動きはデスマンティスとほぼ同じだったので3匹程度までなら余裕を持って倒せたが、それ以上の群れを相手にするのは危険と判断し、4匹以上とかち合いそうになった時は迂回を選んだ。そのため攻略に時間はかかったが地図は中々詳細な出来になった。高く売れると良いんだけど。


 さて、新ルートでは戦闘が結構多かったこともあり、レベルが少しだけ上がった。


名前:トーカ・フジクラ

レベル:29→30

ギフト:エナジードレイン

戦闘スキル:剣術Ⅱ、体術Ⅱ、身体強化Ⅱ→Ⅲ、敏捷強化Ⅱ、剛力Ⅱ

魔法スキル:雷魔法Ⅱ

耐性スキル:電撃吸収Ⅰ、毒耐性Ⅲ、麻痺耐性Ⅱ、火耐性Ⅲ、打撃耐性Ⅱ

特殊スキル:アイテムボックスⅡ、遠見Ⅰ、暗視Ⅰ、危機感知Ⅰ

余剰生命力:1410→1480

スキルポイント:0→2

所持金:30万2200リラ

貸金エレナ・シュラーデン:1350万リラ


 まず身体強化がⅡからⅢに上がった。

 エナジードレインやスキルポイントを振った訳ではなく、純粋に習熟度が上がってのレベルアップだ。身体強化はパッシブスキルのため常時発動しているが、非戦闘時は低出力運転をしている。そうでなければ握手で相手の手を握り潰したり日用品を壊してしまって大変だ。戦闘時や有事になるとギアが上がって身体能力を数段上げてくれるかなり使い勝手の良いスキルなのでこれが強化されるのは嬉しい。

 同時期に獲得した剣術や体術、剛力なんかもレベルアップしてくれると良いのだが、こればかりは才能や努力量によってレベルアップに必要な時間が変わってくるので、いつになるやら目途も立たない。


 次に余剰生命力。

 新ルートに入ってそれなりの数の魔物をドレインしてきたが余剰生命力は微増、というかドレインした数に対してほとんど増えていない。アンデッドは生命力に還元出来る要素があまりないのかもしれない。そう言えばルーン平原で火魔法に焼かれた死体をドレインした時も余剰生命力が全然入らなかったっけ。肉体の構成成分が残っている活きの良い死体じゃないとうま味は少ないということのようだ。うん、この発言だいぶイカれてるな。絶対口にしないようにしよう。


 最後にスキルポイントだ。

 アーマードデスマンティスから鎌術Ⅱと産卵Ⅱがゲット出来た。近接武器は剣があるし、取り回しも癖が強そうだったので鎌術は捨ててスキルポイントに変換した。スキルポイントに還元すると、スキルと再構成した時と同様、同じ種類の魔物から再度スキルを獲得する確率は大幅に下がるので結構悩んだが。それと産卵、おめーは考慮不要だ。


 ポイントを使ってどれかスキルレベルを上げても良いかもしれない。何を上げようか迷うが、この考えている時間はかなり楽しいんだよな。


 そう言えば、みだりにステータスを開示しない、というのはこの世界での常識だ。

 特に奥の手を隠しておきたい戦闘職の間ではその傾向が強い。

 故に冒険者ギルドへの登録の際など、職員にレベルやスキルを問われて馬鹿正直に正確な情報を伝える者は、よほどの世間知らずでもない限りはいない。大体が「レベル10以上」や「近接系スキル所有」などとぼかして伝える。ギルドとしても詳細な情報を収集して万が一にも流出などさせようものなら流血沙汰は避けられないことを理解しているので、そんな感じの大まかな情報収集以上は踏み込まない。それがある種、互いの安全を守ることに繋がるのだ。

 本当のステータスは本人か、鑑定スキル所有者、あるいは大都市の教会やギルド、一部の王侯貴族などが持つ貴重な魔道具を使わないと知りようのない、非常にパーソナルな情報だ。

 そんなステータスだが、パーティを組んだ冒険者の間では取り扱いが開示派と非開示派に分かれる。基本的に非開示派の方が多いのは確かだが、昔からの友人同士だったり、恋人同士のパーティでは互いのステータスを把握している場合がある。ステータスを教え合うのは弱点を晒すのと同時に、互いに何が出来て何が出来ないかをより深く理解出来るということだ。連携、咄嗟の判断、引き際など、冒険者として重要な場面でパーティメンバーのステータスを把握しているか否かで大きな差が生まれることは必然。しかし相応以上の信頼関係がなければ開示しないもの、それがステータスだ。


 そしてそのステータスをエレナは創造魔法の所有を告げた日に開示してくれた。

 正確に言えば新ルートへのアタックを提案した後だ。

 借金返済のために出来ることはしておきたいと。

 このダンジョンアタックにかける強い意気込みが伝わってくるというものだ。

 エレナだけが開示するのは不公平となるので当然俺も開示すると言うと、もっと慎重になった方が良いと説教された。どの口で言っているのか。

 結局、互いのステータスを開示し、契約魔法で縛りをつけた。基本的に第三者への伝達はあらゆる手段において禁止。伝える場合は相手の同意が必要。契約破棄は両者の同意が必要。と、こんな感じだ。これでもまだ不服そうだったがどうにか納得してくれた。


 で、エレナの今のステータスがこちら。


名前:エレナ・シュラーデン

レベル:27

ギフト:創造魔法

戦闘スキル:弓術Ⅱ

耐性スキル:空腹耐性Ⅰ、睡眠耐性Ⅰ


 俺と比べるとだいぶすっきりしたステータスだが、所持スキルが3つというのはこの世界ではそこそこ多い方だ。それに空腹耐性と睡眠耐性を獲得したのが借金返済のために碌に休まずダンジョンに潜り続けていたからだと想像がつくのが何とも言えない。

 空腹や眠気でコンディションが下がりにくいから便利、と本人は笑っていたが、それを獲得するまでの経緯を思えばどう反応して良いか困る。


 弓術スキルは命中率と威力に補正がつく。

 弓を使っていると「なんとなくここで放てば当たるだろうな」という場面がたまにあるらしいのだが、弓術スキルがあるとそういう直感みたいなものがより働くようになるのだとか。

 それに威力補正もあるので高レベルの弓術スキル所有者は安物の弓で岩を穿つことも可能なのだそうだ。流石にそれはレベルⅣとかの領域の話らしいけど。


 そしてレベル。Cランク冒険者のレベルが大体25~35程度らしいので27のエレナはランク相応のレベルと言える。

 ただ少しだけ違和感があった。

 俺のレベルは今30。この世界に来た当初は1だったのが1年半ほどでここまで上がった。しかもその大半はここ数か月で、だ。であれば生まれてからずっとこの世界で暮らしていたエレナはもっとレベルが高くてもおかしくないのでは…と思ってしまう。

 しかしそれはゲーム的な常識に基づいた思考だと気付いた。

 レベルを上げるためには経験値が必要だ。経験値は訓練や実戦、とりわけ魔物を倒した時に多く手に入る。だが自分より格下の魔物を倒した時に得られる経験値はかなり少なくなるのだ。そのためレベルを上げようとするなら格上か、少なくとも同格の魔物を倒さなければ効率が悪い。しかしここは現実。同格を相手に戦い続けて負傷しない訳がない。下手をしたら再起不能の怪我を負ったり、悪ければ命を落とすこともあるだろう。格上相手なら尚更だ。

 そんなリスクを負ってレベルを上げる者は少ない。

 ある程度安全の確保できるレベルまで上げて、それ以降は格下を狩って金を稼ぐ。更に金を望む者はリスクを取って格上に挑戦するが、ゲームと違って蘇生薬などないのだからそういう者は少数派だ。

 事実、エレナも蟲狼迷宮の10層には挑戦しなかった。ソロでのボス突破はかなり難しいと判断したのだとか。その代わり低層で狩りまくってレベルを24くらいまで上げたそうだ。格下補正で取得経験値が減っているというのに、一体どれだけ狩ったのやら。しかもエルフなどの長命種はレベルやスキルが上がりにくいというのだから恐れ入る。

 まぁエレナにとっては金が目的だったのでレベルアップはおまけなんだろうけど。


 俺の感じている違和感はゲーム的な思考と現実のギャップから来ているみたいだ。

 ゲームなら多少相手が格上でも思い切って特攻決めたり、攻略サイトで効率的な狩り方法を探したり出来るが、この世界では当然ながらそんなことは出来ない。それを頭では理解しているつもりでも、どこか心の隅でゲーム的に考えてしまうのだ。

 もっとレベル上げしないの?と。

 ううむ、この世界に来た当初はもっと慎重だったはずだけど、こちらの生活に順応してきて余裕が出来たせいか、趣味が前面に出てきてしまっている気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。