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転移先で最初の職業選択を間違えてもリカバリーは効く  作者: 葵あさ
1章

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いいの?

 その日の深夜。

 俺は僅かながらに隠蔽効果のある夜間哨戒用の黒ローブを無断借用して戦場へ戻っていた。

 目的はもちろんエナジードレインの検証だ。

 昼間の戦争で俺の所属している訓練兵団は事実上壊滅した。明日以降、生き残った教官達は別部隊に編入されるらしいが訓練兵である俺には後方での支援任務が通達された。まあ他部隊の兵士と連携も取れず、大した戦力にもならない奴は雑用でもさせておけという判断なのだろうが正直ありがたい。ただ、ずっと後方に居たのではエナジードレインの検証が出来ないのでこうして戦いが一段落した時間を見計らって敵兵の死体を探しているというわけだ。

 やっていることは墓荒らしと大差ないがこれも自身のギフトを正確に把握するため、ひいては生存確率を上げるためだ。割り切って行こう。


 そんなこんなで敵兵の死体を数体発見してエナジードレインの検証を行った。

 結果は概ね予想通り。そして一部予想外。

 予想通りだったのはある程度時間が経過した死体でも問題なくエナジードレインが発動し、生命力を奪えたということ。

 次に火弾の魔法を喰らって白骨になった死体に対してもスキルを使用してみたが、こちらはほとんど生命力を奪えずに骨は灰になってしまった。恐らく収奪できる生命力がほぼ存在しなかったためだろう。だがこれでエナジードレインは肉体を構成している物質をエネルギーに変換しているという仮説の裏付けになった。

 最後に予想外の発見。

 それは――、


<保有生命力が上限値を超えました。以後取得する生命力を余剰生命力として貯蔵します>

<収奪した構成要素からスキル「剣術Ⅰ」を再構築しました。スキル「剣術Ⅰ」を獲得しますか?Y/N>


 それは四人目の死体をドレインした時のこと。不意にステータスウインドウが開き、そんな文章が表示された。


「ホワッツ?」


 変な声が出てしまったが仕方ないだろう。いきなり出てくるんだもん。

 で、なにこれ。

 余剰生命力として貯蔵?

 貯蔵して好きな時に取り出せるってことか。これは心強いな。余剰生命力さえあればいつでも回復可能ってことだろ?回復にどの程度の余剰生命力を消費するか、その費用対効果にもよるがかなり使える機能っぽいぞ。生命力とやらがどこに貯蔵されているのか気になるが魔法やスキルのある世界だ。そういうものと割り切っておこう。


 そして更にヤバいのが次のメッセージ。

 え、スキルを獲得出来るの?いいの?

 この世界のスキルは獲得条件がかなり厳しい。

 生まれつきギフトを所有している人間は極稀で数万人に一人程度。ほとんどのスキル所有者は後天的に獲得するのだが、そこには非凡な才能かたゆまぬ研鑽、スキルによってはその両方が必要になる。剣術は比較的に獲得が容易な部類ではあるが、それにしても数年の修行とある程度の才能がなければ獲得出来ない。

 スキルオーブというアイテムを使用することでスキルを獲得することも出来るが、ダンジョンで極稀に発見されるらしく市場には殆ど出回らないし値段も馬鹿高い。役に立たないスキルでさえ金貨100枚以上だし、有用なスキルなら高位貴族や大商人でもなければ手が出ないくらいの高級品だ。

 そんなスキルをドレインしただけで獲得出来るなんてちょっと狡いんじゃないか?まあ俺は気にせずに頂きますが。ありがとうございます。ご馳走様です。ってことでYをぽちっと。

 

<ステータス>

名前:トーカ・フジクラ

レベル:3→4

ギフト:エナジードレイン

スキル:剣術Ⅰ

余剰生命力:7


 おぉ…!ちゃんと剣術を獲得している。

 剣術の後ろについている数字はスキルレベルだ。

 Ⅰが初級、Ⅱが中級、Ⅲが上級、Ⅳが達人、Ⅴが極致といったところだ。

 軽く剣を振ってみるが、今までの付け焼刃とは明らかに動きが違う。身体をどう動かせば良いのかが自然と理解できるのだ。これはすごい。剣術Ⅰでさえこれほどの効果があるのか…。思いがけずスキルを獲得出来て嬉しい反面、恐怖でもあるな。この戦場にはもっと強力なスキルを所持している奴も沢山いるんだろうし。まぁそんな奴に出くわさないように真夜中に行動している訳だが。

 しかしこの『スキルを再構築』する効果って相手がスキル所有者だったら確定で発動するのか?それともランダム?その辺りは分からないな。けどいざという時のために余剰生命力は多めに確保しておきたいし、そのついでにスキルが手に入るかもしれないなら死体漁りにも精が出るってものだ。

 明日からも頑張って漁りましょうか!



 戦端が開かれてから5日が過ぎた。

 序盤は初日の作戦が功を奏した帝国が優勢だったが、3日目に入り王国側の友軍が動き出してから戦況が膠着した。なんでも白い鎧を纏った馬鹿みたいに強い騎士隊に手古摺っているらしい。

 ゴリラ教官は精鋭部隊を率いて暴れ回っているようだが、幸か不幸か白騎士隊とはぶつかっていないようだった。

 一方俺は昼間は後方で運搬や掃除、調理の手伝いなんかの雑用を行い、夜は戦場で死体漁りを、と中々にハードなスケジュールをこなしていた(まあエナジードレインの回復効果で体力的には全然平気なんだが)。お陰でちゅーちゅードレインは捗り、新たに幾つかのスキルを獲得した。それがこちら。

 

<ステータス>

名前:トーカ・フジクラ

レベル:4

ギフト:エナジードレイン

スキル:剣術Ⅱ、体術Ⅱ、身体強化Ⅱ、危機感知Ⅰ、剛力Ⅰ、暗視Ⅰ

余剰生命力:7→232


 相手が戦闘職ばかりだから戦闘に役立つスキルが沢山手に入ったよ。これにはトーカさんもニッコリです。


 体術は剣術の格闘版みたいな感じ。徒手空拳で戦うことは少ないと思うけど(戦争初日のあれはやむを得ずだ)、いざという時には役立つスキルだ。それにスキル自体に付随効果でもあるのか、身体の動き全般にキレが増したように思う。

 身体強化は腕力強化や脚力強化のように部分的に強化するわけではないため各部位ごとの効力は落ちるが、身体全体を強化してくれるお得パックのようなスキル。初日の敵兵との一騎打ちで地力不足は痛感していたからこのスキルは有り難い。

 危機感知。これは危険が迫ると直感的に分かるらしいのだが、今のところ発動していないのでどの程度の効果があるのかは不明だ。しかし有用そうだとは思う。

 で、剛力スキル。これは結構レアなスキルだ。名称の通り単純にパワーアップ系なのだが常時発動型の身体強化とは違い、随意発動型。つまりアクティブスキルだ。効力は身体強化の比ではないほど強力だが、発動中はかなりの勢いで体力を消耗するから使いどころが難しいスキルではある――が、俺にはエナジードレインで生命力を貯めておけるというチート機能が備わっている。余剰生命力を食い潰すことになるが発動時間を長引かせることが出来きた。これは使えるぞ。

 暗視は暗闇の中でも日中と変わらない視界を得ることが出来るスキル。これも墓荒らしの真似事をしている俺にはとても役立った。

 ちなみに剣術や体術のレベルがⅡになっているのは、死体から収奪した経験値が集積した結果レベルアップしたからだが、身体強化は獲得した時点でⅡだった。つまり死体のスキルレベルが低くても数を重ねればレベルアップ出来るし、元から高レベルのスキルを持った死体からスキルを奪えば、初めから高レベルのスキルを獲得できるということだ。これはずるい。まさにチート。ありがたく使わせてもらいます。


 そしてエナジードレインのスキル再構築効果だが、恐らくは確率で発動していると思われる。と言うのも以前運良く魔法使いの死体を発見してドレインしてみたのだが、魔法スキルは獲得出来なかったのだ。これで俺も魔法が使えるぞー!と内心舞い上がっていた俺の気持ちを返してください。

 まあ良いんだ。これからもこそこそちゅーちゅーしてスキルを回収しまくってやるんだ。既に思考は完璧に墓荒らしのそれだった。

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