↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移先で最初の職業選択を間違えてもリカバリーは効く  作者: 葵あさ
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/86

お姫様抱っこは普通もう少しロマンチック

 声のする方へ急ぐ。

 角を曲がると1人の少女を取り囲む男達。

 少女は何度か見かけたエルフだ。

 周囲の男達にも見覚えがなくもない。

 いつだったか岩鬼の洞窟のアドバイスをくれた…ええと、なんて名前だっけ?

 まぁそいつと、その仲間と思しき連中がエルフ少女に襲いかかるところだった。


 話の内容はある程度聞こえていた。

 それに炎狼の牙のシーナからエルフ少女の噂は聞いていた。曰く、悪徳商人に騙されて莫大な借金を負わされた、と。

 となれば今の状況も察しがつく。エルフ少女に欲情したボケカス共が身体と引き換えに借金関係の取り引きを持ちかけてお断りされた。んで逆ギレして襲いかかったってとこだろ。

 救いようのないクズだ。

 けど相手は4人。しかも記憶が正しければCランクだったはず。

 そんな格上を複数相手に戦えるか?答えは否。考えるまでもない。俺は自分の実力を過信したりしない。戦いは数だって兄貴も言ってた。いや、兄貴に言ったんだっけ?


 明らかに面倒事だ。でも見過ごす訳にもいかない。

 元々薄かった良心がこの世界に染まって更に薄まった感じのする今日この頃ではあるが、これから嬲られようとしている少女を捨て置いたとなれば流石に寝覚めが悪い。ミリーシアとにゃんにゃんしてる時に思い出して萎えるかもしれない。そんなの最悪だ。「疲れてるんですよ」とか優しく言ってくれそうだけどそれはそれでクリティカルダメージになる。うん、駄目だ。


 見捨てることは出来ない。

 されど正面から止める武力もない。

 ならば交渉といこうじゃないか。大丈夫、人間は理性の生き物だよ。


 まずは相手の名前を呼ぶところから。何でも人とは自分の名前を呼ばれると多少なりとも親しみや信頼を感じるのだとか。けど名前が思い出せないんだよなぁ。あ、悠長に思い出してる暇はない。男達が一斉に飛び出した。エルフ少女も矢を番えて闘る気だ。ええい、名前なんかどうでもいいわ!


「あっれー!?センパイ何やってんスかー!?」


 こういう時の万能選手、代名詞様。

 腹から出した声は意外とよく響いて若干恥ずかしかったが、全員の動きが止まったのでまぁ良し!

 警戒しながら「誰だお前?」的な顔をするセンパイにへらへら笑いながら言う。


「あれ、もしかして俺のこと覚えてないスか?ギルドで色々教えてくれたじゃないですかー」

「……ああ、あの時のルーキーか」


 おっと覚えてたか。

 けど名前は忘れてるっぽいな。失礼な奴め。


 俺が男達の仲間なのか、ただの知り合いなのか測りかねているエルフ少女は油断なく周囲を睨んでいる。

 男達もどうすべきか判断がつかずにセンパイを伺っている。


「久しぶりだな。もう蟲狼迷宮に来てたのかよ」

「ええまぁ。センパイのアドバイス通りちょっと冒険してみました。センパイはこんなとこで何を?」

「ああ…そうだな。ところで他のパーティメンバーはどうした?」


 そりゃソロで潜ってるとは思わないよな。

 平静を装って答える。


「もう少ししたら来ると思いますよ。俺、斥候で先に来たんで」

「そうか…」


 やや考えるセンパイ。

 そして――、


「殺せ!!こいつはEランクの雑魚だ!おまけにパーティメンバーとはぐれてやがる!」


 くっそ、そう判断したか!

 確か俺みたいな新人が斥候任せられるなんて信憑性ないよな!でもそれしか思いつかなかったんだよ!俺嘘とか吐けない人だからさ!

 エルフを囲んでいた1人が俺に向かってくる。


「死ねぇ!」

「うわっ!?」


 剣を躱して距離を取る。

 意外と鈍い剣閃だったので回避余裕だったがビビり散らかした風を装って言う。


「い、いきなり何するんスか。こんなのギルドに報告しますよ!」

「死人がどうやって報告すんだよ、馬鹿が!」


 高ランクだったら話し合いの余地もあったかもしれない。この手の連中は権威とか肩書に弱そうだもんな。

 まぁEランクだと油断してるのでそれはそれで好機だ。

 俺は懐から――実際はアイテムボックスから――煙玉を取り出して地面に叩きつけた。瞬間、濃密な煙が盛大に通路に広がる。効果時間が短く、蟲狼迷宮の魔物は視覚を封じても行動可能な種類が多いため売れ筋ではない、とランドは言っていたがこういう忍者っぽいアイテムは良い。浪漫があるよね。


「なんだ!?」

「くそ!何も見えねぇ!」

「慌てるな、見えないのは向こうも同じだ!」


 ところがぎっちょん。

 魔力探知で丸分かりである。

 意外だったのはエルフ少女もセンパイ達と同様に周りが見えていないということ。

 エルフって魔法得意なイメージあったから魔力探知も出来ると思ったんだけど。

 俺はエルフ少女の手を取り、


「こっちだ、走れ!」

「触らないで!」


 走り出そうとして、手を払われた。

 おいおいおいぃ!?

 今そういうことしてる場合じゃないから!煙幕だってそんなにもたないから!


「ああもう!ごめんね!?謝っとくわ!」

「え、きゃあ!?」


 エルフ少女を抱き上げ、いわゆるお姫様抱っこ状態で走る。


「離して!!」

「おまっ、状況的に助けたの分かるだろ!?大人しく、痛っ!?矢刺さってる!腕!痛った!お前覚えてろよ!?」

「うるさい変態!どこ触ってるの!」

「太ももと背中と肩くらいだろ!?」


 喚きながらもダンジョンを駆ける。

 身体強化と敏捷強化に加え、剛力スキルを発動させて脚力をブーストしているから荷物を抱えているとはいえかなりの速度が出る。

 煙幕で視界が塞がっている男達を置き去りにするのにさほど時間はかからなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。