再びのエンジェルリップと予兆
「こんばんは。貴方がトーカさん?」
「はい。スカーレットさんですか?」
「ええ、よろしくね」
ロビーに迎えに来たのは20歳前後の若い女性だった。
長くウェーブのかかった金髪にはっきりとした目鼻立ち。Gはありそうなバストとボリュームのある尻だが腰はキュっとくびれており、スタイルは抜群だ。身長も170cmくらいあるか。ミリーシアのプロポーションが日本人の理想を追及したような感じだとすると、スカーレットはアメリカ人の理想って感じだ。アメリカ人に知り合いいないから想像だけど。露出の多い真紅のドレスも良く似合っている。
「よろしくお願いしますね」
「ふふ、敬語なんてやめましょう?貴方と私はただの男と女。そうでしょう?」
なるほど、口調から距離を詰めていって遠慮をなくす訳か。
終始こちらを立てていたミリーシアとはまた違ったタイプだけど、これも良いな。
「了解、今夜はよろしくね。しばらく禁欲してたから自制できるかどうか。辛くなったら言ってほしい」
「へぇ?それは娼婦にとっては挑戦状ね。空になるまで搾り取ってあげるわ」
自信あり気に微笑むスカーレットに手を引かれて部屋に入る。
この世界、多くの娼館では上級娼婦には専用の部屋が与えられている。エンジェルリップもその例に漏れず、6人いる上級~最上級娼婦には専用部屋がある。ミリーシアの部屋は全体的にシックで観葉植物などが置いてあり、リラックス出来る空間だった。
対してスカーレットの部屋は解放感がすごい。部屋の中心に大きなベッドがあり、その横にはガラス張りのシャワー室。ガラスはこの世界だとかなり高価なので、それをふんだんに使っているのは店側からのスカーレットへの信頼だろう。これぐらいの投資をしても確実に回収できるという。
スカーレットは敏感だった。
どこを触れても快感を得て、性感帯を攻めようものならさほど時間をかけずに絶頂する。
テクニックで言えば確実にミリーシアに軍配が上がる。
しかしそんな彼女がエンジェルリップという高級店でNo2を張っているのには当然理由があった。
スカーレットは容易く絶頂する。だが体力と精力が常人離れしていた。
彼女は激しく絶頂しながらも腰を止めない。快感をもっと、もっと!と貪欲に貪っていくのだ。痙攣してきつく締め付けながらも延々とこちらを求めてくる感覚は、恐らく彼女以外では味わえないものだろう。
まさしく娼婦になるために与えられた恵体だ。なるほど、ミリーシアとジャンルは違うがどちらも素晴らしい。
スカーレットは絶頂する度にその長い髪を振り乱し、二つの巨大質量をバウンドさせる。半端ない迫力だった。迫力が有り過ぎて何度揉みしだいたか分からない。絶頂ついでに何度か失禁もしていたが問題ない。美女の聖水ならご褒美だ。対アンデッドの特殊効果も付くかもしれん。
スカーレットの無限激締めと、更に禁欲状態だったこともあり、口で1回、中で6回出したが、スカーレットは軽く20回は達していたと思う。最後は一緒に力尽きてお互いの体液でべちゃべちゃのベッドに気絶するように倒れたが、翌朝には「トーカさん、すごかったね。癖になりそう!」と笑っていたのだからとんでもない体力だ。そのまま朝の運動に突入してしまったのはマジで反省だ。他の嬢で同じことやったら出禁になってもおかしくない。自重せねば。
昨夜のスカーレットの宣言通りスッカラカンにされた俺は、晴れ晴れとした気持ちで店を出た。うん、ダンジョンでの成果も上々だし、素晴らしい時間も過ごしたし、めちゃくちゃ充実してるな。今日も良いことありそうだ。そう朝焼けの空を見上げて、視線を前方に向けた時だ。いつかのエルフが、依頼帰りなのか汚れの目立つ格好でこちらを見ていた。それはそれは汚物でも見るような目で。
おおん…。
◇
エンジェルリップの出入口でトーカを見送った後、スカーレットはロビーの椅子に座り込んだ。この時間のロビーは客を見送った娼婦がちらほらと休んだり、娼婦同士でおしゃべりをしていることが多い。
スカーレットは専用部屋があるので普段なら自室に戻るのだが、今日に限ってはロビーで一休みしたい気分だった。
昨夜は20回以上絶頂していたし、今朝も時間の限り快楽を貪り5回ほど絶頂した。
快楽を得つつ高額な収入を得、その上承認欲求も満たせるこの仕事をスカーレットは天職だと思っていた。
気持ち良いことは好きで、幸い何度でもイける体質だ。日々のトレーニングと食事コントロールの成果で体力も人一倍あるから何時間でもすることも出来る。大概は相手が満足するかダウンするまで全開で求め合うのが彼女のスタイルで、それを求める客が大勢いるためこの人気店でNo2の地位に立つことが出来た。
しかし彼女にも限界はあった。そのことに今回気付かされた。一晩中ヤリ続けることは出来ない。その前に体力の限界が来る。アソコは大丈夫だった。まだ出来ると言っている。なら鍛えるのは体力だ。
「ジョギング増やそうかしら」
「相変わらずストイックですね、スカーレット」
「あ、先輩!先輩も仕事終わりですか?」
「ええ、今し方お見送りをしてきました」
スカーレットに声をかけたのはミリーシアだった。
店の売上ではNo1とNo2の二人だが、二人の間に対抗心や敵愾心はなく、むしろ気の置けない友人同士、あるいは仲の良い先輩後輩といった関係だった。
隣に座ったミリーシアに話を振る。
「そうだ、聞いて下さいよ。今日のお客さん、先輩が前言ってたトーカさんだったんですよ」
「あら、トーカ様が?良かったですね。優しかったでしょう?」
「それー!先輩トーカさんのこと優しいって言ってたじゃないですか!もうひっどい目に遭ったんですからね!」
そう言うスカーレットの言葉に負の感情はまったく籠っていない。本気で言っていないことは明らかだった。ミリーシアは苦笑しながら返す。
「冗談でもお客様を悪く言っては駄目ですよ」
「うー、でも一日で10回くらい出すんですよ!?どんな精力なんですか!わたしも数えきれないくらいイっちゃったし、流石に足腰ガクガクで立ってるのも辛いんですから。一応トーカさんの前では何でもない風に装ってたけど、アレ、わたし以外だったら壊れちゃいますよ?先輩よく無事でしたね」
「それはトーカ様が私たちの限界を見極めているんですよ。私はもっと少なかったのですけど、あの時は少し体調が悪くて、それを察して手心を加えて下さったんです。きっと他の子を抱く時も、その子に合わせてくれるはずですよ」
「えー、そんな器用な男いますかね?」
「器用さもあるでしょうけど、気配りと観察眼が優れているのね。敏感な部分はすぐに見つけられてしまう反面、敏感過ぎて辛い時にはそこを触らないようにしてくれたのではないですか?」
「あ、そう言えば…」
「ふふ、実を言うとね、私も癒して差し上げる立場なのに不覚にも身を委ねてしまいそうになりました」
「先輩がそういう事言うの珍しいですね。わたしはお互いに気持ち良くなれれば良いってスタイルだけど」
「それぞれで良いと思いますよ。同じような女ばかりではお客様も飽きてしまわれるでしょう。――コホッコホッ」
「大丈夫ですか?風邪流行ってるみたいですよね。ウチの店でも何人かダウンしてるし」
「そう、ですね。お客様に感染す訳にはいきません。今夜のお仕事まで時間もありますし、お薬を飲んで安静にしておきますね」
「後で差し入れ持っていきますよ」
「感染るといけないから大丈夫ですよ。どなたか黒服の方にお薬を届けて頂くよう伝えてもらえますか?」
「はーい」
軽い咳をしていたミリーシアだったが、その日の昼には高熱を出して寝込んでしまった。
そして同じ症状を発症している娼婦が、エンジェルリップだけでも10人に及んだ。




