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転移先で最初の職業選択を間違えてもリカバリーは効く  作者: 葵あさ
1章

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キンググラスウルフ

 蟲狼迷宮11層からは狼系の魔物が出る。

 11~15層は淡い緑色の毛を持つ小型のグラスウルフ。Dランク中位で素早い動きと連携が特徴だが、それ以外に特筆すべき点はなく特別苦戦せずに倒せた。

 16~19層は俊敏な動きをするソニックウルフと、グラスウルフの上位種であるグレートグラスウルフが出た。ソニックがCランク下位、グレートはDランク上位なので群れで来られるとやや苦戦したが、ソニックから『敏捷強化』スキルを獲得してからはだいぶ楽になった。やはり俺は身体能力が足りていないようだ。視えていてもどうしても身体が追いつかないことが多い。

 という訳でしばらくボスには挑まずに16~19層で敏捷強化のスキルレベルを上げることにした。グレートグラスウルフからはスキルが獲得出来なかったのでそっちはドレインせずに素材行きだ。魔石はもちろん、毛皮と牙と爪も売れるので利益としては結構良い感じだ。


 そんな感じで3日ほど周回を続けた結果がこちら。


名前:トーカ・フジクラ

レベル:13→16

ギフト:エナジードレイン

戦闘スキル:剣術Ⅱ、体術Ⅱ、身体強化Ⅱ、敏捷強化Ⅱ、剛力Ⅱ

耐性スキル:毒耐性Ⅲ、麻痺耐性Ⅱ、火耐性Ⅰ

特殊スキル:アイテムボックスⅡ、遠見Ⅰ、暗視Ⅰ、危機感知Ⅰ

余剰生命力:1001→1270

スキルポイント:2→2.5

所持金:270万6500リラ


 敏捷強化はレベルⅡまで上がったが、それ以降は上がらなかった。

 結構な数のソニックウルフを取り込んだはずなのだが、なかなか敏捷強化スキルが上がらない。同じスキルは吸収できる可能性が低くなってしまうのだろうか?

 ともあれレベルⅢまでの道のりは遠いようだ。

 スキルレベルⅢからは上級と呼ばれる領域だし、中々上がらないのかもしれない。 


 ちなみにステータス標記が一部変わっていることにお気づきだろうか。

 スキルも増えてきたし、ソート機能とか欲しいなと思っていたらこんな感じになっていた。種類で分けてくれるのも分かりやすいし、おまけに所持金まで表示してくれるようになったのでめちゃくちゃありがたかった。今まで何となくでしか所持金分からなかったからな。

 リラというのはルカ共和国の通貨単位だ。基本的に金貨何枚とか、銀貨何枚と言うが、正式にはリラと呼ぶらしい。金貨一枚が1万リラな。

 ちなみに帝国通貨に表示変更すると259万8000ゼブラになった。帝国通貨の方が少し価値が高いようだ。まぁあの国は年中戦争してるから通貨価値の変動も大きいみたいだけど。


 さて、俊敏強化はこのくらいでいいか。今日はまだ余力もあるし、このままボス戦をしていこう。


 ボスの扉を開けて入場すると、ボス部屋の中心には一匹の狼がいた。10層は取り巻きがいたがここはボスだけだ。

 蟲狼迷宮20層のボスはキンググラスウルフ。グレートグラスウルフの上位種でCランク中位の魔物だ。3mほどの巨体に深緑の体毛、牙も爪も大きく、あれが命中したら防御系スキルのない俺はひとたまりもない。その上ソニックウルフ並みの敏捷さも兼ね備えている。

 Cランク冒険者が2~4人パーティで挑む相手らしいが、こちらは当然一人だ。

 それでも負ける気は全然しないのだが。


「ハズレかー」

「グルウウアア!!」


 俺の落胆を馬鹿にされたと受け取ったのかキンググラスウルフが大きく吠えてこちらに飛び掛かってきた。速い!…けどソニックウルフと大差ない速度なら問題ない。元々速さは目で追えていたし、敏捷強化スキルを獲得した今、対応も充分可能だ。


 巨体で風を切り裂いて突貫してくるボスを回避し、後ろ足の付け根を斬りつける。


「ギャウ!?グルアアアッ!!」


 浅い。毛皮が丈夫なのかあまりダメージがなさそうだ。

 しかしボスはイラっとしたのか鼓膜が悲鳴を上げるほどの咆哮を放った。


「ぐっ!?」


 身体が重い。これは威圧スキルか!

 重力が増したような感覚が襲い、動きが鈍くなる。

 このデバフを受けたままではキンググラスウルフの攻撃は躱せない。

 これは結構キツイ。――対策をしていなければ。


 ガリっと口の中に入れておいた丸薬を噛み砕く。

 その瞬間口内に苦味と渋みを凝縮したクソ不味い味が広がる。すぐに「ぺっ」と吐き出すが口の中は地獄のままだ。

 しかしそのお陰で威圧の効果は消えた。

 キンググラスウルフが威圧を使ってくるのは調べていたので、その対策として気付け薬を用意していたのだ。ランドのお勧め商品でレベルⅡまでの威圧は解除してくれるし、使った後しばらくは低レベルの威圧を受け付けないというおまけ付きだ。難点は一つ銀貨8枚とそれなりの値段がすること。そして口の中が地獄になること。


「あー、不味い。想像してた10倍は酷い味だ」

「グルル?グルアアアッ!!」


 こちらの様子に違和感を覚えたのか再度威圧を放ってくるが、気付け薬のお陰で今は効かない。


「ははっ、威圧を無効化出来れば単にでかいだけの犬っころだな」


 まぁ速くてでかくて攻撃力も強いので油断はしないけど、負ける要素はないよな。

 挑発に乗って怒り心頭といった様子のボスを仕留めたのはそれから20分ほど経ってからだった。相手の攻撃は一撃ももらっていないのだが、こっちの攻撃力が弱くて時間がかかってしまった。結局は剛力スキルで止めを刺した。武器を新調してもいいかもしれないな。

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