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転移先で最初の職業選択を間違えてもリカバリーは効く  作者: 葵あさ
1章

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路地裏の襲撃

 リディアから蟲狼迷宮の情報提供を受けた俺は、消耗品の補充のためランドの店に向かっていた。

 大通りを抜けて薄暗く人気のない路地裏に入る。

 ランドの店に行くにはこの道を突っ切るのが近道だ。ランドにはあまり治安が良くないので使わない方が良いと言われたが、この真昼間なら犯罪者だって襲っては来ないだろ。


 と、気楽にこの道を使っていたのだが、その考えは間違っていたようだ。

 背後から声をかけられた。


「おい、ちょっと待てよ」

「ん?なにか?」


 振り返ると柄の悪そうな男が三人、ニヤニヤと笑いながら立っていた。

 恰好からみて冒険者のようだ。剣士が二人、斧使いが一人。パーティだとしたら全員前衛ってバランス悪くね?ソロの俺が言えたことじゃないけど。


 リーダーらしき斧使いが意地の悪そうな顔をして言う。


「なにか?じゃねぇよ。お前、リディアに言い寄ってるらしいな」

「リディアさん?そんなことはしてないけど」

「とぼけても無駄だぜ。ギルドで見てた奴がいるんだ。俺らはマジメな冒険者だからよ、そういうクズは見逃せねぇのよ」


 その通りだぜぇ、と仲間の剣士達がゲラゲラ笑う。

 斧使いが続ける。


「けど俺らは優しいからな、お前が反省して頭を下げるなら許してやるよ。ただ反省の証拠として有り金全部置いてけ。ついでにその腰の剣もだ」


 あー、なるほど?

 つまりこいつらは追い剥ぎか。

 ギルドで俺のことを見かけて適当な理由をつけて小遣い稼ぎをしようとでも思ったのか。


「なぁ、こんなことギルドにバレたら不味いんじゃないのか?」

「はっ、てめぇが黙ってりゃバレねぇだろうが!良いからさっさと金を出せ!ギルドにチクったら殺すぞ!」

「抵抗しようなんて思うなよ?俺らDランクだからよ、殺しちまうぜ?」

「ヒヒ!殺してから身包み剥いでもいいんだぜ?」


 おっふ。リディアが何たらっていう建前はどこ行った?

 まぁいいか。


「分かった。ほら、これでいいだ、ろ!」

「うっ!?何しやがッ!?ぐぅっ!?」


 アイテムボックスから取り出して斧使いの顔面に投げつけたのは財布…ではなくにおい袋だ。

 嗅覚の良い獣系魔物対策に万屋で購入したもので、衝撃が加わるとアンモニアのような強烈なにおいを発生させるのだ。

 それを顔面に受けてひるんだところを急接近、鼻に拳を一発入れ、のけ反ったがら空きの息子に蹴りを叩きこむ。ぷちゅ、と何かが潰れる感触。あーあ、ご愁傷様ぁ。

 罪悪感?知らない子ですね。

 帝国での戦争と違法奴隷商との戦いで俺の倫理観はブラッシュアップされた。

 すなわち、やられたらやり返す→やられる前にやれ→判断に困ったら取り合えずやってしまえ。


「てめぇ!?」

「死にてぇみたいだな!」


 残った剣士二人が剣を抜く。

 怖いね。怖いから盾を装備しよう。


「よっこいしょ」


 俺は倒れて痛みに藻掻く斧使いを左手で持ち上げて盾にする。レベルと身体強化のお陰で大人一人くらいなら片手で持てる。もう片方には落ちていた斧を装備だ。トーカ・フジクラ重装モード!


「ひ、卑怯だぞ!」

「冒険者のプライドはないのか!?」


 なんというブーメラン。

 ゴミを駆除するのに手段は選ばない。

 一人は不意打ちで戦闘不能だが相手はまだ二人いる。しかも俺と同じDランクだ。そう考えるとちょっと緊張してきた。ここはゴリラ式緊張緩和法を実践しよう。

 というわけで行くぞ。

 

「イひひひひぃ!」


 笑いながら盾を前に出しながら突撃する。

 緊張で足が竦み萎縮してしまう時に効果を発揮するのがこのゴリラ式緊張緩和法だ。端的に言えば大声で笑うだけ。

 呼吸による集中法は他に何も考えず極限まで集中力を高め効果がある。一方、このゴリラ式緊張緩和法は無理やり笑うことで余計な力が抜けて身体を強制的にリラックスさせ、本来の能力を出すことが出来るようになる…らしい。納得いくような、いかないような理屈だが、それでも実際に効果があったので俺にはそれで充分だ。ありがとうゴリラ。アンタの教えは為になってるよ。けど俺の笑い方が特徴的だったらしく軍の同期連中は引いた顔してたし、ゴリラにも「どうにかならんか」と言われた。そんなに変か?

 

「ひぃ!?化け物!?」

「な、なんだこいつ!?狂ってやがる!」


 失礼な。というか冒険者がビビッてんじゃないよ。情けない。


「ちょ、待て――ぎゃ!?」

「く、くそ!やってやる!」


 俺の()に攻撃するか迷っていた片方の頭を斧でかち割り、残った一人の攻撃は盾で防御。

 ずぶっ!と剣が突きこまれるが貫通はしなかった。一応仲間だし手加減したのかな?お陰で斧使いは死ぬに死ねずに苦しんでいるが、俺の知ったことじゃない。

 仲間を突き刺したことに動揺しながらも剣を引き抜いたところに盾をプレゼント。

 態勢を崩して倒れ込んでしまう剣士。剣は盾の下敷きになっておりすぐには取り出せないようだ。ありゃ、これはもう終わりだねぇ。


「ま、待て!見逃してくれ!俺には結婚したばかりの妻がいるんだ!」

「マジ?結婚おめでとー」

「ぐびゃ!」


 言いながら斧で首を切り裂く。

 血が噴き出て男は力無く倒れた。

 奥さんがいるのに追い剥ぎなんてやってるんじゃないよ。嘘っぽいけど。いや、どっちでも良いんだけど。興味ないし。


 さて、鼻がひしゃげ、金〇が潰れ、腹を剣で突き刺された斧使いを蹴り飛ばして仰向けにする。


「なんで俺を狙ったんだ?金目当てならもっと良い獲物いるだろ」

「ぐ…くそが。くたばれ…」


 見上げた根性だけど面倒くさいな。

 いくら人気のない場所だからと言っても人通りが皆無なわけじゃない。

 根気強く話を聞こうにも人が来たら説明が面倒だ。

 別に理由なんてどうでもいいかという気持ちになってきた。


「あっそ、じゃあバイバイ」

「ま、待て!俺を殺したらあぎょ…!」


 斧使いもさくっと首を掻っ切って殺す。

 これで路地裏には死体が三つ。こんなの放置したら善良な市民の皆さんの迷惑になる。

 なので死体から金目の物を取り出して…ほう?まぁまぁ持ってるじゃん。

 死体はドレインでミイラ化させてからアイテムボックスにポイ。生き物じゃないから収納できるんだよね。これで証拠隠滅…じゃなくて清掃終了。ボランティアした後って気分良いよね。

 死体はダンジョンにでも放置すれば証拠なんて残らない。

 おっと、スキルの獲得もあるみたいだ。


 <収奪した構成要素からスキル「斧術Ⅰ」を再構築しました。スキル「斧術Ⅰ」を獲得しますか?Y/N>


 斧術は正直要らんかな。威力あるけどリーチ短いし使い勝手イマイチそうなんだよな。

 そう言えばスキルの獲得を拒否したらどうなるんだ?やってみるか。


 <「斧術」の獲得をキャンセルしました。スキルポイントを0.5獲得しました>


 スキルポイントとな?


 <ステータス>

 名前:トーカ・フジクラ

 レベル:8→9

 ギフト:エナジードレイン

 スキル:剣術Ⅱ、体術Ⅱ、身体強化Ⅱ、危機感知Ⅰ、剛力Ⅱ、暗視Ⅰ、アイテムボックスⅡ、遠見Ⅰ

 余剰生命力:851→886

 スキルポイント:0.5


 ほぅ?

 ステータスにスキルポイントの項目が追加されている。

 なんだろうね?

 と、スキルポイントを凝視していると追加メッセージが現れた。


 <スキルポイントを消費してスキルレベルを上昇させますか?Y/N>


 マジか。

 スキルポイントでスキルレベル上げられるんか。

 これはかなりぶっ飛んだ仕様だな。不要なスキルをポイントに還元して有用なスキルの強化が出来るってことだろ?

 よく見ると保有スキルの横に0/1や0/2という記載が追加されている。

 レベルⅠスキルの横には0/1、レベルⅡスキルの横には0/2だ。

 これって次のレベルに必要なスキルポイントってことだよな。0.5だと何も上げられないのか。今後は要らないスキルを獲得したら積極的にポイントに還元していこう。戦力強化がかなり捗るぞ。


 ふむ、いきなり絡まれて面倒だったが思いの外収穫が多かったな。

 スキルポイントはもちろんだが金もうはうはだ。

 斧使いが大金貨を結構持っていたので金貨にして60枚分くらい手に入った。パーティの共有資金だったのかな。

 装備は足が付く可能性があるから別の街で売るにしても金貨40~50枚にはなるんじゃないだろうか。


 ふふふ、こんなに稼げるなら追い剥ぎとかゴロツキにはもっと来てもらってもいいかもな。


「しかしゴリラ式緊張緩和法はどこ行っても評判悪いな。封印するか…?」

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