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転移先で最初の職業選択を間違えてもリカバリーは効く  作者: 葵あさ
1章

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15/86

和風っぽい国もあるらしい

 クルト達と別れた翌日、俺はまた岩鬼の洞窟を訪れていた。

 余剰生命力の貯金とあわよくば新スキルの獲得が目的だ。蟲狼迷宮に挑む前に万全の状態にしておきたい。エナジードレインは一人の時じゃないと出来ないからな。

 11層から19層まで駆け足で進み、出会ったロックゴブリン達はサクサクと潰していく。

 うーん、余剰生命力は貯まるけど新スキルは出ないな。

 ボスに期待するか。

 という訳でまたやってきました、ボス部屋。


「こんちゃー、やってる?」


 居酒屋感覚で入室。

 一瞬唖然としたソルジャー、アーチャー、モンク達だがすぐに侵入者だと気付いてこちらに向かってきた。

 アーチャーの弓とモンクの回復魔法が少し厄介だが、弓は矢尻の向きを見れば回避余裕だし、ソルジャーの剣術は大したことないので無視。モンク目掛けてダッシュ、アンド、首スパン。アーチャーの二射目を撃たせる前にモンクの持っていたスタッフを投擲。身体強化と剛力を重ね掛けした膂力で放たれたスタッフはアーチャーの喉に突き刺さり、そのまま後ろ向きに倒れた。

 残ったソルジャーが仲間二匹の死に「え?え?」という感じで戸惑っているのが少し滑稽だ。大丈夫だよー、すぐに仲間の元に送ってあげるからねー。

 という訳で接近して手首、脇、首の順で素早く斬りつけて撃破、と。うーん、歯応えがない。


 さてさて、ボスからはスキル出るかな?と早速エナジードレインを発動。

 ソルジャー…スカ。まぁ剣術は持ってるし。

 モンク…スカ。くそ、回復魔法は欲しかった。

 アーチャー…お、当たりだ!


 <収奪した構成要素から「遠見」スキルを再構築しました。「遠見」スキルを獲得しますか?Y/N>


 イエスイエス!

 どうやら遠見はその名の通り遠くが見やすくなるスキルみたいだ。

 障害物がなければかなり遠くまで見える。

 俺は遠距離系のスキル持ってないから微妙か?いや、その内魔法スキルとか獲得できるかもしれない。そうなったら遠距離からの狙撃…。これは良い。うん、なんかかっこいい。はよ魔法スキル来い。


 ステータスは現時点でこんな感じ。


 <ステータス>

 名前:トーカ・フジクラ

 レベル:4→7

 ギフト:エナジードレイン

 スキル:剣術Ⅱ、体術Ⅱ、身体強化Ⅱ、危機感知Ⅰ、剛力Ⅰ→Ⅱ、暗視Ⅰ、アイテムボックスⅠ→Ⅱ、遠見Ⅰ

 余剰生命力:134→253


 ダンジョンで狩りをしているお陰でレベルが結構上がった。

 ゴリラ教官と比べるとまだまだ雑魚だけど、成長が見て分かるのは楽しいな。

 それと使用頻度の高い剛力とアイテムボックスがⅡに上がっていた。

 剛力は燃費そのままでより強い力を出せるようだ。

 アイテムボックスは収納容量が増えた。大き目の旅行鞄八つ分くらいか。結構入るな。今までは着替えや日用品を入れたら空きがあまりなかったが、これで魔石や武具を憂いなく回収できる。金策が捗るぞー。お、しかも温度調節機能がついた!これは嬉しい。

 俺を誘拐した違法奴隷商達から慰謝料として現金を徴収したので余裕がない訳じゃないけど、金はいくらあっても困らないしな。小市民としては残高の数字が心の余裕に直結するのだ。

 けどエナジードレインすると魔石も魔物素材も駄目になる。これはトレードオフなので仕方ない。これまでの経験上、どうやら死体からスキルを獲得するにはある程度元の形を保っている必要がある。というか体積か。上半身だけの死体からはスキルを得られないが、腕や足がない程度なら大丈夫。それと魔物相手なら魔石も重要そうだ。今までは金になる魔石を回収してからドレインしていたがスキルの獲得はできなかった。それが今回試しに魔石ごとドレインしたら得られた。もうしばらく検証は続けるが、恐らく魔物のスキル獲得には魔石ごとっていうのが必須条件、あるいは確率を上げる要因になっていそうだ。


 岩鬼の洞窟に出る魔物は下級のゴブリンばかり。素材として使える部分がないから、回収できるのは魔石と武具だけだ。だが武具は粗悪品なので大した値にはならず、収入源として期待できるのは魔石のみ。蟲狼迷宮の方がよほど稼げる。ただいきなり暫定Cランクダンジョンに行くのは怖いのでもう少しレベル上げと余剰生命力を貯めてからにしよう。

 ソロだと不測の事態に対処出来ないかもしれないからな。保険は大事だよー♪



 岩鬼の洞窟をマラソンすること二日。

 11層~20層を6周ほどした。途中からは走りながら敵を斬り殺して、そのままエナジードレインして、っていうのを繰り返していたらめちゃくちゃペースが上がった。

 うん、途中で新人パーティと思しき4人組に見られた時は不味いと思ったけど、一瞬だったしこっちの顔は見えていないはず。帝国軍から借りパクした夜間哨戒用の黒ローブも着てたし大丈夫大丈夫。


 さて、そんなこんなでエナドレマラソンの結果がこちら。


 <ステータス>

 名前:トーカ・フジクラ

 レベル:7→8

 ギフト:エナジードレイン

 スキル:剣術Ⅱ、体術Ⅱ、身体強化Ⅱ、危機感知Ⅰ、剛力Ⅱ、暗視Ⅰ、アイテムボックスⅡ、遠見Ⅰ

 余剰生命力:253→851


 ここではもうレベルは上がらなそうだ。

 RPGなら雑魚を沢山倒しても経験値が貰えて、延々と雑魚狩りしていればいずれレベルをカンストさせる事が出来る。しかしこの世界の仕様は違うみたいだ。あまりにも格下の相手を倒してもほとんど経験値は入らないのだ。この2日間で100体以上のロックゴブリンを倒したが上がったのは1レベルだけ。悲しいね…。余剰生命力は増えたので無駄骨ではないけど。それにゴブリンの武具も一応拾っておいた。二束三文でもないよりはマシだ。

 という訳で岩鬼の洞窟は卒業かな。


 俺はゴブリンの武具を買い取ってもらうために武器屋を訪れた。

 ゴーシュ武器店。表通りから少し外れた場所にあるそこは、こじんまりとした店構えだが店主の目利きが良く、質の良い武器が揃っているらしい。ランドからの情報なので信用していいだろう。

 そんなきちんとした店でゴブリン武具が売れるのか?という疑問もあったが、低品質の武具は武器屋から鍛冶屋へ流れるらしい。鋳溶かして再利用するんだとか。鍛冶屋は個人からの買い取りはしていないので、売るなら武器屋か防具屋になるのだ。


「ちわーっす」

「らっしゃい。買い取りか?」

「良く分かりましたね」

「そりゃ、そんなでけぇ箱抱えてたらな」


 苦笑するのは40代後半くらいのマッチョなおっさん。店主みたいだ。

 髭がダンディですね。頭はツルツルだけど。

 ランドに借りた木箱にはゴブリンの落とした剣や弓、スタッフ、防具がぎっしりと詰まっている。アイテムボックスから出す訳にはいかないから偽装だ。

 箱をカウンターに置くと店主が中身を取り出して見分しだした。


「こりゃ岩鬼の洞窟産か。随分あるな」

「んー、しばらくため込んでたんで。全部の買い取りは難しいですかね」

「いや、大丈夫だ。鍛冶屋も纏めて欲しがるから丁度良い。まぁどれも低位品質だからあんま期待すんなよ?」

「全然大丈夫です。あっても荷物になるんで」

「だろうな。どれ、査定するからちょっと待ってろ」

「店の中見ても?」

「おう。ついでに何か買ってけ」

「安くて良いのがあれば」

「馬鹿野郎。良い武器は高けぇんだよ」


 そりゃそうだ。けど掘り出し物を見つける楽しみもあるんだよな。良い武器だけど価値が分からなくてめちゃくちゃ安く売られてた、とか。まぁこの店主は目利きが評判だっていうから、そんなことにはならないんだろうけど。

 武器は色々ある。

 ロングソード、ショートソード、短剣、大剣、レイピア、ショーテル、長弓、短弓、棍棒、槍、鉤爪、モーニングスターらしきものまで。


「大剣は…重いな」


 試しに大剣を持ってみる。

 身体強化のお陰か問題なく振れるがどうしても大振りになって隙が生まれる。

 これを両手に持って振り回す筋肉ゴリラがいるらしいですよ。化け物だね。


「っと、これは」


 見つけたのは刀身が50cmほどで反りのある片刃の剣だ。


「脇差?」


 なんでこの世界に脇差が?

 俺の独り言が聞こえたようで店主がこちらにやって来た。


「あんたヒノモトの人かい?」

「ヒノモト…?いや、違いますけど」

「なんだ、じゃあ脇差なんてよく知ってたな」

「たまたま見たことがあったんで。ヒノモトってどの辺りにあるんですか?脇差はそこで作られてるんですかね?」

「ヒノモトはずっと東だよ。レイバス帝国の北東、エルネスト王国から船で行けるんだったか。小さい島国だが刀剣の技術はかなり発展してるみたいだな。ヒノモトの剣は刀って呼ばれててな、脇差はその一種だ。俺の知る限り刀を作ってるのはヒノモトだけだな。エルネストじゃ似たような剣で曲剣ってのがあるが、まぁ別物だ」


 刀を作っているヒノモトか。なんか日本みがあるんじゃないか?

 行ってみたいけど遠いなぁ。俺が元々いたレイバス帝国の更に向こうで、しかも海を渡らないと行けないんだもんな。ついでにレイバス帝国に足を踏み入れたくはないし、行くなら迂回するから更に長旅になる。飛行機があればすぐなんだろうけど、この世界には飛行船すらない。うん、駄目だ。

 日本っぽい香りのするヒノモトに行くことを諦めた俺は店主に尋ねる。


「買い取り、全部でいくらですかね?」

「品質は下の下ばっかだが数が多かったからな。金貨3枚と銀貨4枚でどうだ?」


 金の価値は大体以下の通り。


 鉄貨…10円

 銅貨…100円

 銀貨…1000円

 金貨…1万円

 大金貨…10万円

 ミスリル貨…100万円

 大ミスリル貨…1000万円


 これはルカ共和国の通貨だが、レイバス帝国もほぼ同じ価値だった。向こうはミスリル貨じゃなくて白金貨を使ってるらしいけど。まぁ当然見たことはない。

 もちろん見た目は違う。レイバス帝国は皇帝や有名貴族の顔が掘られており、ルカ共和国では国内に多く咲いている花が掘り込まれている。


 閑話休題。


 30個ほどの武器防具を持ち込んで3万4000円とはかなり安い。

 だがゴブリンの装備は最下級のものだし仕方ないか。


「それで大丈夫です。それと、この脇差の値段は?」

「ミスリル貨8枚だ。長さ的に予備武器だが、切れ味は抜群だしそうそう手に入らない品だからな」


 800万円…。

 違法奴隷商から巻き上げたり魔石を売ったりで手元には大金貨8枚分の金はあるが、流石に手が出ない。日本刀とかかっこよくて惹かれるんだけどな。残念だ。

 買い取りだけしてもらい俺は店を出た。

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