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転移先で最初の職業選択を間違えてもリカバリーは効く  作者: 葵あさ
1章

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血祭り?

 翌日は早朝から岩鬼の洞窟に挑戦していた。

 転移陣を使用して11層からの攻略だ。ここから下の層はアースゴブリンが複数体で闊歩している上、稀にだが剣や槍を持った個体もいる。

 11層から下では魔物との遭遇率がかなり高い。10分も歩けば魔物のグループと遭遇して戦闘になった。だが所詮は最下級の魔物だ。動きは単純だし、武器の扱いもただ振り回すだけで大した脅威にはならない。一度だけモンスターハウスのトラップに引っ掛かった時は焦ったが、それも危なげなく切り抜けた。

 そして現在俺がいるのは20層、ボス部屋の前だ。そこで俺は悩んでいた。

 20層のボスはロックゴブリンの上位種、ロックゴブリンソルジャー、ロックゴブリンアーチャー、ロックゴブリンモンクの3匹だ。

 一応どれもDランクの魔物だが、ロックゴブリンはDランク下位、ソルジャー達はDランク中位だ。しかも3匹同時に相手しなければならない。


「行けそうだけどなぁ…」


 魔物の強さはランクが上がるごとに文字通り段違いで上昇する。そのため例えロックゴブリンの上位種であるソルジャー、アーチャー、モンクと言えども、同ランクである以上はそれほど脅威になるとは思えない。懸念があるとすれば連携の練度か。まぁそれも()()()()()()()()曰く「大した事はない」レベルみたいだからな。

 さて、どうするか…。



 時間はやや遡って前日の夜。

 俺はイステリアの冒険者ギルドを訪れていた。岩鬼の洞窟から持ち帰った素材(と言っても下級ゴブリンの魔石のみなので大した金額にはならないのだが)の売却と、11層以降の情報を仕入れるためだ。

 昨日冒険者登録の手続きをしてくれた明るい紺色の髪の受付嬢がちょうど手すきになったので話しかける。


「岩鬼の洞窟の11層以降の情報ですか?」

「はい。地図は昨日買ったので出現する魔物とかトラップ、ボスの情報があれば教えて欲しいんですが」

「失礼ですがトーカさんは昨日ギルドに登録したばかりでパーティも組んでいませんよね?」

「そうですね」

「それでしたらまずはパーティ仲間を探してみては如何でしょう?岩鬼の洞窟は比較的難易度の低いダンジョンではありますが、遭遇する魔物の数は多いです。それに10層のボスであるロックゴブリンは剣での討伐は難しいですし…」


 そう言って俺の腰にある剣に目線を向ける受付嬢。

 うん?その言い方だと剣士のソロ攻略は無謀だと言っているように聞こえるな。

 確かにロックゴブリンの外皮は並みの剣は通さないが、隙をついて外皮の無い部分を攻撃すれば斬れる。それを教えてくれたのは目の前の受付嬢本人なのだが…。


「あ、そういえばロックゴブリンの情報は助かりました。お陰で無事に倒せました」

「いえいえ、情報提供もギルドの仕事で…え?あれ、聞き間違いですかね?ロックゴブリンを倒したって聞こえたような」

「え、はい」

「またまた、ご冗談を~。あれはDランクの剣士でもソロでは倒すのが難しいんですよ?相性の良い打撃武器か魔法を使えば比較的楽に倒せるからDランクの魔物となっていますが、剣で倒すならCランクくらいの実力は必要なはずで…え、マジですか?」


 俺の表情を見て冗談を言っている顔ではないと気づいた受付嬢が確認してきたので首肯して答える。


「マジです。魔石もありますよ」

「み、見せて頂いても?」

「もちろん。元々買い取ってもらうつもりでしたし」


 俺は懐から魔石を出してカウンターに置いた。実際はアイテムボックスのスキルで異空間から取り出したのだが、アイテムボックスはかなりレアなスキルらしいので隠しておいた方が良いとランドからアドバイスを受けたのでこんな感じに偽装している。

 受付嬢はルーペのような魔導具で魔石を確認する。


「これは…確かにロックゴブリンの魔石ですね」


 その言葉から一瞬遅れてギルド内が騒めく。


 おい、聞いたか?

 ソロの剣士でロックゴブリンの討伐だとよ。

 見ない顔だな。他所から来た冒険者か?

 ランクは?誰か知ってる奴いるか?

 俺知ってるぜ。昨日登録した新人だ。

 なに?それが本当ならパーティに誘ってみるか…。いや、新人っておっさんじゃねぇか。


 こそこそと小声で話してはいるが身体強化スキルで聴覚も強化されているようで丸聞こえだ。あと俺が新人とか個人情報駄々漏れじゃねえか。別にいいけど。だが俺をおっさん呼びしたお前、顔覚えたからな。

 しかし冒険者達の反応を見ると剣でロックゴブリンを倒すのは中々難しいようだ。そう言えば受付嬢にも「ロックゴブリンは外皮に覆われていない関節の内側くらいしか剣が通らないのでパーティを組んでの討伐をお勧めします」って言われたんだっけ?

 勝手に「弱点は関節の内側ですよ」って脳内変換していた。


「コホン、失礼しました。確かにトーカさんは優秀な剣士のようですね。岩鬼の洞窟11階層以降の情報を提供することは問題ないでしょう。でもソロでボスに挑戦することは控えてください。岩鬼の洞窟20層のボスはロックゴブリンの上位種が3匹同時に出てくるので流石にソロの剣士では分が悪いです」

「そうなんですか」

「はい、Cランク並みの実力でもないと確実に血祭りです」


 受付嬢は真剣な顔で危機感を煽っているのだろう。美人系なので結構迫力がある。


「血祭りですか」

「血祭りです。でもパーティを組めば攻略難度はかなり下がりますので、まずはパーティメンバーを探すことをお勧めします。ギルドで斡旋することも出来ますがどうしますか?」

「うーん、いきなり知らない人と組むのは抵抗があるというか…。もう少しソロでやってみてから考えてみます」


 人前ではドレイン使えないからなぁ…。

 信用できる人が見つかればパーティを組むこともやぶさかではないが、別に急ぐ必要もないし。

 俺の回答に受付嬢は心配そうな表情を向けたが、それ以上強く勧めることはなく岩鬼の洞窟11層以降の情報を提供してくれた。

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