【同接30万人突破!】家族へのテロ行為 『本当の愛は靴下を煮出すことじゃない』
「……心ちゃん? こんな時間に、暗闇で何をしているの」
「……ぁ、あ……マ、ママン」
「心ちゃん、まずその……お顔の黒い仮面。それを外しなさい? 目だけがギラギラしていて、ママ、とっても悲しくなっちゃうわ。不審者さんごっこは、もう卒業したんじゃなかったの?」
「(……ッ!!)……あ、いや、これは……その、光の反射を抑えるための、ステルス・デバイスというか……神の威光が漏れ出さないための……」
「あらあら、中二病がまだ治っていなかったのね。それに、その胸元で光っている小さなカメラ。これで、世界中に私たちのキッチンを映しているの? ママ、今日はお化粧してないから恥ずかしいわ」
ママンは困ったように頬に手を当て、ため息をついた。
その時、ソファでこっちの様子を伺っていたパパが、俺とママンの間に漂う「逃げ場のない絶望」を敏感に察知した。
「……あ、ああ、ママ! ちょっとお風呂が沸いたみたいだから! 入ってくるよ! 3時間、いや、明日の朝までじっくり半身浴してくるから! あとは二人で、親子水入らずで話しなさい!」
パパは脱兎のごとく脱衣所へ逃げ込み、ガチャンと凄まじい音を立てて鍵をかけた。家族の防波堤が、最速で崩壊した。
「パパ!? 待ってくれパパ!! 3時間は長すぎるだろ!!」
「……いいのよ、心ちゃん。パパも、あなたの今の姿を見るのが辛いのね。……さあ、その背中に隠しているタッパー。ママに見せてくれる?」
「(……ッ、バレて……る……!!)」
俺は震える手で、背後に隠していたタッパーを差し出した。ママンはそれを優しく受け取ると、蓋を開けずにじっと見つめた。
「美咲はね、まだ何も知らないのよ。お兄ちゃんが最近、一生懸命お洗濯を手伝ってくれるって、キラキラした笑顔で話してくれたわ。でもね、ママは不思議だったの。」
「それは……その……独自の、オーガニックな芳香剤の実験で……」
「嘘をつかなくていいのよ、心ちゃん。ママはね、夕方あなたの部屋を掃除しに行ったの…ちゃんとノックしたのよ?けど心ちゃん寝てたから起こさないようにそーっと掃除したの……そしたらゴミ箱にね……美咲の湿ったソックスを見つけたの。……これを使って、何か『特別なスープ』を作っていたのね?」
「……ぁ……」
何も考えられない…ガタガタと足が震えてきて冷や汗が止まらない
「心ちゃん。あなたのその、並外れた探究心。ママはね、嫌いじゃないわ。でも、家族の靴下を煮出すのは、少しだけ……ほんの少しだけ、方向性が間違っていると思うの。このままじゃ、心ちゃんが本当に壊れてしまうわ」
ママンは俺の肩に、そっと温かい手を置いた。
その優しさが、俺の喉の奥を熱くさせる。
「だからね、パパと相談して決めたの。心ちゃんには、もっと広い世界を見てほしいって。あなたのその『個性』を、否定せずに受け入れ、そして『治して』くれる場所に連れて行こうって」
ママンの背後から取り出されたのは、一通の封筒。
そこには、仰々しい金文字で『私立聖アインズ更生学園・入学願書』と記されていた。
「ここは全寮制で、とても規律が厳しいけれど、あなたのような『個性』を持った子たちがたくさん集まっているわ。そこで、正しい抽出の仕方を……いいえ、正しい人生の歩き方を学んできなさい。スマホは……パパが『あの子の友達だから』って、持っていってもいいって言ってたわよ」
「……ママン……俺は、俺はただ……美咲の……」
「わかっているわ。愛が深すぎたのね。でもね、心ちゃん。……本当の愛は、靴下を煮出すことじゃないのよ」
ママンは優しく微笑み、俺の頭を撫でた。
その瞬間、俺の張り詰めていた何かが、音を立てて弾け飛んだ。
「……ぁ……ぁあ……ッ!!」
ガクン、と俺の膝がキッチンの冷たいタイルに叩きつけられる。
圧倒的な敗北感。
圧倒的な屈辱。
そして、ママンの優しさという名の「絶縁状」。
床に転がったスマホのカメラは、黒仮面を握りしめ床に伏し、情けなく肩を震わせる「元・神」の身体を、無慈悲に全世界へと発信し続けていた。
【LIVE配信画面:コメント欄】
• 信者A: 神の終焉きたあああああああああああ!!www
• 名無し: ママンが優しすぎて逆に死ねるwww メンタル粉砕完了www
• 職人: 30万人突破!! 史上最も静かで、最も残酷なバッドエンド!!
• 110番: 「本当の愛は靴下を煮出すことじゃない」www 今世紀最大の迷言だろwww
• Foreigner_Niki: NOOOO!! SHIN-KUN IS CRYING IN THE KITCHEN!! MOTHER IS A SAINT!!
• 名無し: パパ、風呂場で3時間待機とか地獄すぎて草www
• 腐女子: 膝をつくクック神……なんてエロティックな身体なの……!!
• スパチャ(¥50,000): 聖アインズ入学!! でその「個性」を爆発させてくれ!!
• 信者B: ママ……俺たちの神を、どうかよろしくお願いします……。
• 名無し: 画面が滲んでる……神の涙か、それともレンズの汚れかwww
俺の意識は、キッチンのタイルの冷たさと、ママンの温かい手の感触、そしてコメント欄の熱狂の中で、深い虚無へと沈んでいった。
さらば、我が家。
さらば、平和な日常。
明日、俺は「聖アインズ」という名の、本物の異常者たちが集う深淵へと足を踏み入れる。
引きこもり編:完
引きこもり編終了です。
ここからが本番なので引き続きご愛読よろしくお願いします(*ˊᵕˋ*)
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