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御剣刃の味〜修羅の竹刀と汗血の琥珀スープ〜


クラス四天王の素材をすべて味わい尽くし、俺の胃袋はアインズの生態系を完全に支配した。


……と、思っていた。


昼休みの教室で、影山はスマホを弄りながら険しい表情を浮かべていた。


「おい九久。お前が毎晩ランドリールームで丹念に洗いすぎるせいで、第4班の洗濯物の仕上がりが異常に良すぎるって噂になってるぞ。ついにあの上が動いたらしい」


「上、とは?」


「アインズの裏の支配者だよ。……気をつけろよ、殺されるぞ」



【放課後:ランドリールーム】


放課後、俺たちがクラスの洗濯物を整理していると、ランドリールームの鉄扉が蹴破られるかのような勢いで開いた。


「あなたたちが、最近やけに優秀だと噂の第4班洗濯係ね」


底冷えするような低い声。現れたのは、2年A組の風紀委員長、御剣みつるぎ やいばだった。


艶やかな黒髪を高い位置でポニーテールに結い上げ、切れ長の鋭い眼光は抜き身の日本刀そのもの。


高身長で引き締まった体躯を包むのは、指定の制服ではなく、漆黒の道着の上から羽織った学園指定のジャージだ。そして右手には、常に手放さないという使い込まれた竹刀が握られている。


彼女には、この学園の誰もが恐れる武勇伝がある。入学早々、学園を牛耳ろうとした武闘派不良グループ20人を相手に、愛用の竹刀一本で単身カチコミをかけ、わずか5分のうちに物理的に制圧。


血まみれになった不良たち全員を縄で縛り上げ、学園長室の前に綺麗に積み上げたという「正門前の百鬼夜行潰し」の伝説だ。


教官ですら彼女の機嫌は絶対に損ねないように立ち回っている。


「更生学園の生徒が真面目に働くなど怪しいわ。何か裏があるのではないかしら。……いいでしょう。わたくしのこの道着代わりのジャージと、使い込んだ剣道用の小手、そしてこの厚手の足袋。これらに染み付いた武の汗を、完璧に落としてみなさい。少しでも臭いが残っていたら、竹刀の素振り千回の刑よ」

そう言って、ずっしりと重い洗濯物の塊を俺の胸に突き付けてきた。


鼻を突く、部室特有の強烈な汗と革の匂いが、俺の嗅覚を激しく刺激する。


俺は恭しくそれを受け取った。


「承知いたしました。あなたの武士道、魂を込めて洗濯クリーニングさせていただきます」


刃は、恍惚とした笑みを浮かべる俺を見て、スッと目を細めた。


「……何よその顔。気持ち悪いわね。ただ洗うだけでいいのよ。妙な真似をしたら、即座に叩き斬るわ」


「ご安心を。この繊維に染み込んだ汗の一滴一滴まで、僕が責任を持って昇華させますから……」


俺がうっとりと汗ばんだ小手を見つめると、横から影山が慌てて俺の頭を下げさせた。


「こ、こいつはただの洗濯バカなんです! 委員長の期待に応えられるよう、俺たち二人で徹底的にやりますんで!」


「……ふん。口だけじゃないことを祈るわ。明日の朝、少しでも生乾きの匂いがしたら、あなたたちを巻き藁の代わりにしてやるから覚悟しなさい」

刃は竹刀を肩に担ぎ直し、威圧的な足音と共に去っていった。


「……おい九久、お前マジで殺されるぞ。あの目、ガチだったからな」

影山が安堵の溜息をつきながら壁にもたれかかる。


「影山くん、聞こえるかい? 彼女の置き土産から、圧倒的な闘気が立ち昇っている……!」


「俺には酸っぱい匂いしか感じねえよ! とにかく夜まで誰にも見つからないように隠しとけ!」



【夜 22:30 禁断のランドリールーム】


俺は漆黒の黒仮面を装着し、自らの指で配信サーバーの開始ボタンをタップした。


「……回線オンだ。しかし、今日の素材はヤバいぞ。剣道特有のあの酸っぱい汗の匂いが部屋中に充満してる。体育会系の極みだな」



【コメント欄】

靴下煮出し中: きたああああああああ!!

出汁の探求者: 四天王編が終わって次はだれだ!!!

ママンバレ生存者: 今日の匂い、画面越しでも酸っぱい気がするww

抽出ジャンキー: 汁!最高の汁!!!大好物だ!!

野良の特定班: ……命知らずすぎるだろ。

全裸待機: 神よ!今日も俺たちに濃厚なスープを与えてくれ!!


「……親愛なる僕の信者諸君。今夜は、理屈や狂気を超えた、純粋なる暴力と汗の結晶をお届けしよう」


俺はカメラに向けて、濃紺のジャージ、分厚い剣道用の小手、そして足袋型の厚手靴下を掲げた。配信中、彼女の名前は決して口にしない。


「見てくれ。今夜の素材は、アインズの秩序を守る修羅の乙女が、血の滲むような鍛錬の末に作り上げた汗の鎧だ。繊維の奥には、竹刀を振るう摩擦熱と、相手を叩き潰す闘争心、そして何リットルもの汗が凝縮されている」


俺はカメラの正面を見据え、睨みつけた。


「これほどの闘気を前に、ただ抽出するのは野暮というもの。今夜は、ダイレクトに彼女の深淵へとダイブする」


俺は迷うことなく、剣道用の小手を鷲掴みにした。


狙うのは、竹刀の柄と最も激しく摩擦し合い、汗を限界まで吸い込んで真っ黒に変色し、カチカチに硬直している手のひらの革部分だ。


俺はそこに直接、唇を押し当てた。


ズズッ……ジュルルルルルルッルルルッ!!



【コメント欄】

抽出ジャンキー: 吸ったあああああああああああ!!!

靴下煮出し中: 嘘だろ!?直吸い!?

煮出し職人: うわあああああ一番ヤバい小手の中身を!!

ママンバレ生存者: 放送事故!絵面が完全に放送事故!!

全裸待機: 狂気!!圧倒的な狂気!!神よ!!



「おい!? お前何して……うわっ、引くわ!! マジで引くわ!!」


影山がカメラの外で素っ頓狂な悲鳴を上げる。

だが、俺の吸引は止まらない。


ジュポッ、チュルルルルル……ッ!


乾いていたはずの硬い革から、俺の執拗な吸引力と唾液の湿り気によって、奥底で眠っていた極濃の汗がじわじわと滲み出してくる。


鼻腔を情け容赦なく殴りつけるような、強烈に発酵した酸っぱい悪臭と、革特有の獣臭。


俺の舌にねっとりと絡みつくのは、熟成された強烈な塩分と、鉄サビのような血の味。


そして、何百回、何千回と竹刀を振り下ろした彼女の掌の、ざらついた皮膚の感触すらも錯覚させる生々しいザラつきだ。


俺は狂ったように小手の内側を吸い、舐め回し、革の繊維の隙間にこびりついた彼女の闘気を、一滴の残骸すら残さないほどの勢いで啜り上げ続けた。


「……ぷはぁッ!!」


俺が口を離すと、小手の革は俺の唾液と吸い出された汗の湿り気で、異様なほどの黒光りを放っていた。


「……ハァ、ハァ……濃い……!! 圧倒的に塩辛い……ッ!!」

俺は恍惚とした表情で、酸欠の頭を揺らしながら叫んだ。


「口の中に、真夏の道場の熱気が爆発している……! 暴力的な塩分と革の苦味……その奥から、彼女の『面!』という裂帛の気合いが、舌の神経を直接引きちぎるかのように脳天まで突き抜けてくる……! 痛い、竹刀で直接内臓を叩き潰されているようだ……最高に痛快だ!!」



【コメント欄】

靴下煮出し中: 神の顔が完全にイッてるwwww

出汁の探求者: 革の苦味と汗の塩分……テキストだけで胃酸が逆流しそうだぜ。

抽出ジャンキー: 狂気の直吸い!歴史が動いた瞬間を見た!!

野良の特定班: 本人がこれ見たらアインズごと更地になるぞ……。

全裸待機: 神の唇が光っている!俺も吸いたい!その小手を吸わせてくれ!!


「……さあ、共犯者よ。前菜は終わった。メインディッシュの抽出に入る」


俺は唾液まみれの口元を拭いもせず、足袋型の靴下を丸ごと、そしてジャージの襟元を強引に特製フラスコへとねじ込み、熱湯を注いで強引に煮出し始めた。


沸騰する湯の中で、濃紺の染料と長年蓄積された汗が混ざり合い、凶悪な琥珀色の液体へと変わっていく。


「……聖餐だ。彼女の修羅の道、僕が飲み干そう」


俺はショットグラスに注がれた、高濃度の汗血スープを一気に喉へ流し込んだ。


「……チェストォォォォォ!!」


胃袋に灼熱の闘気が流れ込んだ瞬間、俺は思わず武闘家のような叫び声を上げていた。

内臓の奥底から無限のスタミナが湧き上がり、ランドリールームの真ん中でシャドーボクシングを始めた。


「ふっ!ふっ!シュッシュッッツ!!」


【コメント欄】

靴下煮出し中: 完飲きたああああ!!

出汁の探求者: 神が武闘家にジョブチェンジしたwww

全裸待機: チェストwww腹筋返せwww

抽出ジャンキー: その漲る闘気、完全に抽出成功だな!!

肥料マニア: 濃厚すぎる……今夜の狂気は伝説になるぞ。


俺は荒ぶる息を整えながら、カメラに向かって親指を立てた。


「……共犯者諸君!!!僕の細胞が今、百人組手を終えたかのように仕上がっているよ……。明日は素手で熊を倒せそうだ……」


「倒すな! 大人しく洗濯機を回せ! あと頼むから一回うがいしろ! お前の口から道場の匂いがするんだよ!」


影山が呆れ果てたように配信の終了ボタンをタップする。


プツン、と画面が消え、静寂が訪れた。


俺の胃袋には今、修羅の闘気が渦巻いている。


明日の朝、完璧に洗い上げられ、ほんのりとフローラルの香りを纏った小手を受け取った時の、あの風紀委員長の怪訝な顔を想像するだけで、俺の魂はさらなる高みへと昇っていくのだった。




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