↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門司港タイムトラベル  作者: ハマ
2.中川大輔タイムリープ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/42

2-26

 警察に捕まったのは、莉子を病院に連れて行ってからだ。


 未成年で、無免許の俺が気を失った女の子をバイクで連れて行けば、病院側が怪しむのは当然だった。


 警察を呼ばれて、事情を聞かれた。

 そこであったことを素直に話して、俺は警察署に連行された。


 莉子のことは、莉子の両親に伝えているので、そのうち迎えに来るだろう。


「お前は何を考えてるんだ‼︎ 自分が何をやったのか分かっているのか⁉︎」


 警察署に迎えに来た父さんに怒られて、一発殴られた。


「分かってるよ……」


「分かってないだろうが‼︎」


「っ⁉︎」


 不貞腐れたように言うと、もう一発殴られる。


 怒られる理由は分かっている。

 あんな危険なことをした上、犯罪者とはいえ傷付けてしまった。

 俺の行動に擁護出来る点は無い。


 前回のこともあり、かなり厳しい目で見られているのも知っている。相手が悪事を働いていたとはいえ、過剰に攻撃を加えれば、罰せられるのは俺になる。


 それは別に構わない。


 ただ、構わないと思っているのは俺だけで、両親は違う。


 今怒っているのが、俺の為なんだと理解するから、どうしようもなく申し訳ない気持ちになる。


「ごめん、もうこんなことしないよ」


「馬鹿タレが、心配かけさせんなよ……」


 父さんは握っていた拳を緩めて、眉間に皺を寄せている。

 今の父さんの感情がどういう物なのか、俺には理解出来ない。それでも、心配してくれていたんだと実感してしまった。


 見守っていた警察も、これ以上の暴力は無いと見たのか、話を始める。


 俺は何らかの形で罰せられる。


 莉子を救ったことを考慮しても、暴力行為とバイクの無免許運転は擁護出来ないという。親が責任を持つということで釈放されるが、今後の展開次第で保護観察が付くかもしれないそうだ。


「……あいつらは捕まったんですか?」


 そう尋ねると、誘拐事件という形で逮捕されるだろうが、今は病院にいるので、先の話になるそうだ。


 だったらと、もう一つ気になったことを尋ねる。


「あいつらに指示を出した奴がいるんですけど、逮捕することは出来ますか?」


 この言葉に、警察は興味を持ったようで、詳しく話てくれと言われた。


 北方のことを説明すると、警察は難色を示した。

 SNSでの内容のやり取りを教えたのだが、俺の弱点を説明しただけで莉子を誘拐するよう指示したとまではいえないという。計画と決断は不良グループがやり、誘導したという決定的なやり取りが無ければ立件は難しく、事情を聞くに止まるそうだ。


「そうですか……」


 やはり、俺が何とかしないといけない。


 北方が莉子を狙う理由は、莉子が俺を選んだから。

 不良グループに襲わせようとするのは、莉子が俺と一緒にいるのが嫌だからだろう。

 奴らに情報を流して、俺を襲わせたのもその為だ。


 そして今回は、莉子を直接狙って来た。


 一体どういうつもりだ?

 あいつは、莉子を好きだったんじゃないのか?

 傷付けてどうするつもりだったんだ?


 北方の意味不明な行動に、俺の頭が理解するのを拒んでしまう。


 そもそも、理解するなんて不可能だ。


 俺は北方のことなんて一切知らないのだから。


「なら、直接聞くしかないよな……」


 北方は、莉子が酷い目に遭っていると思っているだろう。


 それに、俺にわざわざ言って来る時点で、罪の意識を持っているのは確かだ。

 何をしたいのか問い詰めて、それから……。


「おい、行くぞ」


「あだっ⁉︎」


 ボーッとしていると、父さんに頭を叩かれた。


 父さんの後に着いて行く。


 警察署を出ると、そこには見慣れたバイクがあり、二つのヘルメットが置かれていた。


 父さんはその一つを取ると、「ほら」と俺に投げ渡した。


「大輔、いつの間に乗れるようになったんだ? こっそり乗ってたのか?」


「いっ、いや……見よう見まねだよ……」


「……まあいいか。母さんが待ってるから、怒られる覚悟はしとけよ」


「うん……ごめん……」


 父さんは落ち込んだ俺を見て苦笑を浮かべ、何も言わずにバイクに跨る。すると、乗れと手で合図を出すので、俺は父さんの後ろに乗った。


 これまで、何度か父さんの後ろに乗ったことはあるが、改めてその背中は大きいと思ってしまった。



   ◯



 翌日の早朝に、莉子の両親がやって来て頭を下げられた。


「大輔君ありがとう! 君がいなかったら、莉子はどうなっていたか……。それに警察にまで……」


 泣きながらお礼を言われて、どうしたらいいのか分からなかった。汐井を助けた時もそうだが、俺は誰かに感謝されるのに慣れていない。


 それに、昨日は散々怒られたので、感謝されても誇る気になれなかった。もっと言うと、俺が狙われてこうなったんだ。そこまで言われると、罪悪感が湧いて来る。


「親父さんもおばさんも止めてください。俺のせいで、莉子が巻き込まれたんです……。すいませんでした」


 頭を下げて謝罪する。


「そんなことはない⁉︎ 大輔君は、人助けをしたんだろう? それを……」


 そう親父さんは言ってくれるけど、俺は莉子を危険にさらした。

 この事実だけは変わらない。


 俺は変わらずに頭を下げて謝罪した。


 気まずくなったのか、おばさんがある提案をする。


「あの、これから莉子を迎えに行くんだけど、大輔君も一緒に来ない?」


「行きます」


 莉子に危険な目に遭わせたとはいえ、莉子の無事な姿は見たかった。


 病院で診てもらった時、莉子に怪我や暴行の痕は無かった。

 ただ、拘束された部分が痣になっているが、それも一週間もすれば消えるらしいので一安心といった所だろう。


 でも、心はそうじゃない。

 車が事故を起こすまでは、莉子には意識があった。これで、トラウマが出来ていてもおかしくはなかった。


 両親に許可をもらって、親父さんとおばさんと一緒に病院に向かう。


 俺が警察に連れて行かれている間に、莉子は目覚めたらしく、何があったのかおばさんに話しをしていた。


 家を出て図書館で勉強しようと向かっていると、車が目の前に止まり中に押し込まれた。突然のことに莉子は恐怖で動けなくなり、震えて声も出せなかった。

 それに、不良グループの中にはナイフを持った奴もいて、チラつかせて脅していたらしい。


 押し倒して来たのも、莉子が抵抗出来ないと理解したからだ。


 それを聞いて、もっと痛め付けておけばよかったと後悔する。


 病院送りにしたとはいえ、怪我は車による事故の影響も大きく、俺がやったのなんて些細なものだった。


 怒りをぶつけたとはいえ、相手が倒れたら手を止めていた。


 今からでも……。


 そう考えてしまい、気持ちを落ち着けるように大きく深呼吸する。


 これからのことは、警察に任せるしかない。

 俺が下手に引っ掻き回したら、全部台無しになってしまう。


 気持ちを切り替えようと、今は莉子が優先だと自分に言い聞かせた。




 親父さんが運転する車に揺られて、病院に到着すると、莉子が入院している病室に向かう。


 看護師さんの話によると、もう退院する準備は出来ていて、保護者の到着待ちだったらしい。どうやら、俺の所に寄ったせいで遅れてしまったみたいだ。


 親父さん達は外で待っているらしいく、俺に中に入るように促して来る。


 扉を開いて俺だけ中に入ると、そこには待ちくたびれた様子の莉子がいた。


「やっと来た……大輔……」


「莉子、ああ……その……」


 無事な姿を見たくて来たのだけれど、いざ会うと何と話し掛ければいいのか分からなくなってしまった。


 謝った方がいいのだろうか?

 無事で良かったと喜ぶべきだろうか?

 思い出させないように、雑談を始めた方がいいのだろうか?


 どれも違うような気がして、俺と莉子は見合ってしまう。


 しばらく見合っていると、痺れを切らした莉子が口を開く。


「気まずいから、何か言ってよ……」


「あっ、ああ。……莉子、すまない、俺のせいでこんなことになって……。守るって言ったのに……。もう二度と、二度と危険な目に遭わせないから! あっ、すまん大声出して、その、すまん……」


 申し訳なくて下を向く。

 すると莉子は小さく笑って言う。


「謝ってばかりだね」


「すまん……。それしか言えない。俺がもっと気にしていたら、覚悟決めていたら、莉子が危険な目に遭うことなんてなかった……」


「助けてくれたじゃん」


「危険な目に遭わせた時点で、もうダメなんだ。俺がここにいる意味が無くなってしまう」


「それって、私が自殺するから?」


 黙って頷くと、莉子は俺に近付いて来てお腹にパンチした。


「だから自殺しないって。何があっても私は自殺しない。約束するから、私を信じてよ」


「……ああ、そうだな」


 頷くと、莉子は笑ってくれた。

 それから最後に、


「大輔」


「何だ?」


「助けてくれてありがとう」


 そうお礼を言ってくれた。


 それだけで、俺の心は満たされてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。