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門司港タイムトラベル  作者: ハマ
2.中川大輔タイムリープ

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39/42

2-25

 倒れた北方の横で莉子に電話を掛ける。


 だが、繋がらない。


 倒れた北方の胸ぐら掴んで起こし、目の前で睨み付ける。


「どこに行ったか教えろ‼︎ 何か知っているんだろう‼︎」


 焦る。

 こうしている間にも、莉子が危険な目に遭っているかもしれない。

 そんなの認めない、許さない。

 もし何かあれば、関わった奴ら全員……。


 俺の意思が通じたのか、北方はスマホを俺に差し出して来る。


 それで察した。

 北方のスマホを奪い取り、顔認証で画面を開かせると、不良グループとのメッセージのやり取りを確認する。


 最後に連絡したのは三十分前。

 内容は、これから外に出る莉子を待ち伏せするという物。


 向かう場所は、不良グループが利用しているという廃墟だという。


 その場所が、俺には分からない。


「おい北方! この廃墟はどこにあるんだ⁉︎」


 だが、北方の答えはふざけた物だった。


「誰が教えるか」


「このっ⁉︎」


 鼻で笑い、人を小馬鹿にする。

 もう一度殴り倒そうと拳を握るが、ここで激昂しても何も変わらない。痛みで言うことを聞かせようにも、こいつは嘘を言いそうで信用出来ない。


 歯を食いしばって踏みとどまり、どうするべきかを考える。


 不良グループの溜まり場なんて、あのアミューズメント施設の駐車場くらいしか知らない。そこにいる奴に聞こうにも、今いるのか分からないし、そもそも関係無い奴の可能性もある。どちらにしろ、知らないふりをされたらその時点で終わりだ。


 ひたすら、廃墟を当たるか?


 そんなの現実的じゃない。廃墟になっている施設や住宅は山ほどある。全てを調べるなんて、到底不可能だ。


 じゃあどうする……。


 手元にあるスマホに目が行く。


「スマホ……あっ」


 そうだと思い出し、自分のスマホで莉子の位置情報アプリを起動して確認する。


「……くそっ⁉︎ 遠い⁉︎」


 スマホは西に向かって移動しており、かなり離れた場所いた。

 この速度からして車に乗っているだろう。とてもじゃないが、追いつくのは不可能だ。


「……」


「何だ? 諦めたのか? 全部お前が浅野さんと付き合うから悪いんだよ!」


 喚く北方を無視して、俺は家に走った。


 家に帰り着くと、リビングを見回す。

 残念ながら父さんも母さんも出掛けていて、家には誰も居ない。


 棚の上に置いてあるバイクの鍵を取り、ブーツを履くとガレージに向かう。

 シャッターを開けると、そこには慣れ親しんだバイクの姿があった。


 ドラッグスター。


 父さんの愛機であり、俺に取って初めてのバイクだ。


 この時代に俺のヘルメットは無く、あるのは父さんのだけ。


 父さんのフルフェイスのヘルメットを被ると、バイクに跨りエンジンをかける。

 強い振動と排気音が気持ちを高揚させる。

 それどころじゃないと言い聞かせて心を落ち着かせると、クラッチを握りギアを入れて発進する。


「莉子、直ぐに助けるからな」


 バイクを走らせて、莉子を追う。



   ◯



 俺と莉子がいる場所は、距離にして十キロ以上離れている。

 自分の足だと一時間弱掛かる距離も、バイクなら十五分と掛からない。


 可能な限り飛ばした甲斐があり、かなり近付いて来た。


 少し先の交差点で、下手くそに左折するミニバンがある。

 セットしているスマホを見ると、交差点で曲がっていた。


 見つけた‼︎


 車の後方に付け、ナンバープレートを確認すると、インカムで警察に連絡して俺は仕掛ける。


 今走る道は、バイク乗りがよくツーリングに使っている。

 昼間に通ると貯水池の周辺でウォーキングしている人達がおり、夜は静かで幽霊が出て来そうな不気味な道だ。


 この先には肝試しに使われるような廃墟があり、奴らが向かっているのはそこなのだろう。


 家に置いてあったセーフティハンマーを取り出すと、ミニバンの横に付けて後部座席の窓を叩く。


 ガラスは簡単に割れて、驚いた顔の男と目が合う。

 そいつの顔には見覚えがあり、以前殴り倒した奴の一人だった。


 そして、そいつは莉子を押し倒していた。


 一瞬で頭に血が上ってしまった。


 更に後方の窓を叩いて破壊して、直ぐに止まれと指示を出す。


 だが止まらない。

 それどころか加速して、俺を振り切ろうとする。


「ヤバい⁉︎」


 今度は逆に血の気が引いた。


 車は立派でも、ドライビングテクニックが著しく劣っている。それこそ、免許を持っていない素人が運転しているかのような技量だ。


 カーブで対向車線に飛び出して、正面からやって来ている対向車と衝突しそうになる。

 左側はガードレールを挟んで貯水池になっていて、もし落ちれば助からない。


 加速するミニバンは、ガードレールを擦りながら走る。


 火花が散り、車内から悲鳴が聞こえて来る。


 これはまずいと、一気に加速して横に並走して運転席に座る奴を見る。


 そこに居たのは、俺が病院送りにした奴の弟だった。


 前方を確認すると、小さいが駐車場があり車は一台も停まっていない。


 止めるならここだ‼︎


 運転席の窓ガラスを破ると、ビビっている男に呼び掛ける。

 あそこに止めれば、事故は回避出来るはずだ。


「おい! そこに止めろ!」


「……中川? 中川ぁ⁉︎⁉︎」


「何やって⁉︎」


 しかし、俺の願いとは裏腹にそいつはハンドルを右に切った。


 きっと、車を俺にぶつけようと思ったのだろう。


 だが、車は俺に体当たりするのではなく、操作を誤って正面から山側の塀に当たってしまった。


「莉子⁉︎」


 エアバッグが起動して、運転手と助手席の男は守られるが後部座席はそうではない。速度もそれなりに出ていて衝突した。


 最悪を想像してしまう。


 俺はバイクを降りると急いで駆け寄る。


「莉子⁉︎ 莉子‼︎」


 ミニバンの前方は潰れていて、事故の衝撃を物語る。

 運転していた奴は無事なようで、エアバッグの中でもがいていた。莉子はと覗くと、後部座席にもエアバッグを備えていたようで、膨らみが衝撃を和らげていた。


 変形した車体だが、まだ扉は開いてくれる。


「莉子! 莉子大丈夫か⁉︎」


 もがいている男を引き摺り出すと、その奥にいる莉子を抱き上げる。事故した衝撃で気を失っており、見た目だけなら怪我した様子は無い。着衣の乱れも無くて、まだ何もされてはなかったのだろう。


 そう、まだだ。


 もし、もし追い付くのが遅れていたら、莉子はあの時のような悲惨な目に遭っていた。


 あの映像を思い出してしまう。


 頭が怒りでどうにかなってしまいそうだ。


 俺が引き摺り下ろした奴が起き上がり、首をさすりながら車を見る。


「いってぇー……事故ってどうすんだよ……は?」


 そいつに近付くと、問答無用で殴り倒した。


 暴力に訴えるな。

 冷静になれ。

 今は莉子の無事を確かめるのが先決だろう。


 そう頭の中で真っ当な意見が流れて来るが、その全てを怒りが消してしまう。


 車から這い出て来る奴らを見る。


 俺は、自分自身を抑えることが出来なかった。


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