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門司港タイムトラベル  作者: ハマ
2.中川大輔タイムリープ

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31/38

2-17

 連れて来られたのは、不良グループが溜まり場にしているアミューズメント施設の駐車場。

 ここは、警備員も配置していないことから、夜になると柄の悪い奴らが集まるようになってしまった場所だ。


 あの時も、ここに乗り込んで暴れ回った。

 容赦なく殺すつもりで、俺自身死んでもいいと思いながら暴力を振るった。


 あれを再現するのか、また別の方法で解決するのかは、こいつら次第だろう。


 バットを片手に持ち、背伸びをして身体をほぐす。

 家で父さんとミット打ちをしていたおかげで、運動不足という感じはない。


 不良グループを見ると、殺気立っている奴から、既に戦意喪失している奴までいる。


「なあ、俺のことは誰に聞いた? お前のお兄さんって、俺のこと知らないだろう? 警察も話さないって言っていたのに、どうやって知ったんだ?」


「はあ? そんなこと気にしてんの? これからボコされんのに、俺らのこと舐めてんだろう⁉︎」


「そんなのいいから教えてくれよ、俺に取っては重要なことなんだ。頼むよ……」


 そうお願いすると、「だったらその場で跪け」と調子に乗って言って来る。

 さっきまで、俺に踏み付けられた奴とは思えない強気な発言だ。


 普通なら、そんなの無視してこいつから狙うだろう。


 だが俺は、指示に従って膝をつく。


「頼む、教えてくれ」


 そうお願いするのだけれど、まあ結果は予想した通りだった。

 そいつは近付いて来ると、小馬鹿にした笑みを浮かべた。


「はっ、誰が教えるかよ‼︎」


 蹴りが俺の頭部を捉える。

 繰り出された蹴りは下手くそだったが、頭に当たり星を散らせた。

 それだけで、大したダメージにはなっていない。


「まっ、こんなもんか」


 起き上がりながら勢いよく踏み込み、拳を顔面に叩き込んだ。

 前と同じように一撃で沈み、地面に転がる。


「さあ、次」


 そう言いながら、残った不良グループを睨み付けた。




 俺は体格に恵まれている。

 中学三年では滅多にいないほどの高身長で、九十キロを越える体重がある。運動しているのもあり筋肉質で、首もそこそこ太い。

 ベンチプレスも百三十キロ上げられるし、スクワットでもそこそこだ。

 父さんから「軽トラに轢かれても無事そうだな」と言われるほどの体格で、同級生からしたら怪物のような存在だろう。


 そんな俺だけど、流石にバットで殴られたら痛い。


 そう、痛いんだ。


 痛いだけで済んでいる。


「っらー‼︎」


 フルスイングのバッドを掌で受けて、前蹴りを喰らわせる。

 俺がバットを握っていたからか、蹴りを喰らった奴はその場に留まってしまっている。追加の蹴りを腹に叩き込んで、胃液と共に地面に転がせる。


 今度はこちらからと、バットを持った奴に接近する。


「いやちょっ⁉︎」


 まさか狙われると思ってなかったのか、不良は焦った顔をする。だが、そんなの知らんとフルスイングを体に喰らわし、痛みで動けなくさせる。


 仲間を助けようと二人が仕掛けて来る。

 持っている武器は、鉄パイプとバット。

 攻撃を避けるのは無理で、頭部を腕で守るように防御する。

 バットはまだ耐えられるが、鉄パイプはかなり痛い。でも、何とか痛みには耐えられる。


 二度目の打撃を喰らう前に、バットで顔面を殴り鉄パイプの男を無力化する。

 しかし、もう一人の男の打撃は俺の腕を狙っていて、殴られた衝撃で武器を手放してしまう。


 勝ち誇った顔をする不良の一人。

 そいつの胸ぐらを左手で掴んで、持ち上げる。

 表情が一変する中、構わずに地面に叩き付けた。


「やっ、これヤバいって⁉︎ マジヤバいって⁉︎」

「話し違うじゃん⁉︎ 俺関係ないから‼︎」

「逃げよう! こいつ頭いかれてるっ⁉︎」


 人数合わせで集められていたのか、五人倒した所で残りの三人が逃げ出した。


 俺は、そんな奴らを追ったりしない。


 まだ動ける奴と合わせて攻めて来られたら、結構ヤバかったから。


 バットで殴られた右腕の感覚がおかしい。

 打撲で済んでくれたらいいが、これは恐らく折れている。

 この状態で三人の相手は、流石にきつい。


 まあ、何はともあれ。


「さあ、話を聞かせてもらおうか」


 少しは回復したのか、最初に殴り飛ばした奴がヨロヨロと起き上がっていた。


 ふらふらの足取りなのに、俺を睨み付けて来る。

 兄を病院送りにしたことを、心の底から恨んでいるのだろう。


 でもな、怒っているのは俺も同じなんだよ。

 

 俺はこいつらを、殺してやりたいほど憎んでいる。

 容赦なく潰してやりたい。二度と歩けなくなるまで壊してやりたい。生きていることを後悔するほど、徹底的に追い詰めてやりたい。


 そんな歪んだ感情が湧いて来る。


 でもそれは前のこいつらの話で、今はまだ何もやっていない。


 だから、必要以上に暴力に訴えるべきじゃない。


 深呼吸をして、溢れる怒りを鎮めるよう努める。


 落ち着け、落ち着け……。そう言い聞かせて、必死に頭を冷やす。


 こいつからは、聞き出さなきゃいけないことがあるんだ。

 怒りに任せるべきじゃない……。


 何とか心を落ち着けると、睨み付けながら告げる。


「おい、俺のことをどうやって知ったか教えろ。もう決着は着いただろう?」


 それとも、これ以上やるか?

 そう尋ねると、こいつは立ち止まり倒れた奴らを見ていた。


 何か思うことがあったのか、駐車場の天井を見て、直ぐに俺を直視する。


「分かった。教える。俺に中川のことを教えてくれたのは、SNSの名前が『パパラッチ』って名前の奴だ。そいつが誰かまでは知らない……」


 これでいいか? そう目が訴えて来るが、余計に知る必要が出来た。


「待て。何て聞いてたんだ? 俺のことだけか? お前の兄が何をやっていたのか知ってんのか?」


「……」


 無言というのは、案外いろんなことが伝わって来る。


 こいつは、全部知った上で俺を襲った。

 兄が最低な行為をやっていると知っていても、止めるでも責めるでもなく、無視し続けていた。

 それなのに、兄がやられると俺を狙って来た。


「カスが……」


 軽蔑の言葉が漏れてしまう。

 他人が傷付こうがどうでもよくて、自分のことしか考えていない。こんな奴らを野放しにしていいのかと、本気で悩んでしまう。


 ここで徹底的にやっておくか?

 そう考えていると、誰かが通報したのか遠くに警察の姿が見えた。


「まずいな、逃げるか」


 俺自身、捕まるのは別に構わない。

 でもそれは、莉子が無事に日常を送れるようになってからだ。


 踵を返すと、別の出口に向かって走り出す。


「ヤバい警察が来た⁉︎」


 俺の逃走で警察に気付いたのか、不良グループも逃げ出した。


 横目で最後に見たのは、取り押さえられている不良の姿だった。

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