表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門司港タイムトラベル  作者: ハマ
2.中川大輔タイムリープ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/38

2-16

 翌日、クラスではすでに噂になっていた。


 俺が二島が浮気をしている。

 そんな下らない噂だ。


「違う! だから違うって! 私と中川君はそういうんじゃないって⁉︎」


 二島は必死に否定しているけれど、これを信じるのはどれだけいるだろうか? 俺も否定しているが、その目は冷たい。


 撮られた写真は、使われていない教室から出て来る俺と二島の姿。SNSにアップした奴のユーザー名は『パパラッチ』という自称クラスの情報通で、これまでにも沢山の情報を流しているようだった。

 ほとんどの人は、この写真を信じるだろう。

 まったく、ふざけた話だ。


「すまん莉子、迷惑を掛ける」


「あはは、気にしてないから大丈夫だよ」


 莉子には説明している。

 二島に呼び出されたのと、その理由。莉子と別れろと言われたことも含めて、全て話をしていた。

 不良グループの件もあり、いつ襲って来るか分からない。だから、安全を考えて別れてもいいと言っている。


 すると、「そっか、ごめんね私のせいで……」と、別に悪くもないのに莉子は謝っていた。


 でも、別れるとかそういう話はしなかった。


 莉子はどうしたいのだろう?

 本当はどう思っているのだろう?

 二島が言っていたように、本当は嫌なんじゃないだろうか?

 俺は別れたくない。でも、莉子の迷惑にもなりたくない。


 そんな考えがぐるぐる回って、莉子から視線を逸らす。

 その先で、北方の姿を見た。


 北方は、渦中の二島ではなく莉子を真っ直ぐに見つめていた。

 その視線はとても優しくて、それでいて俺を不安にさせた。


 どんな意思を込めて、北方は莉子見ていたのだろう?


 その視線を莉子は気付いていないようで、ただぼうっとしているだけだった。



   ◯



 図書室で勉強道具を広げて、二人並んで勉強する。

 俺達以外にも人は居て、エアコンの効いた図書室で集中していま。


 みんなが必死に勉強する中で、莉子の様子は相変わらずで、上の空というか勉強に身が入っていない。


「なあ、何かあったんじゃないのか?」


「何も無いよ。心配しなくても、大丈夫だから」


 そう言いながらも、視線はノートではなく窓の外を眺めていた。

 それはまるで、遠くに行きたいかのようで、思わず手を取ってしまった。


「なに? どうかした?」


「あっ、いや、すまん。何だか、莉子が遠くに行ってしまうような気がしたんだ……」


「行かないよ……。私は、どこにも行けないから……」


 これまでと変わらない表情なのに、今は何故か悲しんでいるように見えた。


 何か聞かないといけないのに、次の言葉が出て来ない。何と聞けばいいのか、俺には分からなかった。

 無言の俺を見て、莉子は話を続ける。


「私の将来の夢、お医者さんって言ったの覚えてる?」


「ああ、覚えてるよ」


 付き合い始めた当初、話題が無くてお互いの将来の夢なんかを語ったことがある。

 俺は特に無くて、プロのバスケットボール選手と適当に言っていたのだけれど、莉子は真剣に話してくれた。


 医者になって多くの人を救いたいと、いざという時、誰かを助けられる資格と知識が欲しいと言っていた。


 その時の莉子は眩しく見えた。

 羨ましいと思って、そんな人だから惹かれたんだなと納得もした。


「私、なれるかな……」


「なれる! 莉子なら絶対医者になれる!」


 俯き気味な莉子を見て、俺はそう口にしていた。

 ここが図書室なのも忘れて、声を出してしまった。


「ちょっ⁉︎ しーっ‼︎」


「あっ、すまん……」


 周りから注目されてしまい、図書委員なんて俺達を睨んでいた。

 大声を出してしまったのは失敗だったが、莉子がどうして元気が無いのか分かった気がする。


 何らかの理由で、医者になれる自信が無くなったのだろう。

 どうしてなのかは分からないけれど、それさえ解消してやれば、莉子はいつも通りに戻るはずだ。


 何をするべきか見えて来て、俺はやる気が出て来た。


 注目されたのもあり、居心地が悪くなって俺達は図書室から退出する。

 今日はもう帰ろうという話になり、そのまま学校を出た。


「大輔はさ、何で塾通わなかったの? 勉強出来るんだからさ、塾行ってたらもっと上の高校狙えてたんじゃない?」


「俺の場合、部活を優先したってのもあるけど、今さら通ってもそこまで変わらないと思ったんだよ。そういう莉子はどうなんだ?」


「私も似たようなものかな。そもそも、うちには塾に通う……あっ」


 莉子は立ち止まり正面を見る。

 連れられて俺も前を向くと、そこには武器を持った不良グループがいた。

 背後にもいて退路が絶たれている。


 人数も増えていて、八人もいる。

 あの日、バイクで追われた時と同じ数だ。


 嫌なことを思い出したせいか、背中の刺された箇所がジクジクと痛み出す。


 不良グループの一人、俺が病院送りにした奴の弟が口を開く。


「中川、やっぱお前じゃねーか。俺の兄貴襲ったのはよぉ‼︎」


「襲ってなんかいねーよ、悪人退治しただけだ。お前の兄と友達が何をしたのか知っているんだろう?」


「うるせー‼︎ そんなの関係ないんだよ‼︎ 兄貴はな、俺には優しいんだよ‼︎」


「犯罪者のことなんか知るか」


 そう言うと、莉子が俺から離れた。

 どうしたのかと横目で見ると、俯いて下唇を噛んでいた。


 どうしたんだ? そう声を掛けたいけれど、状況が許してくれない。


「お前も同じ目に遭わせてやる。二度と歩けないようにしてやるよ‼︎」


「莉子、警察に電話してくれ。……莉子?」


 バッドで殴り掛かって来る奴を見ながら莉子に告げる。しかし、反応が無い。

 鞄を盾にバッドを受けると、バッドを掴んで力任せに奪い取る。そして、その衝撃で転けた奴を踏み付けて制圧する。


 振り返り莉子を見ると、背後にいた奴らに捕まっていた。


「大人しくしろっ‼︎ こいつがどうなってもいいのか⁉︎」


 莉子は、口を押さえられ体を拘束されている。

 このままじゃ、何をされるか分かったものではない。

 こいつらは、それをやるゲスな連中だ。


 だからこそ、引き下がるわけにはいかない。


「莉子を離せ、じゃなきゃ頭を叩き割る」


 奪ったバッドで踏み付けている奴の隣を叩く。

 金属音と火花が散り、状況を理解したのか踏み付けている奴が逃げようともがき始める。


「おい、動くな」


 全体重を掛けてやると、そいつはまったく動けなくなる。

 不良ではあるが、残念ながら力は強くない。むしろひ弱なほうだ。だからこそ、バッドも簡単に奪えた。


「早く離せ‼︎」


「だから、先に莉子を解放しろ! そしたら、お前らの指示に従ってやる。他の場所に連れて行ってもいい。どうする?」


 背後から近付いて来ようとする連中に対しても、バッドを向けて忠告する。

 不良グループは見合ってどうするか迷っていた。

 さっさとしろと、足下の奴の肺辺りに体重を掛けて呻き声を上げさせる。すると、ようやく決めたようで莉子を解放た。


「大輔⁉︎」


「すまん莉子、先に帰っててくれ。少し用事済まして来るから」


 心配してくれる莉子に、軽い感じで告げる。

 大丈夫だから、安心して欲しい。これから起こることを、莉子には見られたくない。この二つを思いながら、笑って見せる。


 莉子から不良グループが離れたのを見て、足下の不良を解放する。

 不良は苦しかったのか、咳き込んで蹲っていた。


 こいつらに聞けば、何か分かるはずだ。


 莉子を襲わせるよう指示した犯人が、俺にあんな物を送り付けた奴が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ