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門司港タイムトラベル  作者: ハマ
2.中川大輔タイムリープ

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29/39

2-15

 莉子を自宅の団地まで送り届ける。

 一週間送っているが、後を付けられているとか、見られているというようなことはなかった。


 だが、荷物は相変わらず無くなっている。

 タイミングは移動教室の時で、犯人を特定出来ていない。

 一度、教室の隅にスマホを録画モードにして隠したのだが、仕掛けたのを見られていたのか、何もされなかった。


 何の為に莉子の荷物を盗むんだ?

 ただの嫌がらせ?

 目的があるのか?


 分かっているのは、同じクラスに犯人がいるということ。


 でも、それが誰か分からない。


 物が無くなった時に、誰が居なかったのか見ていたが、何人か来るのが遅かったり、前回居なかった人が次は居たりするので、犯人を断定出来なかった。


 早く手掛かりを見付けないとと焦ってしまう。


 物が無くなるのが続いて、莉子の調子が悪くなっているのだ。


「もう少し待っててくれ、必ず犯人捕まえるから」


「無理しなくていいよ。大輔は勉強に集中してて……」


 微笑みながら莉子は言う。

 その顔は、前の時に勉強を教えると言ってくれた時の表情に似ていた。

 あの時にはもう、莉子はいろいろと抱えていた。


 今はどうなんだ?


「……なあ、もしかして、何か隠してないか?」


「何も無いよ、心配してくれてありがとう」


 その言葉が、余計に疑念を抱かせた。

 でも、追求は出来ない。

 俺が出来るのは、莉子が話してくれるのを待つことだけだから。



   ◯



 ある日、莉子が体調不良で学校を休んだ。

 メッセージには、ただの風邪だと聞いたけど、心配で仕方ない。


 早く帰ってお見舞いに行きたいところだが、これまで俺を避けていた二島から呼び出された。


 場所は使われていない空き教室。

 昔は使われていたそうだが、生徒数の減少により使用されていない教室が多くある。


 その一つに入ると、二島が一人で待っていた。


「一人か?」


「そうだけど、なに?」


「いや、俺を避けてたから、会うなら北方も一緒だろうなと思っただけだ」


「充は塾で忙しいから居ないよ」


「そうか……。じゃあ、俺を呼び出したのって北方は知らないのか?」


「知らない。言ってたら絶対止めるでしょ? だけど、もし私に何かしたら、警察に行くからね!」


「しねーよ。何だよ、俺を危険人物みたいな言い方しやがって……」


 そんなに怖がらせるようなことしたかと思い返してみる。

 だが、そんな行動をした覚えはない。

 あるとすれば祭りの日の一件だが、そこに二島はいなかった。


 それに、そんなに警戒する俺を呼び出して、どうするつもりなのだろう?


「んで、何の用? 早く帰りたいんだけど」


 早く莉子のお見舞いに行きたいと告げる。

 すると、二島は激昂した。


「ねえ、まだ分からないの⁉︎ 莉子迷惑してるんだよ⁉︎ 莉子の物盗んでいるのだって、どうせあなたでしょ⁉︎」


「何言ってんだ? 俺が莉子の物盗むわけないだろう。それに、迷惑って何だよ。迷惑なんて掛けてないだろう⁉︎」


 意味が分からない。

 俺がそんなことする必要が無いのは、こいつだって分かっているはずだ。それなのに、どうしてこんなことを言う。

 第一、迷惑なんてあるか! 俺は莉子の彼氏だ。俺があいつを守らなくて、誰が莉子を守るっていうんだ!


「迷惑だから言ってるの! いつも莉子にべったりで息苦しそうにしてるの見えないの⁉︎ それに中川君さあ、あの不良グループのお兄さん病院送りにしたんでしょ? あなたが側に居たら、莉子にまで危害が及ぶかもしれないじゃない‼︎ もう莉子と別れて上げてよ‼︎ 莉子が可哀想だよ……」


 頭の中が混乱する。

 莉子が息苦しそう? 迷惑? 可哀想? 別れる? そんなことあるのか? 俺は彼氏だから、莉子を守らないといけないのに、俺が追い詰めていた? 不良グループに狙われる? 俺が危険に晒しているのか?


 もしかして……莉子が……。


「……自殺した原因は、俺?」


「えっ?」


 そう口にすると、心が冷たくなる。


 違うと分かっていても、その可能性を考えてしまい目眩がする。吐き気を覚えて、水場でえずく。頭痛がして、鉄の臭いが鼻に付く。何だと鼻を拭うと、手の甲に血が付着していた。

 どうやら、鼻血を流していたみたいだ。


「待って! ねえ! 今自殺って⁉︎ 莉子が、莉子が自殺したの⁉︎」


 二島の甲高い声が頭に響いて不快に感じる。

 触れられる感触も気色悪くて鳥肌が立ってしまう。


 触るなと腕を振るうと、小柄な二島は転んでしまった。


 もう一度えずくと、ハアハアと息を吸っては吐いてを繰り返す。

 何度も繰り返して、ようやく考えられるまで落ち着いた。


 二島は怯えた顔で俺を見ており、やってしまったと後悔する。


「……悪い、ティッシュ持ってるか?」


「うっ、うん……」


 二島にティッシュを貰って、鼻血を拭き取る。鼻血は止まっていて、鼻に詰めなくてよかったと安堵する。


 俺は残ったティッシュを返そうとするが、「いいよ」と受け取るのを拒否された。


 どうやら、俺のことが本当に怖いようだ。


「すまん、嫌なこと思い出して取り乱してしまった。莉子は自殺なんてしないから安心してくれ」


「えっ、でも、さっき自殺って……」


「するわけないだろう! 俺がそんなことさせない! その為にっ⁉︎ ……あっ……。すまん、また……」


 駄目だ。今は駄目だ。

 どうにも考えが纏まらない。

 嫌な言葉に反応してしまう。

 自分から言い出したことなのに、他人に当たってしまいそうになる。


 大声を出したから、二島は怯えてしまい耳を塞いでいる。


 俺は片膝を突いて二島と目線を合わせる。

 それだけの身長差があるんだ、俺が威圧したりしたら、それは怖いだろう。


 目線を合わせると、二島はゆっくりと目を開けて俺を見る。


 落ち着いた声で、冷静になるよう自分に言い聞かせながら俺の意見を告げる。


「二島の言うことは分かった。俺は、莉子を束縛していたのかもしれない。もしそれが嫌で、莉子が別れたいって言うのなら俺は受け入れる。それでいいか?」


 俺の言葉に、二島はそれでいいと頷く。


「ただ、これだけ教えてくれ。不良グループのは誰から聞いた? そいつの兄を病院送りにしたってやつだ」


 この質問が意外だったのか、二島は不思議そうな顔をして教えてくれた。


「みんな言ってるけど」


「みんなって誰だ? 二島は誰から聞いたんだ?」


「えっと……充君だったかな?」


「北方?」


 俺が不良グループに連れて行かれたのは、結構な人達に見られていて知っている。

 でも事情は話さなかった。

 被害者である汐井もいて、不安にさせるべきじゃないと説明しなかった。不良グループの奴らが話したのかと考えたが、いくらあいつらでも、恥を晒すような真似はしないだろう。


 そもそもの話し、俺は否定している。

 警察も公表しない以上、知る手段は無いはずだ。


「すまん、どうして病院送りにしたか事情は知っているか?」


「それは、知らないけど……」


「……」


 どうして事情まで知らない?

 誰が流した?

 汐井は知っているのか?


「北方に聞いた方が早いか……」


 そう考えて、俺は二島から離れる。


 教室から出ようとして、一つ聞きたいことがあるのを思い出した。

 振り返ると、二島も教室から出ようと後ろを着いて来ており、危うく見落とす所だった。


「なあ、二島はどうして俺を避けるようになったんだ?」


 そう尋ねると、二島は俺を見上げる。


「……悪い噂を聞いたから」


「悪い噂?」


「女子を無理矢理彼女にしてるとか、人を虐めているとか、泥棒してるとか……」


「それも北方からか?」


 そう尋ねると首を振って否定する。

 そして、スマホを取り出して、俺の知らないクラスのSNSを見せてくれた。


「これに書き込まれてた。誰が作ったのか知らないけど、クラスの半数は使ってるよ」


「そんなのあったのかよ……」


 匿名をいいことに、人の悪口ばかり書かれている。

 とても胸糞悪いグループだ。


 二島に招待してもらって、俺も参加する。

 投稿はせずに、ただ内容を確認する。


 そこには、俺の根も葉もない噂が並べられており、怒りを通り過ぎて笑いが込み上げて来そうだった。


 スマホを見ながら、二島と一緒に教室を出る。


 この時、もっと警戒するべきだった。


 二人で出た所を写真に撮られて、翌日このSNSに投稿されていた。



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