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門司港タイムトラベル  作者: ハマ
2.中川大輔タイムリープ

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23/38

2-9

 救急車が到着すると、男二人が運ばれて行く。


 当初、警察が到着した時、俺が警戒されてしまった。

 莉子が誤解を解いてくれて、男二人を拘束しようとしたのだが、二人とも気を失っていた。


 何をやったのか聞かれて正直に答えると、やり過ぎだと怒られた。

 確かにそうかもしれないが、俺は何度同じ状況になろうとも、同じように行動しただろう。


 どんなに怒られようと関係無い。

 関係無いのだけど……。


「やり過ぎだ! こん馬鹿タレが!」


 警察署に呼び出された父さんが、顔を赤らめて怒声を浴びせて来る。

 赤いのは酒のせいかもしれないが、とにかく俺の行いに怒っていた。


「いやでも、あいつら悪人なんだし……」


「悪人相手だろうが、人を殺すような真似すんなって言ってんだよ! 受け身も取れない素人に一本背負ってなあ、下手すりゃ死んでんだぞ!」


 それは分かっている。

 分かった上で、やった。

 女を襲うような奴は、人でなしの獣と変わらないから。


「じゃあ、見捨てろっていうのかよ」


 そう言うと、拳骨が飛んで来た。

 頭に直撃して、目に星が散ってしまうほど痛い。


「馬鹿タレ! 人殺しになんなって言ってんだよ! 手加減しろ手加減。人殺したら、莉子ちゃんと会えなくなるんだぞ……」


 それは困るな。

 あと、父さんや母さんに、そんな顔もしてほしくない。


「分かった。次からは気を付けるよ……」


 頷くと、父さんは俺の肩に手を置いて、


「まあなんだ。……よく友達を助けたな、よくやった」


「……おう」


 褒められると、照れてしまうから困る。


 父さんに連れられて警察署から出ると、汐井とその両親が待っていた。

 頭を下げられて、娘を助けてくれてありがとうと、感謝の言葉を告げられる。汐井からも泣いて謝られたけれど、正直気まずかった。


 助けた時、汐井は放心状態で状況を飲み込めていないようだった。

 莉子が寄り添ってくれたから良かったけれど、俺だけだと怖がらせるだけで何も出来なかっただろう。


 一応、襲われた経緯も聞いた。

 友達と行った夏祭りの帰り道に、男二人に声を掛けられたらしい。怖くて無視して通り過ぎたようだが、それが癪に触ったのか男達から因縁を付けられたそうだ。

 その場は、周りの人達に助けられたが、男達は諦めていなかった。

 一人が汐井の後を追って、もう一人が逃走用のバイクに乗って来たそうだ。それに気付かなかった汐井は、あの場所で襲われた。


 俺達が通り掛かったのは、その直後だったという。


「もし中川君が助けてくれなかったら、私……」


 汐井が、また涙を流し始める。


 助けられなかったらと考えると、ゾッとする話だ。


 あの時、莉子を送って行ってよかった。

 汐井はもちろん、莉子も巻き込まれてしまっていたかもしれない。

 そうなったら、と考えていると、あることに気付いた。


「……あっ」


「どうかしたのか?」


「いっ、いや、何でもない……」


 動揺してしまい、父さんに心配される。


 車に乗り込む汐井を見送ると、ペットボトルの水を飲んで、残りを頭に振りかける。

 父さんに驚かれるが、嫌な予感を流したくて止められなかった。


 それでもこの考えは消えてくれない。

 おかげで、血の気が引いて、体が冷えて行く感覚を覚える。


 今回はたまたま助けられた。


「じゃあ、前は?」


 そう口にすると、吐き気を覚えた。




   ◯




 夏祭りの翌日、莉子から電話が掛かって来た。


 昨日、警察署に連行されたのは俺だけだったので、莉子には帰ってもらっていた。

 ことの顛末はメッセージで伝えているけれど、もしかしたら直接聞きたいのかもしれない。そう予想して電話に出るのだけど、まるで違っていた。


『昨日の犯人、お母さんが勤めている病院に運ばれたみたいなんだけど、二人とも骨が折れてたみたい……。それで、大輔に投げ飛ばされた人なんだけど……リハビリが必要なくらいダメージ受けてるんだって』


「……そうか、教えてくれてありがとう」


 リハビリが必要。

 考えられるのは、歩行が困難になるとかそういうのだろうか。

 死んでもいいなんて思いながら一本背負いをしたけれど、後遺症があると言われると、やり過ぎたと考えてしまう。


 今後は、もう少し手加減をしよう。


『あっ、それはいいんだけど、汐井さん大丈夫だった? メッセージじゃ大丈夫ってあったけど、ああいうのって引き摺るみたいだから……』


「昨日は泣いてだけど、安心してって感じだったから大丈夫じゃないか? 気になるなら、今度会いに行くか?」


『え? 汐井さんの家知ってるの?』


「いや知らん。莉子なら知ってるんじゃないかと思ったんだ」


 確か、同じ小学校だったはずだ。


『私も知らないって。汐井さんと同じクラスになったの、今回が初めてだし』


「そうか、なら次会った時に聞くしかないな」


『うん、そうだね』


 汐井のメンタルが心配だけど、それは今度会った時に聞いてみよう。

 辛そうだったら、可能な限り力になってやろう。


 これで会話を終わらせようかと思ったのだけど、一つ気になったことがある。


「莉子さ、もし俺と一緒に夏祭り行かなかったら、昨日どうしてた?」


『昨日? んー……チサ達と一緒に回ってたんじゃないかな。どうして?』


「いや、何でもない。ただ、今度から帰りは送って行くからな」


『心配しすぎだって。私は大丈夫だから、大輔も勉強に集中して』


 そうかもしれないけれど、俺にとって一番優先するべきは莉子だ。

 どんなことがあっても守りたい。守らないと、俺の存在理由が無くなってしまう。


 とはいえ、余りしつこくしても、莉子を不安にさせてしまうだろう。


「……分かった。でも、夜遅くなったら呼んでくれよ」


『心配性だな〜。分かった、その時はお願いします』


「おう」


 呆れた声で、仕方ないとお願いされる。

 昨日、あんな現場に立ちあったせいで、いつもより過敏になっているのかもしれない。


『あっそうだ。実は、チサに彼氏が出来たんだって』


「おお、そうか。受験前なのに大丈夫なのか?」


『それ言ったら、私達もでしょう?』


 それもそうだ。

 二島チサは、クラスでも身長が低い方で、小動物を彷彿とさせる可愛いらしい女子だ。

 莉子とも仲が良いから、彼氏が出来たというのは素直に応援したい。


『その彼氏がね、実は北方君なの』


「……あの北方が? 本当に?」


 疑わしい内容に困惑してしまう。


『本当だって、チサから二人でいる写真送られて来たし』


 前は、北方に彼女なんて話聞いたことがなかった。

 俺だけはぶられていたなんてないだろうし、もしそうだとしても、噂くらい流れてくるはずだ。


 もしかして、隠していたとか?


「なあそれって、内緒にして欲しいって言われなかったか?」


『別に、そんなこと言われてないけど』


「そうか……」


 なら、バスケと同じように、少しズレているだけかもしれない。


 あとは、「次は関門海峡花火大会だな」と話をして通話を切った。


 その日の晩、莉子から『やっぱり秘密にして欲しいんだって』というメッセージが届いていた。

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