↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門司港タイムトラベル  作者: ハマ
2.中川大輔タイムリープ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/42

2-6

 夏休みに入ると、今週末にバスケ部の引退式を行うと連絡があった。やることは後輩との試合なので、そんなに気負う必要はない。


 早朝、教科書を広げて試験範囲を思い出しながら解いて行く。

 莉子から教えてもらった内容に加えて、もう少し範囲を広げて勉強する。

 三時間もすると、頭がパンクしそうになり気分転換にツーリングがしたくなった。


「父さん、気分転換したいからバイク貸してくれ」


「はっ? ……お前ふざけてんのか?」


 眉間に皺を寄せる父さん。

 何を怒っているのかと、俺も眉間に皺を寄せてしまう。

 少し見合っていると、あることを思い出した。


「ああ……ごめん、何でもない」


 今の俺はまだバイクの免許を持っていないんだった。そもそも十五歳の俺じゃ、免許も取りに行けない。


 頭に詰め込みすぎて、失念していた。


 ごめんごめんとリビングから出て行こうとすると、父さんに呼び止められる。


「大輔、気分転換したいなら体動かすか?」


「いや、別にそこまでしなくても……」


「バスケ引退して鈍ってんだろう? ちょっと待ってろ」


 父さんはリビングから出て行くと、直ぐに戻って来た。その手には、グローブとミットを持っていて、何をしたいのか察した。


「外行くぞ」


「おう」


 投げられたグローブを受け取り、父さんに着いて行く。


 父さんは元レスリングの国体選手だ。他にもボクシングや日本拳法をかじった格闘家でもある。身長は百八十近くあって、体格もかなり良い。スキンヘッドなのもあり、見た目だけなら完全にアレな人だ。

 俺の体格は、間違いなく父さん譲りだ。


「手打ちになってんぞ。腰を入れろ、踏み込みも甘い」


「こうか?」


 腰を意識して右を打つ。

 すると、ミットを持った手が弾かれる。

 思っていたより威力が強かったのか、父さんは驚いていた。


「おお、大輔ボクシングやらないか?」


「嫌だよ」


 俺がボクシングをするのならヘビー級になる。

 あのクラスの人達のパンチは、普通に人が死ぬ。生半可な気持ちで踏み込んでいい世界じゃない。


 やるのなら、運動目的くらいでいい。


 その後もミット打ちを続ける。

 父さんと交互に三十分もすると、息も上がって汗だくになり、腕も上がらなくなっていた。

 プロのボクシング選手は、これを何時間も続けるのだから本当に凄いと思う。


「どうだ、頭スッキリしたか?」


「うん? ああ、だいぶスッキリした。ありがとう父さん」


「おう。そういや、莉子ちゃんと上手くいっているのか?」


 どうしてここで莉子の名前が出て来るのか分からなかった。

 

「別に普通だけど」


「そうか……。何かあったら俺か母さん相談しろよ、俺達に出来ることは何でもやってやるから」


「え? ああ、分かった」


 この時、もう少し話を聞いておけばよかった。


 俺は、莉子のことを何も知らなかったのだと後悔する。



   ◯



 夏休みというのもあり、莉子と遊びに行く約束をしている。

 吹奏楽部で忙しそうだけど、こうして時間を作ってくれるのは、彼氏として嬉しい。


 モノレールに乗って小倉に向かう。

 夏というのもあって外で遊ぶのはかなりきつく、室内で遊べそうな所というので小倉になった。近場で遊ぼうにも、大きな店が無い。


 駅を降りると、同じ建物にあるアミュプラザ小倉に入る。すると、エアコンで冷やされた空気が、身体にこもった熱を冷ましてくれる。


 ふぅ〜と息を吐き出していると、隣を多くの人が通り過ぎて行く。


 夏休みだからか、店内には多くの人がいる。中には俺と同じように、待ち合わせの時間まで涼んでいる人もいた。


 涼みながらスマホを見ると、莉子からもう直ぐ着くとメッセージが入っていた。

 今いる場所を伝えて、涼しみながらぼうっと立って待つ。


 しばらくすると、誰かから声を掛けられた。


「あっ、中川君じゃん」


 振り返ると、髪を金髪に染めた女子が立っていた。


「……もしかして、汐井か?」


「そう。どうこれ、似合うっしょ?」


 金に染めた髪を見せて自慢するのは、同じクラスの汐井旭。

 顔もかなり化粧をしていて、服装もそれに似合った派手な物になっていた。


「またはっちゃけたな」


 中学の時と印象が違い過ぎて、ぱっと見分からなかった。


「いいしょ? どうせ、二学期前には染めるんだし、バレなきゃ大丈夫だって」


「それもそうが。……まあ、変なのに絡まれないように気を付けろよ」


「へー、心配してくれるんだ。何だったら、中川君が守ってくれてもいいんだよ?」


 俺を見上げて来る汐井。

 あざとい目をしているんだろうが、俺はそういう目が余り好きではない。


「悪い、先約がいるんだよ」


「あっ、浅野さんと待ち合わせか。ならいいや、じゃあね」


「ああ、またな」


 エレベーターに乗って去って行く汐井だが、他に人がいるかと思ったら、どうやら一人行動のようだった。


 それにしても意外だ。

 偏差値の高い私立高校に特待生で入学するほど頭が良いから、てっきり真面目な奴だと思っていた。

 普段から明るい性格ではあるけれど、髪を染めるくらいはっちゃけるのは予想外だ。


「そういえば、前は告白されたんだったか?」


 前は。二学期の中頃に汐井から告白された。

 その時はきっぱり断ったのだけれど、今回はどうだろうか?

 バスケの試合一つ取っても、前とは違っていた。なら、これも変わっている可能性は十分にある。


 もしかしたらここは、前とは違う世界なのかもしれない。


 そんなことを考えていると、またしても背後から話し掛けられた。


「誰に告白されたって?」


 振り返ると、そこには俺の彼女がいた。


「莉子……いや、何でもない」


「何でもないじゃなくて、誰に告白されたの?」


 どうやら、逃してはくれないらしい。


「いや、そうじゃなくてだな……別に告白はされてなくて……」


 何とか言い訳を考えるけれど、何も思い浮かばない。

 そもそも、話せるような内容でもないし、今は告白もされていない。


「……」


 莉子は無言で睨んで来る。

 俺は頭を掻いて、真面目な顔をして莉子を真っ直ぐに見る。すると、「うっ」と莉子は一歩引いてしまった。


「莉子、今はまだ言えない。だが、全部終わったら必ず説明する。頼む、どうか俺を信じて待ってくれないか?」


「おっ、おう、そういうことなら……仕方ないかな……」


 とりあえず待ってくれる。

 全ての問題を解決した暁には、関門トンネルを使って過去に戻って来たと教えよう。


 その時にはもう、あの未来は存在しないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。