表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
バレンタインのために
97/164

21-6.伝えたい

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 ああ、ああ。


 意識が遠のく。


 聞こえる声が、霞のようにあやふやで聞こえにくい。


 数日前から体調が悪くなる一方で、部長の近江(おうみ)にはしっかり休むようにと有給を消化すればいいと、今の時期忙しいのに休ませてくれた。


 そして、今日もただ休んでいたのに、胸と口辺りが苦しくて辛かった。


 吐き出せば、と思うもののトイレにも行けず。


 ただただ、動けずに床に転がってしまったのだが。そこからがもう、痛みとの戦いだった。


 思わず、死んでしまうのかと思うくらい。


 けれど、まだ何も果たせていないのに、死ぬわけにはいかない。


 振られてもいいから、あの刑事に想いを伝えたい。


 だから、準備は母に隠れてこっそりしてきたのに。


 その準備を、果たせないまま死ぬのは嫌だ。


 たとえ報われずとも、想いを殺すのは嫌だ。こんな自分を好いてくれたのに、守護堕ちになってまで想いを伝えようとしたものの。殺された甲本(こうもと)にも申し訳ないのだ。



『そうだよ、柘植(つげ)さん』



 叫ぶようにしている声は相変わらず遠いのに、夢うつつのせいか、男性の声がはっきりと聞こえてきた。


 誰だろうと、重い目蓋を開ければ。そこにいたのは、死んだはずの甲本だった。



『頑張って、柘植さん! 俺は無理だったけど、好きな人出来たんでしょ!?』

「ど……して。甲本さんが……?」

『ふふ。俺がしたことは許されないけど、呼ばれたんだ。今君に降りかかっている厄災を祓うのに、俺が地獄に持っていけばいいって』

「な……んで」

『罪滅ぼしになるかわかんないけど。君にはちゃんと生きて欲しいから。君の守護精の力で起こしてもらいなよ』

「こ……もと、さん」

『ありがとう、柘植さん。人間でいられた時に君を好きになれて。あの刑事さんは大変そうだけど、きっと大丈夫だから』



 どんな根拠で、と思ったがもう甲本の姿はなくて。


 暗い暗い、夜の闇のような空間の中に立っていた奈央美(なおみ)の前には、自分の守護精であるライトが淡く光ながら浮かんでいた。



「主! 甲本さんが示した道です! 突破しましょう!」

「……そうね」



 何がどうなって、今の事態になったかまでは奈央美にはわからないけれど。


 やるしかない、と自分の手を差し出してライトがそっと手を重ねてきた。



「あの方のために!」

御子柴(みこしば)さんに何も言わないまま終わりたくはない!」



 だから、と。想いを強くしたら、ライトに変化が現れて。


 小さかった身体が奈央美より少し小柄なまで成長して。顔立ちも、ある意味奈央美とそっくりになった。



「主、行けます! あの方が近くにいらっしゃっています!」



 そして、ライトの力強い言葉とともに、闇は次第に晴れていき。


 次に気がついた時は、温かい腕とどこかで嗅いだような香水の香りがしたのだった。



「……無茶なさいますね?」



 聞き覚えのある声。


 もしや、と目を開ければ。苦笑いした刑事、御子柴が奈央美を抱えていたのだった。



「ナオちゃん!」



 そして、駆け寄ってきたのは菜幸(なゆき)で。他にも何人か万屋の面々が奈央美の自宅に揃っていたようだ。

次回は水曜日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ