21-6.伝えたい
お待たせ致しましたー
*・*・*
ああ、ああ。
意識が遠のく。
聞こえる声が、霞のようにあやふやで聞こえにくい。
数日前から体調が悪くなる一方で、部長の近江にはしっかり休むようにと有給を消化すればいいと、今の時期忙しいのに休ませてくれた。
そして、今日もただ休んでいたのに、胸と口辺りが苦しくて辛かった。
吐き出せば、と思うもののトイレにも行けず。
ただただ、動けずに床に転がってしまったのだが。そこからがもう、痛みとの戦いだった。
思わず、死んでしまうのかと思うくらい。
けれど、まだ何も果たせていないのに、死ぬわけにはいかない。
振られてもいいから、あの刑事に想いを伝えたい。
だから、準備は母に隠れてこっそりしてきたのに。
その準備を、果たせないまま死ぬのは嫌だ。
たとえ報われずとも、想いを殺すのは嫌だ。こんな自分を好いてくれたのに、守護堕ちになってまで想いを伝えようとしたものの。殺された甲本にも申し訳ないのだ。
『そうだよ、柘植さん』
叫ぶようにしている声は相変わらず遠いのに、夢うつつのせいか、男性の声がはっきりと聞こえてきた。
誰だろうと、重い目蓋を開ければ。そこにいたのは、死んだはずの甲本だった。
『頑張って、柘植さん! 俺は無理だったけど、好きな人出来たんでしょ!?』
「ど……して。甲本さんが……?」
『ふふ。俺がしたことは許されないけど、呼ばれたんだ。今君に降りかかっている厄災を祓うのに、俺が地獄に持っていけばいいって』
「な……んで」
『罪滅ぼしになるかわかんないけど。君にはちゃんと生きて欲しいから。君の守護精の力で起こしてもらいなよ』
「こ……もと、さん」
『ありがとう、柘植さん。人間でいられた時に君を好きになれて。あの刑事さんは大変そうだけど、きっと大丈夫だから』
どんな根拠で、と思ったがもう甲本の姿はなくて。
暗い暗い、夜の闇のような空間の中に立っていた奈央美の前には、自分の守護精であるライトが淡く光ながら浮かんでいた。
「主! 甲本さんが示した道です! 突破しましょう!」
「……そうね」
何がどうなって、今の事態になったかまでは奈央美にはわからないけれど。
やるしかない、と自分の手を差し出してライトがそっと手を重ねてきた。
「あの方のために!」
「御子柴さんに何も言わないまま終わりたくはない!」
だから、と。想いを強くしたら、ライトに変化が現れて。
小さかった身体が奈央美より少し小柄なまで成長して。顔立ちも、ある意味奈央美とそっくりになった。
「主、行けます! あの方が近くにいらっしゃっています!」
そして、ライトの力強い言葉とともに、闇は次第に晴れていき。
次に気がついた時は、温かい腕とどこかで嗅いだような香水の香りがしたのだった。
「……無茶なさいますね?」
聞き覚えのある声。
もしや、と目を開ければ。苦笑いした刑事、御子柴が奈央美を抱えていたのだった。
「ナオちゃん!」
そして、駆け寄ってきたのは菜幸で。他にも何人か万屋の面々が奈央美の自宅に揃っていたようだ。
次回は水曜日〜




