32-4.婚約指輪
お待たせ致しましたー
晁斗はその箱をズボンのポケットに入れてから、リビングに向かう事にした。
悠耶達の結婚と妊娠発表でまだまだテンションが高い熊谷家一同は、克己の淹れたオリジナルブレンドベースのカフェオレでひと息吐いていた。
花蓮もほっとひと息吐いていたが、これから話す内容で緊張させるかもしれない。だが、晁斗は言うことを決めたのだ。
「花蓮、ちょっといいか?」
「はい?」
「ちょっと話がある。空呀と璐羽はここにいろ」
「ほーい?」
【我はダメなのか?】
「悪いな。二人で話したいんだ」
「では、空呀に璐羽殿。この老いぼれとゲームでもしようじゃないか?」
「するするー!」
【……我の負けが見えているが】
「まあ、いいじゃん?」
そこそこ歳を食っているのに、老人らしくなく克己は機械系やゲームが得意だ。下手すると晁斗よりも強い。
とりあえず、守護精達を引き止めてくれたのに感謝しながら花蓮の手を掴んで連れていく。
到着した場所は、晁斗の部屋だ。
ベッドに座らせてから晁斗も隣に腰掛けて、繋いだままの手を彼女の膝に乗せる。ほんの少しだけ目線が近くなった花蓮を見ると、改めて可愛らしいと思った。
この一年、咲乃や菜幸達の指導のお陰でより一層女らしい生活をするようになった彼女は、装いも雰囲気にも磨きがかかっていった。
髪も伸ばしたことで、愛くるしさが増し、ウィンタージュの人気店員になるくらい。術師としても、万屋に一員として力をつけている。今となってはかけがえのない存在だ。
晁斗とも付き合うようになって、あと少しで一年が経つが。燈からの後押しもあり、晁斗は言う事に決めた。
これからの二人の人生を決める話を。
「花蓮……話、っつーのはな?」
いざ決めても、緊張しないわけがない。
万屋の所長としてでもまだまだ新米の晁斗には、肩の荷が重いだろう。しかし、決めたのなら、言うしかないのだ。
「? はい?」
「お前……今日の事どう思った?」
「今日? ですか?」
「その……羨ましい、とか」
「? はい。素敵だなとは」
「……じゃあ、さ」
ポケットにしまっておいた小箱を取り出して、花蓮の手を離してから握らせた。
記憶喪失が治り、今も常識を勉強している彼女はその箱を見ると、可愛らしい目を丸くしてくれた。
「これ……!?」
「…………少し前に、作った」
「!? 晁斗さん、凄いです!」
「まあ、一応な?」
こっそり、花蓮の指のサイズを測ってから時間をかけて作った指輪。
デザインは花蓮が好んでいる晁斗オリジナルのものから、雑誌などの流行を取り入れてみた。そして最近完成したので、いつか渡すために引き出しに箱ごと入れてがいたのだが。
こんなにも早く、渡すことになるとは思わなかった。それだけ、周囲の環境がいきなりガラリと変わったせいもある。
花蓮は、ゆっくりと指輪の箱を開けると、さらに目を丸くしてくれた。
「綺麗……可愛い」
リングは定番の銀。
石は花蓮をイメージしてピンクトルマリンの少し大きめの粒。
桜になるように五粒も、そこそこ奮発したが大事な花蓮のためだ。惜しむわけがない。
晁斗はじっと眺めていた花蓮に苦笑いしてから、箱を取って指輪を取り出した。
そして、花蓮の左手を取って迷わず薬指にはめていく。サイズを測った通り、ぴったりだった。
「月並みな言葉かもしれねーが」
これからも、先も。
最初で最後。この女性の手を離したくないと思っている。晁斗は花蓮に指輪をはめてから彼女の両手を自分の手で包み込んだ。
「お前とこの先も一緒にいたい。最初の頃のように、熊谷の名前に戻らないか?」
「!?」
「結婚したいのは、お前だけだ。花蓮」
「あ……さと、さ……わ、私……でいいんですか?」
明確に結婚の言葉を口にすると、花蓮は大粒の涙を目尻に溜めた。
その様子に拒絶がないとわかると、晁斗はその涙を唇で吸い取ってやる。
「お前だけだって言っただろ?」
「う……れ、し……です!」
「悠耶達よりは後になるが、ウィンタージュで派手に披露宴しような?」
「はい!」
二人でキツく抱き合った後、晁斗達は誓いの口づけを長い時間したのだった。
次回は火曜日〜




