31-4.克己と沙霧②
お待たせ致しましたー
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日を変えて、約束をした克己は公園に来ていた。
暦では春だが、まだまだ肌寒い季節なので上着は欠かせない。襟を少し立ててから、目的地である公園のベンチに行くと、約束していた相手が既に腰掛けていた。
「……三十年ぶりかな? 沙霧」
「……そうだね、克己」
晁斗が先日会った、裏組織の長であり、花蓮の祖父でもある戸塚沙霧。
克己が声を掛ければ、俯いていた顔を上げてくれた。お互い歳は取ったが、面影は三十年前を少し残しているような感じだ。
「座っても?」
「……ああ」
本来なら、裏と万屋は宿敵同士なのに、至って普通の会話。
それもそのはず。克己と沙霧は、かつては友人以上に親友に近い間柄だったのだ。
あの事件がなければ、袂を分かつ事にはならなかったが。
「私の孫に会ったんだって?」
「……連絡が行ったか」
「そりゃあ。今の所長とは言っても、まだまだ青二才だからね? 私に頼ってしまうのも無理はない」
まだまだ未熟な部分も多いが、晁斗は弱い人間ではない。
最愛の存在である花蓮が出来たからこそ、強くなれる部分もあるのだから。
「……夢を覗いた。君と私の孫は幸せそうだったよ」
「ふふ。縁は繋がっているからね? 君が裏であってもなくても、あの二人は惹かれ合ったさ」
「…………怒らないのか?」
「何が?」
「私が……今更、君の孫に接触したのを」
「漣ちゃんのためもあるんだろう? なら、怒らないさ」
かつて、沙霧の目の前で彼の最愛の女性を死なせかけた。そこから五十年近く経つが、あの時の妖を退治してから沙霧が変わったのだ。
裏に克己も勧誘されたが、断った。守護堕ちを量産するようになったと知ったのは後だが、克己も克己で万屋を開設した。
すれ違いが、新たなすれ違いを生み、やがて亀裂が生じる。いつのまにか、万屋と裏は宿敵同士と言う具合にまで発展して行ったのだ。
それから衝突もあり、余計に。
だから、お互い歳を取って、孫同士が交際するようになるとは思わず。
だが、孫の一人が自殺のように死んだことで、沙霧も目が覚めたのかもしれない。
一度だけ顔を上げてくれたが、今はまた俯いているからだ。
「……裏は、解体してきた」
「…………由那ちゃんがきっかけで、目が覚めたのかい?」
「…………紗々の事もあるが。今更馬鹿馬鹿しくなってきた」
「五十年かかって気づいたのかな?」
「ああ……本当に疲れた」
五十年かかって気づくことが出来たのなら、僥倖に近い。
たとえ、これまでやってきたことが犯罪に関わることであっても。
罪を償うきっかけを得たのなら、克己は少なくとも嬉しく感じたのだ。
「……漣ちゃんについては。私と言うより、晁斗がいるから安心していいよ?」
「……ああ。頼んだ」
そう言うと、克己の前から沙霧が空気に溶け込むようにして消えていったのだ。
相変わらずの術の精度に感心すると、克己は軽く息を吐いてからベンチを離れることにした。
近くに、花蓮がいる警察病院があるので見舞いに行こうとも思っていたから。
次回は月曜日〜




