30-5.さらに奥へ
お待たせ致しましたー
深層心理の入り口らしきところに足を滑らせた晁斗は。
何か強い力によって水の中に引きずり込まれた。現実の水ではないので息が出来ないわけではないが、いきなりの事だったので苦しいことに変わりがない。
勢いが凄いので、引っ張られている足元も見えないでいた。
(……こ……の……!?)
だが、勝手に引っ張られるのも良くはない。花蓮が導いているとも思えなかった。彼女がこんな強引に晁斗にぶつかってきたのはほとんどなかったから。
(…………いや……)
逆だ。知らないことの方が多い。
花蓮が裏の人間だとは知らずに。
知らずに、自分は惹かれていたのだ。それは記憶を取り戻した彼女も同じだと勝手に思い込んで、実の姉を目の前で失っただけでこんな状況になったのだ。
決めつけは良くない。
(……連れて行ってくれ。花蓮のところへ)
晁斗が意識を委ねると、勢いが少しずつ弱まってきた。
やがて、硬い地面のような場所に降り立つと、雨のような雫が降り注ぐ場所に到着した。花蓮の姿はないが、違う存在が目の前に降りてきたのだ。
【……晁斗】
「璐羽!?」
守護についている狗神が本来の姿で晁斗の前に降りてきた。
その表情はとても暗いものだった。
【……漣は、我では救えん】
「……お前でもか」
【晁斗だけだ。頼む、漣を彼処から出してやってくれ!】
「……あそこ?」
そこだ、と璐羽が前足を向けた箇所に。気づかなかったが、巨大な水晶の集合体がそびえ立っていた。
淡く光るその水晶の中に、探していた花蓮がうずくまっていた。この中に閉じこもっているらしい。
【……我がどんなに叫ぼうが、あれは壊れぬ】
「……一応、彼氏である俺の出番ってとこか?」
【一応ではない。記憶と魂が戻っても、漣の番はお前だけだ】
「そりゃどーも。……術が効くかわかんねぇが」
深層心理で札を持って来れるかわからなかったが、懐にはちゃんと札があった。
水晶だけを破壊するのに、投げつければ自然と付着された。なら、と晁斗は印を組んで術を発動する。
『……ね、え……さん……』
花蓮から声が聞こえてきた。
とてもとても、か細い声。
由那を失った哀しみに、心が閉じこもっているのだろう。だが、このままで良いわけがない。
「戻って来い、花蓮!!」
今彼女を必要とするのは、裏でもなんでもない。
晁斗に、璐羽に、万屋の皆だ。
だから、どうか目を覚ましてほしい。
晁斗は遠慮する事なく、術を発動して水晶にヒビを入れさせた。札から徐々にヒビが大きくなり、花蓮のところまで亀裂が入ると、花蓮が出てきた。
だがその時。
淡い青の光が、彼女に近づいて中に入ったのだった。
次回は日曜日〜




