30-3.後始末②
お待たせ致しましたー
*・*・*
由那を失ってしまった。
裏としても、ひとりの男としても、彼女を大切に想っていたのは最後になって気づいた。
彼女もそうだとわかって、嬉しさを感じたのは一瞬で、あとは絶望だった。花蓮の治癒を受けるまでもなく、彼女は紗々の腕の中で逝ってしまったから。
そうして、紗々は刑事との約束通りに現行犯逮捕となり、警視庁に連れて行かれ。事情聴取をさせられるために、牢屋に入れられた。
「……由那」
何故、事前に屍鬼を顕現させるなどと愚かなことをしたんだ。
何故、紗々の意見も聞かずに、勝手に行動に移した。
予定では、陸螺市に黄泉路の風を吹かせて、守護堕を量産するだけだった。なのに、花蓮が気に食わなくて、魂を取り戻しただけで予定を狂わせた。
それだけ、あの姉妹の抱えていた深い溝に気付けなかった。目付け役でもあった紗々の注意が足りなかったせいもあるだろう。
「……由那」
最後まで、ずるい女だった。
こちらの気も知らずに、するりと気持ちを弄ぶようにしつつも、実は一番に考えてくれていた彼女。
最後に、一番欲しい気持ちをくれたのに、呆気なく逝ってしまった。それが、今一番悔しい。
「……俺にも、花蓮にも。最後まで一番迷惑な気持ちを押し付けやがって」
いいや、それは単なる言い訳だ。
もし、花蓮の歌が完成していたら、屍鬼を顕現させていなければとは思ってももう遅い。由那は、もうこの世にはいないのだから。
紗々は、自然と涙があふれてきた。
『……そんなにも泣き虫だった?』
空耳。
いいや、たしかに聞こえた声だった。
顔を上げれば、半透明だったが白装束の由那の姿があった。
「由那!?」
『声デカ過ぎ。看守がすぐ来るよ』
「…………何故」
『あんな感じでバッドエンドにしたの、味気ないと思ってさ? 屍鬼はもう戻って行ったし、地獄に堕ちる前に言いに来たんだよ』
だから泣くな、とすり抜けて行くが由那は紗々の涙を拭ってくれた。
「……なんで、最後になって言うんだ」
絞り出すような声になってしまったが、由那は笑い出した。いつものように、ケラケラと。
『だって、しょーがないじゃん? 僕が君を好きだなんて気づいたのが最後なんだし?』
「俺に背負えと言うのか?」
『まさか。花蓮には所長さんがいるけど、君は君だ。ここに囚われているし、一生出れないかもだけど。……地獄で待ってるよ? そしたら、一緒でしょ?』
「……相変わらず、自分勝手だな?」
『それが僕だもん!』
ああ、このやりとりももうすぐ終わってしまう。
由那が生きていた時はわずらわしいとも思っていたのに、こんなにも心地がいいことだったなんて。
やっと気づけて、だが希望は持てた。
いずれ、同じ地獄に堕ちても彼女と一緒になれるのならそれでいいと。
だが、裏としてはもう生きられない。それだけは確信すると、由那にもわかったのか苦笑いになった。
『じゃあ、僕。花蓮のとこにも行くから』
「……ああ」
永遠の別れでないのなら、それでいい。
紗々はずっと強張っていた身体の力が抜けて、地面に座り込んでしまった。
次回は月曜日〜




