28-5.動こう③
お待たせ致しましたー
*・*・*
歌ってしまった、あの唄を。
発動させてしまった、あの禁呪を。
姉の由那が、冥府の鬼のひとつ、屍鬼を我が身に宿して顕現させようとしていた。
己の身を捧げて、二度と元に戻れない禁じ手の禁じ手。
それほどまでに、双子の妹である花蓮が憎かったのか。
だから、花蓮はあの日。裏から抜け出したのに。
その意味がまったくなかったと言うことか。
魂まで切り離して、ただの人間に成り下がっても、意味がなかったのか。
「漣!」
呼んだのは、晁斗だった。
ああ、そうだった。今は、花蓮はひとりではない。
裏から抜け出して、宿敵とされていた万屋に救われたのだ。そして、漣と言う酷似した名をもらい、晁斗と恋仲になったのも。
嘘じゃない。
花蓮は漣でなくなっても、晁斗のことが好きだ。万屋や璐羽に皆も。
だからこそ。
「……すみません。私、裏の人間だったんです」
璐羽の上でとりあえずの謝罪をすると、晁斗の大きな手に軽く両頬を叩かれた。
「それはどうだっていい。漣は漣だ。俺の彼女だ」
ああ、こんなにもきっぱりと言い切ってくれる晁斗だからこそ惹かれたのだ。
癒し手の素質があっても、ただの『漣』でしかなかった花蓮を。
好きになってくれたのだからこそ、花蓮は裏ではなく『万屋の漣』として姉を止めなくてはならない。
「はい! お姉さんを止めるのを手伝ってください!!」
「俺らも協力するぜ!」
「ええ!」
「篤嗣さん!」
篤嗣だけでなく、御子柴もいた。
本来なら、花蓮は捕まってしまう側なのに、由那を止めるために協力してくれるらしい。
だが、悠長に噛み締めている場合ではない。
屍鬼の顕現がどんどん進行していっている。
同期だった、紗々は。と、男の姿を探していたが御子柴の後ろで伸びていた。
「こいつについては色々大問題有りだから、連行決定。漣には事情聴取程度だ。……まさか、過去に犯罪に関わってたわけじゃないよな?」
「……すみません。それはすぐにいいえと言えないんです」
長である祖父が、どう言う理由で花蓮を隔離していた理由はわからない。
だが、利用はされていたかもしれない。癒し手の力のことを。
だから、即否定も出来ないのだ。
「わーった。とりあえず、あのヤベーお前の姉ちゃん止めるか?」
篤嗣が親指を向けたときには。
もう、同じ顔の由那ではなく。
黄泉路の屍鬼、そのものの不気味な顕現が完了していたのだった。
次回は火曜日〜




